ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

今と正反対の季節を想像して欲しい。薄暗い朝夕、街が色を失うどんよりな悪天。少しでも自然光が恋しくなるそんな時、クーペでもなく、カブリオレでもなく、タルガなのだ。

今と正反対の季節を想像して欲しい。薄暗い朝夕、街が色を失うどんよりな悪天。少しでも自然光が恋しくなるそんな時、クーペでもなく、カブリオレでもなく、タルガなのだ。

けっこう硬派なのだ

タイプ992の発売から約2年半。GTSが加わった。

カレラGTS、カレラGTSカブリオレ、カレラ4 GTS、カレラ4 GTSカブリオレ、タルガ4 GTS。

12年前、タイプ997以来、内外装と走りのスポーティネスと快適性を両立させるモデルとして人気だ。

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

心臓部の3リッター水平対向6気筒ツインターボは480psと570Nmを発生。先代を20Nm上回るに至った。8速PDKがもたらす0-100km/h加速タイムは先代-0.3秒の3.3秒を記録(カレラGTS)。MTモデルはショートストロークシフトになった。

専用サスペンションは911ターボ由来。クーペ/カブリオレは、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)が標準となる。

PASM装着車の場合、車高は10mm下がり、スポーツシャシーが組み合わされる。ポルシェは「リアステムのヘルパースプリング・コンセプトによって、全条件でメインスプリング張力がかけられる」と説明する。(その分、乗り心地には覚悟が必要だけれど…。)

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

前:20インチ、後:21インチのセンターロック式軽量合金ホイールはターボから持ち込んだセンターロック式。

スポーツエグゾーストシステムは標準で、GTS用にチューニングされる。遮音材が一部省かれているから室内に入る音も大きい。

と、けっこう硬派なのだ。

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

ハードな走りを想起

外観は従来のGTSの文脈を受け継ぐ。

多くのディテールがサテンブラックやハイグロスブラックに塗り分けられている。具体的には、リップスポイラー、センターロック式ホイール、エンジンフードルーバー、ドアやヒップのGTSロゴがサテンブラックだ。

オプションでこれらとその他をハイグロスブラックに仕上げた「エクステリアパッケージ」を選ぶこともできる。

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

なお、スポーツ・デザイン・パッケージは全GTSモデルに標準。

フロント、リア、サイドシルのトリムが他と異なる。ヘッドライトのリムとデイライトの周囲はダークカラーで、PDLSプラス(ポルシェ・ダイナミック・ライト・システム・プラス)も標準。高価なオプションゆえありがたい。テールライトもGTS独自のものになる。

テスト車はさらにブルーの差し色が増えている。ゆえにスポーティ過ぎぬ、涼しい抜け感を感じられる。

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

インテリアもまたGTSらしいもの。GTスポーツステアリング、モードスイッチ付きのスポーツクロノパッケージ、ポルシェ・トラック・プレシジョン・アプリ、タイヤ温度モニターなど走りにまつわるパーツがアップデートされている。

エレガントでありながらハードな走りを想起させる。

シート中央、ステアリングトリム、ドアハンドルとアームレスト、グローブボックスやシフトレバーに至るまで「Race-Tex」があしらわれ、手に触れる喜びに満ちているのもGTSの特徴だ。

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

プロポーション推し

キーレスで乗り込み、ステアリングの麓にあるつまみをひねると、一瞬で乾いた高音と野太い低音の和音が大きく響く。

小さなつまみになったシフトレバーを倒してDに入れると、なんの苦労もなく走らせることができる。

アクセルを踏むと、ザクッと切れ味鋭い鉈で草をまとめて切り取るような快感を伴う、歯切れのよい加速を得られる。ステア操作もしかり。過度な脚色はなく、あくまで実直に素材を磨き込んだ気持ちよさだ。

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

タルガならではの魅力はあるのか? 筆者(上野太朗)個人としては、タルガゆえのこんもりと盛り上がったリアウインドウにあると思う。真横から車体全体を見た時に、これが、クーペと異なる「前傾姿勢」を演出する。これがかっこいいのだ。

言うまでもなく、タルガが受け継いできた「フープ」や、美しくラウンドするガラスを、眺める歓びもあるけれど。

さらにタルガトップが開く、まるで超合金のようなギミカルな動作も素晴らしい。あれだけの大きなものを、複数のパーツを絡めながら動かすにもかかわらず、動作に心もとなさが一切ないジャーマン・クオリティにも拍手を送りたい。

ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット

上屋が大きく動くものの、走っていて剛性感に不満を感じることもない。要するに隅々まで立派なのだ。

繰り返しになるが、筆者としては、タルガトップが偶発的に引き立てる全体のプロポーション推し。

これだけでも価値ある買い物になるとまで断言は出来ないが、車の外でも中でも、クーペやカブリオレとは異なる、レアな満足感に浸れることは約束する。

そのうえ走りはスポイルされていないのだから、往年のタルガに思いを馳せながらドライブできるというロマンティックな価値もある。

文:上野太朗(Taro Ueno)

SPEC

ポルシェ911タルガ4 GTS

年式
2022年
全長
4533mm
全幅
1852mm
全高
1299mm
ホイールベース
2450mm
車重
1920kg
パワートレイン
3リッター水平対向6気筒+ツインターボ
トランスミッション
8速PDK
エンジン最高出力
480ps/6500rpm
エンジン最大トルク
570Nm/2300~5000rpm
タイヤ(前)
245/35ZR20
タイヤ(後)
315/30R21
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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