フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

ターゲット宅の近くに路駐されたバン。荷室の中には夥しい電子機器と諜報部員がいて、スパイ活動をしている。映画的にそんなアウトローな使い方にも重宝される一台なのだ。

ターゲット宅の近くに路駐されたバン。荷室の中には夥しい電子機器と諜報部員がいて、スパイ活動をしている。映画的にそんなアウトローな使い方にも重宝される一台なのだ。

事務的なモデル名も萌え

ついにRESENSE(レセンス)にもフィアット・デュカトが並んだ。デュカトはいわゆるLCV。Light Commercial Vehicle。小さなはたらく車、とはいえ大きい。

日本に正規導入されるのは
・L2H2
・L3H2
の2種類。

お察しのとおり、Lは全長、Hは全高だ。全幅は2100mmと共通でありながら、LとHで差別化がはかられる。事務的なモデル名も萌えポイントだ。

フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

・L2H2
 全長:5410mm
 全高:2525mm
 ホイールベース:3450mm
 キャビン全長:2960mm
 キャビン全幅:2000mm
 キャビン全高:1970mm
 車両重量:2130kg
 最大積載量:1250kg

・L3H2
 全長:5995mm
 全高:2525mm
 ホイールベース:4035mm
 キャビン全長:3540mm
 キャビン全幅:2000mm
 キャビン全高:1970mm
 車両重量:2180kg
 最大積載量:1200kg

さらに大きなモデルとして「L3H3」が存在しており、こちらはL3H2と全長/全幅が共通ながら、全高が2765mmとなる。

フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

今回試乗した個体はもっとも小さいL2H2。とはいえ、ひとこと「でかい」。

たとえばトヨタ・ハイエースのスーパーロング/ワイドボディは、
全長:5380mm
全幅:1920mm
全高:2285mm
となる。

もっとも大きなハイエースにくらべて、もっとも小さなデュカトは全長が30mm、全幅が605mm、全高が240mmもデカい。

結果、180cmを超える人間がフロントノーズの位置に立っても、ヘッドライトは腰より上、背中辺りにくる。規格外なのだ。

フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

ワークフォース感を醸す

外装をみていくと、ヘッドライトとグリルはうっすらとフィアットらしい見た目であるものの、あとはバン、いやマイクロバス感のほうが強く、フィアットであることはもはや重要ではないとさえ感じる。

ごああああっとスライドドアを開けると広大な空間が出現。キャビン内全高は2m弱。中でも人間が直立できるどころかジャンプしても頭が当たることはない高さだ。

個人的にさらに萌えるのは架装ベースゆえ、内部まできちんと塗装されていない点。あるところからボディカラーとサフェーサーのグラデーションとなり、それがいかにもワークフォース感を醸す。

フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

室内は目線こそトラック然としているものの、ステアリングやスイッチ類、ナビゲーションシステムなどは乗用車そのもの。

スマートフォン連携ができる10インチナビ、バックカメラ、バックソナーは標準。

デジタル・インナー・ミラーのおかげで荷室に遮られた後方もクリアに見える。

フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

・アダプティブクルーズコントロール
・レーンセンタリングアシスト
・歩行者検知機能付き衝突被害軽減ブレーキ
・レインセンサー
・クロスウインドアシスト
・ポストコリジョンブレーキ
・パーキングカメラ
・コーナリング機能付きフォグランプ
なども全車標準で備わる。

いかにも大きく無骨なLCVはしかしドライバーに優しいかもしれないと思い始めた。

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思ったよりも乗りやすい

ドライバーズシートに乗り込むと、まず視線の高さに驚く。今まで乗ったどの車よりも高いレベルにあった。

走り出すと、想像していた商用車っぽい「ガサツ」なところは程々に抑えられていると感じた。

たしかに2.2リッター直列4気筒ディーゼルのノイズや、明らかな「箱感」は手元や足元に伝わってくる。乗り心地も、荷物を載せた状態のほうがより良いだろう。

フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

しかし、ステアリングフィールや、扁平率の高いタイヤに起因するまろやかな乗り心地が、結果的に乗り手の気持ちを穏やかにしてくれる。優しい車、なのだ。

駆動方式はFFだが、最小回転半径は6.3m。大柄な車体から予想するよりも小回りがきく。

サイズを抜きにすれば(というのはなかなか難しいけれど)、あるいは生活や仕事のなかでデュカトサイズの車が必要な人にとっては「思ったよりも乗りやすいぞ」と思うに違いない。

フィアット・デュカトL2H2(FF/9AT)この広さ、都内の一等地なら幾らだろう

筆者個人、この車の場合、何よりも重要なのは、積載性能と同じくらい「かぶらない」という点ではないかと思う。

家具屋さんか、移動式カフェか、デュカトはいずれにせよ個性的な仕事の相棒になることだろう。ほかとかぶらないことは大切だ。

優しいデュカトになにを詰めよう。からっぽの宝箱のように思えてくるのだった。

文:上野太朗(Taro Ueno)

SPEC

フィアット・デュカトL2H2

全長
5410mm
全幅
2100mm
全高
2525mm
ホイールベース
3450mm
車重
2130kg
パワートレイン
直列4気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
9速AT
エンジン最高出力
180ps/3500rpm
エンジン最大トルク
450Nm/1500rpm
タイヤ(前)
225/75R16
タイヤ(後)
225/75R16
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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