ドイツでも、イタリアでも、そしてイギリスでもなく、もちろん国産でもないオープンカー。寒い夜に幌を開け放って乗っていると、オーロラでも見えてしまうのではないか。
存在感を放つ絶妙なサイズ
ボルボC70カブリオレT5 SEは、北欧デザインの美学と実用性を兼ね備えたラグジュアリーなオープンカーだと思う。
全長:4590mm、全幅:1810mm、全高:1400mmというプロポーションは、都会的でありながらも存在感を放つ絶妙なサイズ感。
外観はシンプルながらも曲線が美しい。質実剛健さの中に、控えめながらも華やかな北欧らしさを感じる。リアデザインも洗練されており、個性もある。屋根の開閉問わず、雰囲気が一貫している。
決して派手ではない、でもどこか目を引く。見慣れないゆえの新鮮さ。
ドイツでも、イタリアでも、そしてイギリスでもない。
リトラクタブルハードトップは、30秒で屋根の開閉を完了し、閉じた際の静粛性とオープン時の開放感を両立している。
車内に目を移すと、インテリアは「スカンジナビアンモダン」を象徴するデザイン。「浮いた」センターコンソールは正面からも横からも見るものを魅了する。
上質なレザーシートやウッドトリムはいかにも北欧的だ。運転席はシンプルながらドライバー志向のレイアウトで、視認性が高く操作しやすい。
このすっきりとした「居心地」が、走り出しても変わらないのだから、C70は素晴らしい。
視界に広がる北欧デザイン
C70 T5 SEの心臓部には、2.5リッター直列5気筒ターボエンジンが搭載されている。
最大出力230ps、最大トルク320Nm。6速オートマティックトランスミッションと組み合わせる。
実際、ねちっこくもないし、うるさくもない。取り立てて力強いわけでもない。盛り上がりがないといわれればそこまでだけれど、視界に広がる北欧デザインの妙だろうか。これがすっきりとして感じられる。
それは操舵感にも通づる。ハンドルがまず軽い。
ペダル操作ひとつとってもそう。むやみに脚色されていたり重ったるかったりしない。
実直に、かつ安定して、V70は淡々と進む。
感心するのは乗り心地だ。
サスペンションはフロントにマクファーソンストラット、リアにマルチリンクを採用。ハイトの高いタイヤが下からの衝撃をまずまろやかにし、よく屈伸するサスペンションが、スッと衝撃を消し去る。
幌を開けようが閉めようが、車体はミシリともいわない。開けた状態でも、ほとんど風が入ってこない。つまり今の季節(冬)、暖房も効く。
日常に特別な瞬間をもたらす
安全性の代名詞ともいえるボルボは、このC70にもその哲学を反映させている。
ロールオーバープロテクションシステム(ROPS)やサイドインパクトプロテクション(SIPS)などの安全装備が標準搭載される。万が一の際にも安心だ。
特に、カブリオレという特性を考慮した独自のロールバーシステムは、高い評価を得ている。
サウンドシステムも悪くない。
ラゲッジスペースはルーフ格納時で200リッター、クローズ時には405リッターを確保しており、週末のドライブや買い物にも対応できるだろう。
「隠れた名車」という言葉が浮かぶ。
C70カブリオレT5 SEは、ただの車ではない。美しいデザイン、優れた快適性、そして卒のないマナー。
もうひとつポイントは、この車が、捻ったボディカラーではなく、どストレートな黒であること。薄水色のボディに、ホワイトのレザーという組み合わせもありだけれど、それだとちょっとスカンジナビアど真ん中すぎる。と個人的には思う(捻くれ者すぎ?)。1.5万kmのブラックを200万円以上で買う。漢だなあ。覚悟がいる。
走る楽しさが一体となり、日常に特別な瞬間をもたらすことは間違いない。人生を豊かにする相棒として、パリッパリにきれいなV70カブリオレをあなたは買えるだろうか。豊かさの本質はこんなところにあるのかもしれない。
SPEC
ボルボC70カブリオレT5 SE
- 年式
- 2011年式
- 全長
- 4590mm
- 全幅
- 1810mm
- 全高
- 1400mm
- ホイールベース
- 2640mm
- 車重
- 1730kg
- パワートレイン
- 2.5リッター直列5気筒ターボ
- トランスミッション
- 5速AT
- エンジン最高出力
- 230ps/5000rpm
- エンジン最大トルク
- 320Nm1500~5000rpm
- タイヤ(前)
- 235/40R18
- タイヤ(後)
- 235/40R18