近郊に正規販売店等がない場合、「食わず嫌い」ではなく「食えず嫌い」となっているのかもしれないとすら感じるクルマが多く存在する。そんな方々のために我々はいるのだ。
エンジンはBMWと共同開発
シトロエンDS3スポーツシックの個性的なデザインは、街中で一際目を引く存在だ。
全長3956mm、全幅1715mm、全高1460mmというコンパクトなサイズながら、2トーンカラーのボディと「フローティングルーフ」と呼ばれる斬新なデザインが大胆な印象を与える。
色分けされたルーフをよく見てみると、ここにこんな柄を?と驚くようなテクスチャーが。シトロエンはこういったところで嬉しい気持ちにさせてくれる。
ボディラインには洗練された空力デザインが反映され、シンプルながらもスポーティな佇まいが魅力的だ。
エンジンはBMWと共同開発した1.6リッター直列4気筒ターボチャージャーを搭載し、156psと240Nmのトルクを発揮する。これに6速マニュアルトランスミッションを組み合わせる。走らせるとすごい! これについては後述する。
いっぽうの燃費はカタログ値で14.5km/L(WLTCモード)と経済的だ。
インテリアに乗り込むと、外観同様に個性が溢れている。光沢感のあるピアノブラックやクローム装飾がモダンだ。このクラスの車としては質感がとても高い。見ても触っても喜ばせてくれる。
シートはしっかりとしたサポート性能を備えたスポーツ仕様。ドライビングポジションは視認性が高く、小径ステアリングホイールのおかげで操作しやすい。そしてレーシーだ。
後部座席とトランクはやや狭い(車格相応)。2名乗車プラス・アルファくらいの使い方が適切だろう。
不思議とテンポのよい運転に
DS3スポーツシックの最大の特徴は、軽快な走行性能だ。街中ではそのコンパクトな車体とキビキビとしたハンドリングがくせになる。
ペダルやシフトの操作感も心地良い。不思議とテンポのよい運転になっている。
思い切ってアクセルを踏んでみると、ターボがグイグイ効いて、気づくと結構な速度に達している。あ!速い! そう思う人も大勢いるレベルでちょっと驚いた。
そのうえ車体がしっかりしている。だから怖くない。軽さも正義である。
もうひとつ、驚くのが乗り心地のよさ。撮影した石畳のうえでも、スタスタと衝撃をいなしながら、とてもなめらかに前進する。
ステアリングをぎゅっと切れば、ねばっこく車体が姿勢を保ち、タイヤはつねに路面をしっかりと掴む。ちょっとシトロエン、そしてDSをなめていたかもしれない。恐れ入ります…。
今回の試乗が一般道に限られてしまったことが残念。
タイトベンドが続く峠道や、ジムカーナコースなど、楽しいだろうな⋯。
わたしが思い込んでいたよりも、ずっと「走り」の車である。
ドライバー中心の車である
DS3スポーツシックは、スポーティな走りと快適性を両立させた稀有なコンパクトカーだと思う。
静粛性も高く、巡航中はエンジン音や外部ノイズが抑えられ、車内は会話がしやすい穏やかな空間が保たれる。
先述のとおり、燃費性能と合わせ、長距離ドライブでもストレスを感じにくいのが特徴だ。
いっぽうで、攻めの姿勢でも、十分以上に力を発揮してくれる。「ホットハッチ」と表現しても、だれも文句はいわない仕上がりである。
実用性においては後部座席やトランクスペースの狭さが難点といえる。この点は、荷物を多く積む家族向けの車ではなく、ドライバー中心の車であることを考えれば納得できる。
むしろ、DS3を選ぶ人々にとっては実用性以上に「スタイル」や「走りの楽しさ」が重要だと思う。だから大きな問題にはならないはずだ。
試乗を終え、降り際に振り返ると、DS3スポーツシックはただのコンパクトカー以上の存在であることを感じさせる。
所有する喜びを味わえるアートのような一台。人生に刺激と彩りを求めるのなら、まずは乗ってみてほしい。すでに候補に上がっていた、あんな車やこんな車が、ちょっとした思い込みゆえの候補だったことに気づくだろう。
意外といい車って、山程あるのだ。
SPEC
シトロエンDS3スポーツシック
- 年式
- 2012年式
- 全長
- 3956mm
- 全幅
- 1715mm
- 全高
- 1455mm
- ホイールベース
- 2455mm
- 車重
- 1190kg
- パワートレイン
- 1.6リッター直列4気筒ターボ
- トランスミッション
- 6速MT
- エンジン最高出力
- 156ps/6000rpm
- エンジン最大トルク
- 240Nm/1400-3500rpm
- タイヤ(前)
- 205/45R17
- タイヤ(後)
- 205/45R17