トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

アフリカやオセアニア、アジアでもどこでもいい。天井に荷物を括り付け、人を満載し、荒野や山河を駆けるトヨタ車といえはランドクルーザーと双璧を成すのがハイエースだ。

アフリカやオセアニア、アジアでもどこでもいい。天井に荷物を括り付け、人を満載し、荒野や山河を駆けるトヨタ車といえはランドクルーザーと双璧を成すのがハイエースだ。

多くの人々に愛されてきた

トヨタ・ハイエースは、その誕生以来、日本のみならず世界中で多くの人々に愛されてきた商用車だ。

4代目のハイエース(1989年〜2004年)は、まさにその信頼性と実用性を進化させ、新たな時代を切り拓いた存在だった。

初代(1967年)の登場時から実用車としてのポテンシャルを追求し、2代目(1977年)でのディーゼルエンジンを採用、3代目(1982年)でのエアロルーフバリエーションの追加など、常に市場のニーズに応えてきた。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

4代目の登場は、ちょうど平成の幕開けと重なった1989年。外観は直線基調のボクシーなデザインを採用し、空力特性と室内空間の効率化を両立している。

さらに、商用車としては初めてフルタイム4WDを一部グレードに採用するなど、その進化は徹底していた。

特に長尺ボディやハイルーフモデルは、荷物の多い商業用途だけでなく、ファミリーカーとしても高い評価を得た。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

試乗してまず感じたのは、その圧倒的な視界の良さだ。高いアイポイントからの見通しは良好で、狭い路地でも取り回しが容易だ。

3リッターのディーゼルエンジンは、静かとは言えないが、力強いトルクが低回転から感じられる。

満載時でも十分な加速性能を発揮し、特に坂道での粘り強さが印象的だった。振動さえも心地よく感じる。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

快適性にも配慮されている

ハイエース4代目は、実用車としてだけでなく、快適性にも配慮されている点が大きな特徴だ。

商用車としての耐久性を維持しつつも、乗用車のような装備が追加され、幅広いユーザー層にアピールしている。

まず、今となっては「エモい」内装。平成の車を象徴するようなモケット地のシートにレースのカーテン。もうこれだけで⋯。クラウンの内装をそのまま広くしたかのような妙に落ち着く空間だ。モデル名に「リビングサルーン」がついていても、ちっとも名前負けしていない。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

車内の広さも圧巻だ。5ナンバーモデルでも、この時代は広く車を作ることができた。後部座席の足元空間が十分に確保されており、頭上にも余裕がある。

そのうえ荷室のフレキシビリティは高く、シートアレンジによって多様な用途に対応可能だ。家族の旅行にも、キャンプギアを詰め込んだアウトドアユースにも対応する汎用性がある。

さらに、試乗中に感じたのは、その乗り心地の良さだ。板バネサスペンションを採用しながらも、路面の凹凸をやわらかく吸収してくれる。タイヤサイズの影響も大きいだろう。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

商用車らしさを感じさせないマイルドな乗り味で、これもまた「圧倒的平成感⋯」。長距離ドライブでも疲れにくい。

また、エアコンやオーディオなどの基本装備も十分に整っている。高グレードモデルではパワーウィンドウや集中ドアロックが装備され、商用車という枠を超えた快適性が提供されている点も評価ポイントだ。細かな話ではあるが、日本語による説明書きも、今となっては萌えポイントだ。

ハイエースは、実用性と快適性が見事に融合した一台と言える。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

生活を支える万能車として

ハイエース4代目を運転していると、トヨタがこの車に込めた信念を感じる。

それは単なる商用車にとどまらず、人々の生活を支える万能車としての姿だ。

また「おもてなし」とはなにかを、真剣になって考え抜き、トヨタとしての独自表現を完遂している。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

その後、2004年に登場した5代目ハイエースではデザインや性能がさらに洗練され、現代的な商用車としての完成度が高まったが、4代目には独特の魅力がある。

それは、アナログ的なシンプルさとリラクゼーション、必要十分な性能が絶妙に調和している点だ。

また現代の車が電子制御で高性能を実現しているのに対し、4代目はドライバーの腕や感覚が試される部分が残されている。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

特に、アウトドア愛好者やクラシックカー愛好家の間で、4代目ハイエースは今なお人気が高いようだ。その理由がわかる。

中古市場でも高値が付くことが多く、その信頼性と価値が今もなお評価されている。

トヨタ・ハイエース(FR/4AT)「相棒」という形容詞が何よりも似合うクルマ

トヨタ・ハイエース4代目は、単なる車ではなく、時代を超えた実用性の象徴だと思う。この車がもたらす安心感と頼もしさは、日常の移動だけでなく、人生のさまざまな場面で活躍するだろう。

ステアリングを握った瞬間、誰もが感じるはずだ。この車となら、どこへでも行ける、と。

200万円を支払って10万kmのヴォクシーを買うか、180万円で5万km後半のこのハイエースを買うか。ここまで読んだならば答えは明らかだろう。

SPEC

トヨタ ハイエース 3.0 リビングサルーンEX ディーゼルターボ

年式
1997年式
全長
4640mm
全幅
1690mm
全高
1990mm
ホイールベース
2330mm
車重
1940kg
パワートレイン
3リッター直列4気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
4速AT
エンジン最高出力
120ps/4800rpm
エンジン最大トルク
198Nm/2600rpm
タイヤ(前)
205/70R15
タイヤ(後)
205/70R15
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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