フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

ワークアウトなんて言いながらジムに行かず、この頃の全身で操るクルマを買ってみるのはどうだろう。車内では想像以上にスポーツしているかもしれない。まさに一挙両得だ。

ワークアウトなんて言いながらジムに行かず、この頃の全身で操るクルマを買ってみるのはどうだろう。車内では想像以上にスポーツしているかもしれない。まさに一挙両得だ。

徐々に近代化された

大衆車のベンチマークとも言えるフォルクスワーゲン・ゴルフ。今や第8世代まで受け継がれている。

今回の主役はゴルフII。それもGTIだ。

そもそもゴルフIIのデビューは1983年秋。ゴルフIからのフォルムは大まかに引き継がれつつ、各所が近代化された。といってもまだ三角窓はあったし、ドアミラーも古風なものの時代。マイナーチェンジを経て、徐々に近代化された。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

GTIの日本への正規輸入が始まったのもこの世代から。SOHC 8バルブのGTIが登場したのちに、DOHC 16バルブが加わる。丸目ヘッドライトが左右2灯か4灯で見分けがつきやすい。

前者は通常モデルより15ps増しの105psを発揮。2ドア、5MT、左ハンドルのみの設定であった。タイヤは185/60 14インチ。

エアコンやパワステ、パワーウインドウや電動ドアミラーが標準で備わり、リアスタビライザーや強化ダンパー、スポーツマフラーなどが備わった。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

ゴルフI GTIと同じく、バンパー外周には赤いストライプが入る。GTIの象徴にもなったのだった。

その後、複数回のマイナーチェンジを経て登場したのが、この記事の主役、GTI 16Vである。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

いわゆる「4灯グリル」

1987年2月、まずは2ドアのみが導入される。最高出力は125psに到達。リップスポイラーは厚みを増し、ブレーキを冷やすために冷却ダクトが設けられた。

8か月後、10月には4ドアが加わる。グリルやエンブレムの位置が細かく変わり、いわゆる「4灯グリル」になる。

ブラック、ホワイト、ブルーメタリック、レッドの4色展開となり、さらにここから細かな変更を受けつつ成長していった。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

89年にはブレーキが大きくなる。グレーメタリックも選べるようになった。

90年モデル(89年10月以降)はビッグバンパーに切り替わる。

集中ドアロックが備わるのもこの頃だ。この次点でホワイトとレッドが消滅した。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

そして90年10月、91年モデルが最終MYとしてラインナップされる。シートの柄や形状、スピーカーの追加などがハイライト。

テスト車は89年式。

サスペンションが車高調整式の社外品に入れ替わり、フロントタワーバーが追加されている。排気系もワンオフ制作され、タイヤはミシュランのパイロットスポーツ3を組み合わせている。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

純度の高まった「憧れ」

小さい。カクカクしている、軽い。令和の今、もっともつくれない車は、ゴルフIIみたいな車だろう。愛嬌もある。

元気なエンジンはビンビンと回り、抜けのよい乾いた音が響く。

ひょっとして硬いかなと思っていたアシは、ほどよい減衰力と強化されたボディのおかげでまろやか。手元に伝わってくる情報はリアルで、ステア操作の反応に脚色はない。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

80年代の車ってこんなに「リアル」だったのだ。経験的にわかっていたつもりでも、実際に乗ると、ことさら強く感じる。

現代車に慣れきった身体のなまりにも気付かされる。「車を走らせている!」という実感。アドレナリンが湧き出す。

別物のモンスターと思っていたGTIは、ターボや電気に慣れていると、実際のところ大して速くもない。しかし一生懸命にシフト操作をしハンドルを切れば、体感的には実際のスピードより何十km/hも出ている感覚になる。スポーツしている。と思う。ちょっと汗をかいている。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V(FF/5MT)憧れに再会する覚悟はあるか

「憧れのGTIを再び操れている」という充足感もあるのだろう。ピンと張った赤いストライプ、ゴルフボールみたいなシフトノブ、チェック柄のシート。

目に入ってくる、そして身体に触れるすべての情報は、長い時間を経て、さらに純度の高まった「憧れ」へと昇華されているようだ。

これを、今、手に出来るとしたら幸せである。今だからこそ、もっと幸せなのかもしれない。チャンスだ、と思うならば次のアクションは明らかに決まっている。

文:上野太朗(Taro Ueno)

SPEC

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI 16V

年式
1989年式
全長
4050mm
全幅
1680mm
全高
1430mm
ホイールベース
2475mm
車重
1060kg
パワートレイン
1.8リッター直列4気筒
トランスミッション
5速MT
エンジン最高出力
125ps/5800rpm
エンジン最大トルク
167Nm/4250rpm
タイヤ(前)
195/50R16
タイヤ(後)
195/50R16
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

    著者の記事一覧へ

メーカー
価格
店舗
並べ替え