フォルクスワーゲン・ゴルフR32(4WD/6MT)それぞれの先祖を見れば納得する

試乗中に口をついて出た言葉があった。よくよく考えれば共通の祖先を持つともいえるそのクルマと同様に、ゴルフR32もそこから派生した正常進化と言えるのかもしれない。

試乗中に口をついて出た言葉があった。よくよく考えれば共通の祖先を持つともいえるそのクルマと同様に、ゴルフR32もそこから派生した正常進化と言えるのかもしれない。

本格的なスポーツモデルだ

ただでさえ、ちょっと前のフォルクスワーゲン・ゴルフって見ないのに、ゴルフIVなんて…。GTIですら…。仮に走っていても年季の入った車が多い(それはそれで味わいがあっていいのだけど。)

いっぽう、今回試乗するゴルフIV世代のR32は違った。21年間で ―もう20年以上前の車なのだ― 7万km後半のマイレージしか刻んでいない。見た目はパリパリに綺麗で、たった今、工場から出荷されたかのような見た目。

走る前から期待が高まる。

フォルクスワーゲン・ゴルフR32(4WD/6MT)それぞれの先祖を見れば納得する

コンパクトカーの優等生、フォルクスワーゲン・ゴルフIVの最上位モデルとして登場した「R32」は、ビートルに次ぐRモデルだった。

2002年5月にスペインで発表されたのちに日本には2003年1月に導入。

2ドアは395万円、4ドアは405万円。GTIに対して、本格的なスポーツモデルというのが「R」がつくモデルのミッション。

フォルクスワーゲン・ゴルフR32(4WD/6MT)それぞれの先祖を見れば納得する

エンジンはフォルクスワーゲンの狭角3.2リッターV6自然吸気。最高出力は241ps/6250rpm、最大トルクは320Nm/2800-3200rpm。

右ハンドルのみが日本に導入された。

駆動方式はハルデックスカップリングを用いた4モーション(4WD)のみの設定。最高速度は247km/h、0-100km/h加速タイムは6.6秒と発表された。

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「只者ではない」感がある

たしかに小さなゴルフIVなのだが、開口部が大きく開いたバンパーやリアスポイラーなど「只者ではない」感がある。

四隅のホイールアーチはこれでもかと張り出し、全く違うクルマのようだ。

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もともとの車体のタイヤ周辺を大きく張り出させるという行為、人類の自動車デザイン史における最大の発明ではないかと思う。遺伝子レベルで張り出したフェンダーへの羨望が刻まれているのではないかと思うほどだ。

タイヤは225/40 ZR18。現代視点でもファットである。

フォルクスワーゲン・ゴルフR32(4WD/6MT)それぞれの先祖を見れば納得する

外から室内を覗くと「R」と書いたバケットシートが見える。このレザーシート、ケーニッヒが作っているという。

ダッシュボードのパネルはアルミニウムに置き換わり、その右側には革巻きの太い3本スポークステアリングホイールがセットされる。更にスピードメーターは300km/hまで刻まれる。

待てない…。眺める時間がもったいない。足早に乗り込み、走り出した。

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まるで色褪せていなかった

しっかりと張り出したシートは大ぶり。クッション性が高く、見た目に反して心地いい革張りのソファに座っている感覚になる。

ドライビングポジションは典型的なハッチバック車で、つまりやや直立、足元のペダルは奥深くにある。

シフトノブを握る際も手を下にもっていく、典型的なハッチバック車のしつらえだ。だから落ち着く。

フォルクスワーゲン・ゴルフR32(4WD/6MT)それぞれの先祖を見れば納得する

エンジンをかけてまず驚くのは、軽すぎるくらいに軽い回転フィール。まるで引っかかりがなく、レッドゾーンよりはるか先まで回ってしまうのではないかとさえ思う。

乾いた音。低速トルクこそ、現代のターボ車に慣れていると心もとないけれど、2500rpm前後でぐっと車体に力が掛かり、そこからは力強く加速する。

その間、回転感は常に軽く、ふと出てきた言葉は「911 GT3だ…」だった。大げさな表現ではなく、これほど淀み無く回るエンジンは他にない。基本的なインテリアの景色は変わらずとも、どこかレーシーで、走らせると信じられないくらい精緻な機械感覚。996世代の911 GT3を私は思い出したのだった。気持ちがいい…。

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乗り心地に問題はなく、ボディの硬質な感触もいかにもドイツ車らしい。20年経っても、鮮烈なキャラクターはまるで色褪せていなかった。それどころか、現代の車にくらべて味わい深くもある。

いざ冷静になると、ゴルフIVは、過小評価されがちであることに気づく。しかしR32は、間違いなく名車である。それほどエモーショナルであるのに精密だ。

フォルクスワーゲン・ゴルフR32(4WD/6MT)それぞれの先祖を見れば納得する

忘れていたわけでも、食わず嫌いなわけでもなく、ただただ見過ごしてしまっていたことが恥ずかしくなった。時代を経てもまったくもって色褪せないから、なおさらである。これをいい車というのだろう。

文:上野太朗(Taro Ueno)

SPEC

フォルクスワーゲン・ゴルフR32

年式
2003年式
全長
4165mm
全幅
1735mm
全高
1435mm
ホイールベース
2520mm
車重
1510kg
パワートレイン
3.2リッターV型6気筒
トランスミッション
6速MT
エンジン最高出力
241ps/6250rpm
エンジン最大トルク
320Nm/2800-3200rpm
タイヤ(前)
225/40ZR18
タイヤ(後)
225/40ZR18
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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