BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

同世代のB5より大きな排気量で、同世代のM5より快適なトランスミッションで。乱暴な足し引きをすれば、5シリーズに大排気量+オートマの安楽さを求めるならこれ一択。

同世代のB5より大きな排気量で、同世代のM5より快適なトランスミッションで。乱暴な足し引きをすれば、5シリーズに大排気量+オートマの安楽さを求めるならこれ一択。

アグレッシブなスタイル

BMW 5シリーズ、5代目E60型。そのデザインは登場時から大きな話題を呼んだ。

クリス・バングルが手掛けたアグレッシブなスタイルは、従来のBMWデザイン哲学を大胆に刷新したからだ。

鋭いラインが織りなすボディは、エレガンスと野性味を同居させ、見る者に強い印象を与える。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

それでいて全体的なたたずまいは、控えめ。きちんとまとまっている。破綻していない。

特にヘッドライトとキドニーグリルの融合が生むフロントフェイスは、いまの5シリーズのデザイナーに見てほしいソリューションだと思う。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

車内に入ると、BMW特有の「ドライバーを中心に据えた哲学」が随所に感じられる。ほどよく傾斜したセンターコンソール、適切な位置に配置された操作系、そして包み込むようなレザーシート。ドライバー中心の設計だ。

豪華さと機能性をこの時代としては見事に調和させている。素材や仕上げにも妥協がない。

デザインの挑戦と、BMWらしい洗練が見事に共存していることに今の時代でさえ驚かされる。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

なめらかに前方へ進む

550iの心臓部には、4.8リッターのN62B48型V8エンジンが搭載されている。

このエンジンが放つ最大出力367psと490mのトルクは、単なるスペック以上のものを手元、足元、そして、耳にもたらしてくれる。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

キーを回した瞬間、フォンとひと吠えした後、アイドリング音が低く響く。

アクセルをそっと踏み込むと、550iはなめらかに前方へ進む。これだけで「見事!」と喝采を送りたくなるくらいに、密な所作。

そこからトルクの厚みが低回転から高回転まで途切れることなく続く。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

特に中高速域での加速にうっとりする。エンジンの咆哮は単なる音ではなく、美しい重音として耳に届く。このエンジンのためだけにお金を払ってもいいと思えるくらいだ。心の底から。

ステアリングフィールは極めて正確。適度な重みと高い応答性が相まって、車との一体感を感じさせる。

大型セダンでありながらスポーツカーらしい。今となっては小さくさえ感じる車体は、適度な重さとともに、思い通りに動かせる。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

考え抜かれたリッチさ

E60型550iは、スポーツ性能を追求する一方で、長距離ドライブに必要な快適性も抜群だ。

サスペンションは硬すぎず柔らかすぎず、路面の凹凸を適切かつ、やわらかく吸収してくれる。

いまの技術では、20インチであろうが、21インチであろうが、初期の「アタリ」こそあれ、適切に処理してくれるけれど、いっぽうでこのサイズのタイヤがもたらす、愛おしい乗り味もやみつきになる。これで十分ではないか、とさえ思う。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

車内の静粛性は非常に高く、高速道路でもストレスを感じることはほとんどない。

アクセルを強く踏み込んだ瞬間のみ、V8の力強い咆哮が室内に響き渡る。

このころの高級セダンに期待される装備がすべて揃いながら、どこまでも「駆けぬける歓び」に重点を置いている。

BMW 550i(FR/6AT)現行M5より排気量が大きかったフツーの5シリーズ

この車を買えば、BMWの目指していたことをピュアに感じ、この頃の考え抜かれたリッチさを再解釈できる。

本当の高級車って、こういうことだよなと、ストンと腑に落ちた。

SPEC

BMW 550i

年式
2006年式
全長
4855mm
全幅
1845mm
全高
1470mm
ホイールベース
2890mm
車重
1810kg
パワートレイン
4.8リッターV型8気筒
トランスミッション
6速AT
エンジン最高出力
367ps/6300rpm
エンジン最大トルク
490Nm/3400rpm
タイヤ(前)
245/40R18
タイヤ(後)
245/40R18
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

    著者の記事一覧へ

メーカー
価格
店舗
並べ替え