三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

デリカ・ミニが好調な今、並行して三菱のラインナップに残っていてくれたらと返す返すも残念ではある。洗練されているがSUVではない、あくまでクロカンと呼びたいのだ。

デリカ・ミニが好調な今、並行して三菱のラインナップに残っていてくれたらと返す返すも残念ではある。洗練されているがSUVではない、あくまでクロカンと呼びたいのだ。

1990年代、SUVブームの波に乗って登場した「パジェロ・ミニ」。

三菱が本家パジェロの名を冠し、軽自動車という枠に「クロスカントリーの魂」を詰め込んだのが、この小さな巨人だ。

初代モデルが市場を席巻し、「軽クロカン」というジャンルを確立。そして1998年、軽自動車規格が改定されるタイミングで登場したのが2代目パジェロ・ミニである。

今回試乗したのは、「660 エクシード 4WD ターボ」。パジェロ譲りのタフなルックス、コンパクトなボディに隠された高い走破力――日常の舗装路から林道までを駆け抜ける「小さな冒険者」は、時代を超えてなお魅力的だ。

進化の歴史を辿りつつ、一般道での走行性能とその真価を確かめることにした。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

「パジェロ」の弟分として登場

「パジェロ・ミニ」の歴史は1994年に始まる。

当時、三菱が世界を席巻していた「パジェロ」の弟分として登場した初代は、軽自動車とは思えない無骨なスタイルと4WD性能で大ヒットした。

しかし時代は移り、1998年に軽自動車規格が全長・全幅を拡大したことで、2代目パジェロ・ミニはさらなる進化を遂げる。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

デザインは初代のスクエアなスタイルを踏襲しながらも、全体的に丸みを帯び、親しみやすさを感じさせる形となった。

フロントフェイスにはパジェロのDNAが刻まれ、堂々たるグリルデザインと背面スペアタイヤが、「本物感」を漂わせる。

ボディサイズは全長3395mm、全幅1475mm、全高1635mm。軽自動車ながらも、重厚感が漂うその姿には、道具としての信頼感が宿っている。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

内装は90年代の質実剛健なデザインだ。無駄のないインパネ、視認性抜群の2眼式メーター、そして手に馴染むシフトノブ――それは「操る楽しさ」を前面に押し出したものだ。

リアシートは狭いものの、シートを倒せばラゲッジスペースが広がり、キャンプ道具や日用品をしっかり積み込むことができる。「遊び」と「日常」、そのどちらにも対応する実用性が光る。

パジェロ・ミニの2代目登場は、まさに「時代の必然」だった。大きくなるクロカン、洗練されていく車社会の中で、「小さいけれど本物のクロカン」が求められたのだ。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

街乗りからオフロードまでを

試乗した「エクシード 4WD ターボ」には、660cc直列3気筒ターボエンジンが搭載されている。

軽自動車規格に合わせた小さな排気量だが、その力強さは侮れない。

エンジンをかけると、控えめながらも力強いターボの鼓動が聞こえてくる。そしてアクセルを踏み込むと、低速からしっかりとトルクが立ち上がり、「軽とは思えない加速感」に驚かされる。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

4速ATとの組み合わせは、市街地での扱いやすさが光る。

信号待ちからの発進ではターボがしっかり効いて、ストレスなく前に出る。

「軽クロカン=遅い」の先入観は完全に覆される。特に坂道ではターボの恩恵を最大限に感じられ、力強く駆け上がっていく姿は頼もしい限りだ。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

そして、パジェロ・ミニの真骨頂はその足回りにある。フロントにはストラット式、リアには5リンクリジッドアクスルを採用。舗装路の段差や凹凸を確実にいなし、軽自動車とは思えないほど安定した走りを見せる。

ステアリングの手応えもSUVらしく、軽すぎず適度な重みがあるのが好印象だ。

さらに注目すべきは、4WDシステムだ。2H(後輪駆動)と4H(4WD)を切り替えるシンプルなシステムながら、これが街乗りからオフロードまでを支える。

「エクシード」の名にふさわしい走破性が、日常の道を冒険へと変える。市街地ではしっかりと舗装路に足が吸い付き、荒れた道に足を踏み入れれば、確かなトラクションで前に進む。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

「愉しさ」と「本物感」がある

2代目パジェロ・ミニは、単なる軽自動車ではない。

歴代パジェロが築き上げた「本物のクロカン」としての走破力と、軽自動車ならではのコンパクトさを両立した傑作だ。

「660 エクシード 4WD ターボ」はその最たるものであり、ターボの力強さと4WDの頼もしさが、日常を「冒険」に変えてくれる。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

もちろん、現代のSUVと比べれば、装備や燃費は見劣りするかもしれない。

しかし、そんな小さな欠点など吹き飛ばす「愉しさ」と「本物感」がこのクルマにはある。

小排気量ながら、ドライバーがアクセルとステアリングで「操る」喜び。林道を走るたびに感じる「どこまでも行けそうだ」という信頼感。これこそが、三菱が2代目パジェロ・ミニに込めた「冒険者の魂」だ。

三菱パジェロ・ミニ(4WD/4AT)洗練されているが、あくまでクロカンと呼びたい

軽自動車だからと侮ることなかれ。

パジェロ・ミニは、小さなボディに大きな価値を詰め込んだ「小さな巨人」だ。歴史に裏打ちされたその走りは、舗装路でもオフロードでも、ドライバーに「次はどこへ行こうか」というワクワクを与えてくれる。

令和の時代にこそ、このクルマが持つ「無骨なタフさ」と「走る喜び」が光るのだ。

SPEC

パジェロ・ミニ

年式
2011年式
全長
3395mm
全幅
1475mm
全高
1635mm
ホイールベース
2280mm
車重
980kg
パワートレイン
660cc直列4気筒ターボ
トランスミッション
4速AT
エンジン最高出力
64ps/6000rpm
エンジン最大トルク
88Nm/4000rpm
タイヤ(前)
175/80R15
タイヤ(後)
175/80R15
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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