中くらいサイズのクロカン4駆。軽でもなく、大きすぎず。このスズキのマーケット開拓が今街中に溢れかえるミッドサイズSUVに繋がっているとしたら見方はきっと変わる。
「クロカン」といえば
忘れていた…、というのが正しい表現だろう。スズキ・エスクードのこと、知っているのに、すっかり頭から抜けていた。
1988年に初代が登場。80年代までは、「クロカン」といえば、ガチなやつで、特殊用途=ユーザーも限定されていた。
スズキはこの頃「使用シーンの変化傾向をいち早く捉えた」と資料で述べている。
結果、スズキ以外のブランドのクロカン四駆に空白地帯を見つけた。それが1.6Lクラスであり、まずは3ドアに手を付けた。
この頃はまだ市場理解に手こずった。けれど粘り強く派生車種を出し続ける。1990年にはエスクード「ノマド」を投入。3ドアの全長3560mmを3975mmに、ホイールベース2200mmを2480mmに延長。ドアを5枚に増やした。
同年、「レジントップ」を追加展開。前席上部に脱着可能なサンルーフ(樹脂製)を備えるこれは、コンバーチブルの開放感とハードトップの気密性のいいとこ取りをめざした。
1997年には2代目(3ドアのみ)、2005年には3代目(5ドア、のちに3ドア)、2015年には4代目が投入された。
ラギッドな印象が強い
初代のデビューから36年!
都市型4WDをめざしたとスズキはいうが、左右に思い切り張り出したブリスターフェンダーや厚みのあるタイヤ、角張ったボディのおかげで、現代の視点だと、ラギッドな印象が強い。
少なくとも当時はかなり新鮮だっただろうし、他のシティSUVと比べて古っぽく見えないとも感じた。おそらく現代ではほとんど見ることがないからというのもあるだろう。
いっぽうの室内は、シティ感がたっぷりである。
モケットの肉厚なシートに、エレガントなデザインのステアリング、デザインが整えられたインパネ。
80〜90年代中盤のデザインって、エモくない? あまり使い慣れない言葉を使ってみる。
搭載するエンジンは1.6リッター直列4気筒。100ps/6000rpmを生み出す。
トランスミッションとトランスファーは一体成型。静粛性を求めて、センタースルー方式の4WDの機構を組み合わせる。
乗ると、どんなかんじなのだろう…。好奇心が湧いてくるのは私だけではないだろう。
それでいいではないか
乗り始めてまず、ドアの薄さ、グラスエリアの大きさにわくわくする。ちょっと古い車にのっている、というわくわくだ。
このエスクードのために作られた1.6リッターエンジンは、馬力こそ控えめだけれど、1010kgという驚きの軽さゆえ、一般道で走る限りは非力だと感じることはないだろう。
ステアリングは遊びが多く、伝えてくれる情報は少ないいっぽう、いざ荒れた路面を走らせるならば、岩場のキックバック対策で、このゆるさが重宝するに違いない。
また当時の、そして現在のジムニーよりもゆったりとゆとりがある。とても安楽だ。室内も広い。見晴らしがいい。
乗り心地はまろやかで、結果的に乗っていて、嫌なところがまったくない。
裏を返せば、「特徴がない」ということになるのだけれど、それでいいではないかと思う。
早くも40年が経過しようとしている。それでいて、デザインは今見ても斬新で、たっぷりと特徴もある。これを、ゆるく、ゆったり流すことができるのだから。
もうこれだけで十分楽しい時代になったのだ。古着感覚で、楽に、リラックスして乗ってほしい。
SPEC
スズキ・エスクード 3ドア 1.6 ハードトップ GリミテッドⅢ 4WD
- 年式
- 1991年式
- 全長
- 3560mm
- 全幅
- 1635mm
- 全高
- 1665mm
- ホイールベース
- 2200mm
- 車重
- 1010kg
- パワートレイン
- 1.6リッター直列4気筒
- トランスミッション
- 4速AT
- エンジン最高出力
- 100ps/6000rpm
- エンジン最大トルク
- 137.3Nm/4500rpm
- タイヤ(前)
- 205/70R16
- タイヤ(後)
- 205/70R16