台数が少ない故に超有名なクルマと、少ない故にあまり知られないクルマが存在する。〇〇の派生モデルだよね、と言いたくなる気持ちを抑え、一度体験してみようではないか。
マニア心をくすぐる
GRMNとは、ガズー・レーシング・マイスター・オブ・ニュルブルクリンクの略。
レース活動と市販車開発における、ドイツ・ニュルブルクリンクとのつながりや経緯が車名に示されている。
そんなクルマがトヨタには4車種ある。
・iQ
・ヴィッツ
・86
・マークX
今回の主役はマークX。スリーボックス、FR、大排気量エンジンという、マニア心をくすぐる言葉がならび、レセンス読者にとっても垂涎の的ではあるまいか。
マークX GRMNの第一弾デビューは2014年だった。3.5リッターV6をダイレクトに操るために6速マニュアルを組み合わせ、専用チューニングのサスペンション、補強用ブレース、ドアスタビライザーの追加によってボディ剛性を高めた。
足元は専用トルセンLSDに前後異径タイヤ、軽量ブレーキがおごられた。さらには外装の前後に空力パーツが付き、CFRP(炭素繊維強化樹脂)のルーフに置き換わる。ようするに本気だ。
そして2019年、本記事の主役、マークX GRMN第二弾が加わった。
350台の限定モデル
第二弾は、第一弾と比べて、リアディファレンシャルギア比が異なるほか、トランスミッションとのマッチングを図ってエンジンの出力制御特性を変えてきた。
驚きなのは、過去、スポーツモデルと作り込むために使われた元町工場で、スポット溶接打点を252箇所も増やしたこと。
3.5リッターV6ユニットは、318ps/6400rpm、380Nm/4800rpmを発揮。タイヤは235/40 R19、255/35 R19を組み合わせる。
350台の限定モデルで、新車価格は540万円(税込み)。
参考までに、350S G'sは432万円、250G SパッケージG'sは369万円であった。
車両を前から後ろまでぐるりと見渡すと、前後のバンパー形状が明らかに異なることがわかる。フロントは大きく口を開け、左右にエラが張っている。
リアはスポイラーや4本出しマフラーなど、このクルマが特別な仕様であることを物語っている(せっかくならばフェンダーを出してくれてもよかったのに!)。
室内に目を向けるとまずバケットシートの存在感が大きい。4枚ドアのセダンに組み合わさるバケットシートは、よけい、クルマ好きの心をくすぐる。
玄人も唸らせます
GRと書かれたスタートボタンをポチッと押すと、フォンと軽くエンジンが吠える。今時めずらしくショートストローク型エンジンっぽさがすぐに感じられる。
早速走り出すと、操作感の軽さに気づく。4枚ドアのスポーツモデルと聞くと、どうしてもドイツのそれらを連想するものだから、けっこう身構えていたけれど、そこはトヨタのクルマ。
軽く回りゆく3.5リッターV6との相性の良さを感じる。エンジン自体にもう少し奥行きとエモーショナルさがあれば、言うことはまったくなかっただろう。ここだけが惜しい。
ステアリング切りたてからすっとヨーが立ち上がっていき、そこから、たしかに、着実にゲインが高まるナチュラルな動き。
「大衆車をベースにちょっと素人を驚かすクルマを作りました」といったノリではなく、「いろんなことを経験してきた車好き玄人も唸らせますよ」といったトヨタの覚悟を感じさせる。
あれよあれよという間にハイスピードに達し、気づいたらこの車の限界を探るようになる。そして高い限界に、もっと挑もうとしている。スポーツカーだ…。
そんな領域でも驚くのが乗り心地。GRMNシリーズに共通する、強固なボディゆえの快適な乗り心地。ボディ補強による副次効果だと思う。
できれば、とくにドイツ信奉の趣味人に乗ってみてほしい。トヨタが本気を出したら、こんな車も作れるということを、まざまざと知ることになるだろう。
SPEC
トヨタ・マークX 3.5 GRMN
- 年式
- 2019年式
- 全長
- 4795mm
- 全幅
- 1795mm
- 全高
- 1420mm
- ホイールベース
- 2850mm
- 車重
- 1560kg
- パワートレイン
- 3.5リッターV型6気筒
- トランスミッション
- 6速MT
- エンジン最高出力
- 318ps/6400rpm
- エンジン最大トルク
- 380Nm/4800rpm
- タイヤ(前)
- 235/40R19
- タイヤ(後)
- 255/35R19