トヨタの「オリジン」に対する当時の思いを知り、ふと思う。ひょっとして方向性こそ違えども、量産価格に対して採算が合わなかったLFAのようなクルマなのではないかと。
オリジンのモチーフ
トヨタ・オリジンのモチーフは、初代クラウンだ。
国内自動車生産が累計で1億台を達成した際の記念事業の一貫で生産された。
それは2000年11月〜2001年3月という、たったの4か月という期間だった。
当時の新車価格は700万円。現在の中古車市場でも、走行距離が少ないものは新車価格より「すこし安い」くらいで販売される。
なお新車台数の累計は1063台と少ない。
いわゆるレトロ調であり、プラットフォームは「プログレ」を流用する。
生産ラインはセンチュリーと同じ。トヨタは「長年にわたって培ってきた『匠の技』と最新自動車技術との融合を図った」と説明する。
なるほどと納得する
車両を見渡すと、観音開きのドアや、クオーターピラーまでラウンドする、バックウインドウガラスなど、オリジンにしかないディテールが見て取れる。
筆者はオリジンをそばでじっくりと眺めることが初めてだったが、仕上げがとても美しく、かっこだけで作ったゆえのお粗末さ、みたいなものとは無縁だ。
新造部品がほとんどで、外装も手作業による制作だと聞いて、なるほどと納得する。
ドアを開けると、ベージュの革でほとんどが覆われた内装が目に入る。
たしかにスイッチ類はプログレで見たことのあるものだが、シートの縫い目のピッチや、厳選して取り入れた木目パネルなど、明らかに質感が高い。
質感が高いゆえの緊張感もある。イギリス車の温かみと、ドイツ車の精緻さの中間にあり、とても好印象だ。
「プチブル」というのはもったいない。小さなセンチュリーと呼んでいいだろう。
設えの良いクラシック
走り出しても、オリジンらしさは際立つ。3リッターのVVT-i機構付き直列6気筒はなめらかに周り、遮音も徹底されている。
215psという出力はこのサイズの車に十分で、12気筒のような余裕とは言い難いけれど、少なくともたっぷりゆとりがある。
4速ATの、のったりとした変速がまたいい。どこか懐かしく、オリジンのキャラクターにぴったりだ。
前後ダブルウィッシュボーン式のサスペンションがもたらす乗り心地はふわふわとしたもので、エアサスと言われたら信じてしまうかもしれない。
当時の安全装備としては、デュアル&サイド&カーテンシールド・エアバッグのほかに、ABS、TRC、VSCが備わっていた。
またブレーキアシストや、プリテンショナー&フォースリミッター付きシートベルトもあった。
ようするに、25年が経とうとする今買っても、コンディションがよい個体であれば、安心して、しかも設えの良いクラシックカーを楽しめることになる。
あとは市場価格に満足できるかどうかだが、今後の値動きまで考えても、わるい買い物にはならなそう。
あともうひとつ、オリジンに乗っているというだけで、無条件に褒めてもらえるだろう。ほんわかした、憎めない、でも緊張感と本物の高級感が備わった、稀な車だ。
SPEC
トヨタ・オリジン
- 年式
- 2001年式
- 全長
- 4560mm
- 全幅
- 1745mm
- 全高
- 1455mm
- ホイールベース
- 2780mm
- 車重
- 1560kg
- パワートレイン
- 3リッター直列6気筒
- エンジン最高出力
- 215ps/5800rpm
- エンジン最大トルク
- 294Nm/3800rpm
- タイヤ(前)
- 195/65R15
- タイヤ(後)
- 195/65R15