ポルシェ・カイエンEハイブリッド(4WD/8AT)欺くならまずは味方から、である

「エコ」という言葉は避けて通れない。しかしポルシェはこの際「ハイブリッド」を利用し、よりポルシェらしさに磨きをかけた。経済性を利するのでなく走りを利した、のだ。

「エコ」という言葉は避けて通れない。しかしポルシェはこの際「ハイブリッド」を利用し、よりポルシェらしさに磨きをかけた。経済性を利するのでなく走りを利した、のだ。

確固たる地位

ポルシェがSUVという未知の領域に踏み出して20年。

カイエンはその歴史の中で確固たる地位を築き、いまや3代目へと進化した。

特に今回の「カイエンEハイブリッド」は、時代に呼応したエコロジーと、ポルシェらしいパフォーマンスの融合といえる。

ポルシェ・カイエンEハイブリッド(4WD/8AT)欺くならまずは味方から、である

エンジンフードの下に収まるのは、3.0リッターV6ターボエンジン。このパワーユニット単体で340psを発生する。

そこに、136psを発揮する電気モーターが組み合わさり、システム合計462ps、最大トルク700Nmを叩き出す。

8速ティプトロニックSがスムーズに力を伝え、0-100km/h加速はわずか5.0秒。SUVとは思えない鋭いダッシュ力を持つ。

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外観はスポーツSUVの名にふさわしい進化を遂げた。

ボディサイズは全長4918mm、全幅1983mm、全高1696mm。ホイールベースは2895mmに伸び、堂々たるスタンスを形成。

重量は2.4tに迫るが、電動アシストが重さをやわらげる。LEDマトリクスヘッドライトとワイドなリアランプが、先進的な印象を与えている。

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インテリアに目を移せば、12.3インチの大型タッチスクリーンが中央に鎮座し、必要な情報を指先ひとつでコントロールできる。

デジタルとアナログが見事に融合したメータークラスターは、クラシックなタコメーターが中央に構え、左右に高解像度ディスプレイが広がる。

そこには最新のポルシェ・コミュニケーション・マネジメント(PCM)が搭載され、コネクティビティも抜群だ。

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ポルシェならでは

街中を流し始めると、Eハイブリッドの静寂が印象に残る。14.1kWhのリチウムイオンバッテリーが床下に搭載され、EVモードなら最大135km/hで40kmほどの走行が可能だ。日常の移動は電気だけで済ませられる。

アクセルを軽く踏めば、滑らかに進み出し、エアサスペンションが路面の細かな凹凸を丁寧にいなす。

私(=上野太朗)自身、様々なグレード/仕様のカイエンを体験させていただいたが、Eハイブリッドは、腰下の重さがしっとりとした乗り味につながっていると思う。同じ22インチのホイールを履いたエアサス仕様のなかでも群を抜いた乗り心地だ。

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スポーツモードに切り替えると、アクセルを踏み込んだ瞬間、カイエンは獣の顔を見せる。

V6ターボと電気モーターが一体となり、700Nmのトルクが四輪を蹴り出す。

車検証の2.4tという数字が信じられないくらいに。V6が奏でる音もいい。以前、パナメーラの試乗時にも記したが、回転感、力強さ、サウンドともに名機である。

ポルシェ・トラクション・マネジメント(PTM)が最適なトルク配分を行い、コーナーでも身のこなしはクイックだ。

ビタッと地面に張り付き、寸分の狂いなく入力に反応するさまは、ポルシェそのものといっていい。

8速ティプトロニックSも賢い。ギア選びは適切で、変速もなめらかで十分に速い。

ブレーキフィールもポルシェならでは。回生ブレーキとの切り替えも自然そのものだ。

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ポルシェの哲学

実際のところ、経済性において、このEハイブリッドの利する部分は少ないと思う。貯めておいたバッテリーはすぐに減るし、「プラグイン」しないかぎりは、自車で充電するスピードが遅い。

反面、走りにおいては、先述のとおり、乗り心地、ダッシュ力、静粛性で、他のどのカイエンよりも勝っている。

アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)とレーンキープアシストを併用すれば、渋滞時もストレスなく走れる。

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ポルシェがハイブリッドに求めたのは、単なる効率ではない。

「エモーショナルで速いSUV」を次世代に伝えること。その証拠に、モード切替でEパワー、ハイブリッド、スポーツ、スポーツ・プラスといった選択肢があり、シーンに合わせた走りが可能だ。

スポーツ・プラスに入れてしまえば、、バッテリー残量を無視し、常に最大のパワーを引き出す。サーキットでも、SUVの枠を超えたパフォーマンスを発揮するだろう。

ポルシェ・カイエンEハイブリッド(4WD/8AT)欺くならまずは味方から、である

未来と伝統が交錯するカイエン・ハイブリッドは、まさにポルシェの哲学が体現された、そしてポルシェの今を体現する一台だ。

過渡期の儚さ、過渡期の美しさ。あるいは難しいことを考えずとも、カイエンEハイブリッドを楽しむことだってできるだろう。

SPEC

ポルシェ・カイエンEハイブリッド

年式
2022年式
全長
4918mm
全幅
1983mm
全高
1696mm
ホイールベース
2895mm
車重
2040kg
パワートレイン
3リッターV型6気筒ターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
340ps/5300〜6400rpm
エンジン最大トルク
450Nm/1340〜5300rpm
モーター最高出力(前)
136ps
モーター最大トルク(前)
400Nm
システム最高出力
462ps/700Nm
タイヤ(前)
285/35R22
タイヤ(後)
315/30R22
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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