メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

女子で一卵性双生児の恋愛観を耳にしたことがある。曰く、姉あるいは妹と「ここが違う」、そしてそこを好きになって欲しいと。

女子で一卵性双生児の恋愛観を耳にしたことがある。曰く、姉あるいは妹と「ここが違う」、そしてそこを好きになって欲しいと。

車名から姿形までそっくり

「似て非なる」という表現は、クルマの世界においてはさほど珍しくはない。その昔の「羊の皮をかぶった狼」などもそのバリエーションであるだろう。

もっとも、車名から姿形まではそっくり、というか、ほとんど同じだというのに、乗ってみればまるで違う、というモデルは割と珍しいのではないだろうか。

今回、比較することになった2台がまさにそうだった。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ
メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

ありきたりな“R”でも“RS”ではなく、“Eパフォーマンス”という極めて今風なワードが+アルファされただけで、見た目はほとんど同じだというのに乗ってみればまるで違っていた。

試乗後にはなるほど新車時の価格差だけの差(いやひょっとするとそれ以上かもしれない)はあったものだと大いに納得したものだ。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ63 S 4マティックは、以前のリポートにもあるように、“全てを兼ね備えた”AMGモデルである。

面白いことに以前はその名を共有するメルセデスAMG GTという2ドア2シーターとはシャシー的に何ら関連のないモデルだったけれど、最新モデル同士では以前よりも関係性は深くなった。

2ドアのGTがSLと車台を共有したことで、乗用モデル寄りになったからだ。

マニアックな話はともかく、4ドアクーペのAMG専用モデル(2018年デビュー)ということで、スポーツ性はもちろん、実用性も兼ね備えた点が魅力であり、なかでも63Sは「全部載せ」のハイパフォーマンス仕様としてAMGファンの心を惹きつけてやまないグレードでもあった。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

さらに載せるモノがあった

ところが。2023年になって、さらに載せるモノがあったと知らされた。それが”Eパフォーマンス“であった。

メルセデスAMGにおける”Eパフォーマンス“とは、性能重視のプラグインハイブリッドシステムを積んでいることを意味する。

もちろん燃費や環境にも寄与するが、メインは性能アップであり、だからこそ”電気性能“という単語をプラスした。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

エンジンはこれまで通りである。すなわち4リットルのM177型V8ツインターボで最高出力639ps&最大トルク900Nmを発揮する。そのままでも十分に“お化け”だ。

これに電気モーター+バッテリーのスペックが追加されるというから容赦ない。システム統合スペックはなんと、849psに1400Nm以上というから、数字を見せられただけで竦んでしまいそうになる。

0→100km/h加速2.9秒という性能はもはやスーパースポーツカーの領域だ。実用車の範疇を大きく逸脱する。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

もっとも、W124ミディアムクラスにDOHCヘッドのV8エンジンを押し込んで“ハンマー”と呼んでいた頃を思い出してほしい(その後、500Eとして本家も製造することになるが)。

過激なる逸脱こそアファルターバッハの本領でもあった。

そう、狂気の沙汰もまたAMGの本領。(ハンマーなどではなく)Eパフォーマンスなどと狂気とは無縁のサブネームを付けるが、これぞ「全部載せ」、GT4ドアクーペの真骨頂である。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ
メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

要するにまるで違うクルマ

Eパフォーマンスには昔のAMGのような“得体のしれない”不気味なドライブ感覚があった。

不用意に踏んではいけないと自制を促されているようだ。

Cモードであってもその加速は激烈でスリリング、サウンドも太く地面に響いている。それでいて車体は相変わらずガッチリと骨太で、そこはパワートレインだけが飛んでいきそうな感覚はなく、一体感を保っている。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

否、一体感があるからこそ強烈だ。S+モードにすると昔のAMGが蘇ってきた。

怖くてもうそれ以上は踏めそうにない、と思わせる。

その感覚は2ドアクーペのGTより確実にあった。現時点でもっとも過激で野蛮なメルセデスであることは疑いようもない。

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S(4WD/9AT)/Eパフォーマンス(4WD/9AT)21世紀の幅広さ

そこからEパフォではない63 Sに乗り換えてみる。これはこれでとてつもなく速いが、手に負えない感覚はない。

V8ツインターボの威力をよりダイレクトに感じる。右足を踏み込んだ時のレスポンスにエンジンと繋がっているという心地よさがあった。変速もよりダイレクト。300kg軽い分、車体を小さく感じられ、全体的にはこちらの方がスパルタンに思えた。

要するにまるで違うクルマなのだ。ドライバーの感じる車両感覚が、サイズも重さも加減速も、まったく別のモデルであるかのよう。これだけ違うと甲乙付け難いというより、甲乙付けることに意味がない。

このスタイルが好きで好きでたまらないという人なら2台同時にガレージに収めていただいてなんら矛盾はない。それくらい「似て非なる」モデルである。

SPEC

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S 4マティックプラス

年式
2019年式
全長
5050mm
全幅
1955mm
全高
1445mm
ホイールベース
2950mm
車重
2170kg
パワートレイン
4リッターV型8気筒+ツインターボ
トランスミッション
9速AT
エンジン最高出力
639ps/5500~6500rpm
エンジン最大トルク
900Nm/2500~4500rpm
タイヤ(前)
275/35ZR21
タイヤ(後)
315/30ZR21

メルセデスAMG GT4ドアクーペ GT63S Eパフォーマンス

年式
2022年式
全長
5050mm
全幅
1955mm
全高
1445mm
ホイールベース
2950mm
車重
2410kg
パワートレイン
4リッターV型8気筒+ツインターボ
モーター
交流同期モーター
トランスミッション
9速AT
エンジン最高出力
639ps/5500~6500rpm
エンジン最大トルク
900Nm/2500~4500rpm
モーター最高出力(後)
204ps
モーター最大トルク(後)
320Nm
システム最高出力
849p
公称燃費
1400Nm以上
タイヤ(前)
275/35ZR21
タイヤ(後)
315/30ZR21
  • 西川淳 Nishikawa Jun

    マッチボックスを握りしめた4歳の時にボクの人生は決まったようなものだ。以来、ミニカー、プラモ、ラジコン、スーパーカーブームを経て実車へと至った。とはいえ「車いのち」じゃない。車好きならボクより凄い人がいっぱいいらっしゃる。ボクはそんな車好きが好きなのだ。だから特定のモデルについて書くときには、新車だろうが中古車だろうが、車好きの目線をできるだけ大事にしたい。

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