アウディA2(FF/5MT)あなたの知らないアウディの世界 マニア心に火をつける

アウディ、ビーエム、ベンツ。それほどクルマに興味が無くとも、イメージは様々だが大多数が認知している。ではこれならどうだ。その名も並行車のみの「アウディA2」だ。

アウディ、ビーエム、ベンツ。それほどクルマに興味が無くとも、イメージは様々だが大多数が認知している。ではこれならどうだ。その名も並行車のみの「アウディA2」だ。

生存する台数が少ない

アウディA2。

知ってはいたものの、なかなか乗る機会がなかったのは、ひとえに国内に生存する台数が少ないからだ。間近で見るのもこれが二度目である。

アウディの車であるのはまちがいないのに、どこか不思議なルックス。サイズ感はもちろん、デザインのディテールにあまりに既視感がなく、ほかのどの車とも似つかわしくないからなのだと思う。

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昔の資料を掘り起こすとアウディはA2について「21世紀の先進的なモビリティを切り開く」と宣言している。革新的でコンパクト、広々として軽量、安全性や環境適合も強く意識していると続く。

アウディA2はアルミニウムボディとして初の量産車だった。結果、スチールボディよりも895kg軽く、同サイズのライバルよりも150kg軽かった。そんなアルミボディゆえに市場で理解されなかったというのはなんとも皮肉な話ではあるけれど…。

ボディパネルを外したスケルトン状態をみると、フロントの縦部材はアルミニウム管で構成されており、衝撃吸収も得意とするのだという。安全性にも配慮した設計だ。

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しかし、ぶつかったときのサポート体制まではあまり考慮されていなかった。アルミニウムの修理は大変なのだ…。

ほか、価格など様々な理由で日本へ正規輸入されなかったアウディA2。こんなにきれいな形で生き延びてきたことに感謝しつつ、まずは内外装を見ていこう。

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いちいち凝っている

記憶のなかにあるアウディA2は、つるんとして腰高、ミニバンをぎゅっと小さくして、クーペっぽくしたデザインだった。けれどそれを目の当たりにすると、奇妙なディテールがたくさんあった。

胴体はタイトだけれどフェンダーアーチはグッと張り出している。初代TTのようにシンプルだけれど、(開かない)ボンネット上部の切れ込みや、(開く)グリル周辺の造形がいちいち凝っている。

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高い位置から見ると、車体中央から前後に向かってラグビーボールのようにすぼんでいく。Cピラーの造形、なんじゃこりゃ。それに合わせてリアハッチのガラスが曲がっている。写真で見るよりも圧倒的に「変わった」車なのである。

この時点で、マニアな自分が目覚め、ちょっと鼻息が荒くなってしまっている。「へんだなあ、奇妙だなあ」。褒め言葉である。「へん」を絶妙なバランスでまとめ上げているからこそ言えることばである。

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いざ乗り込むと視界の広さにも驚く。室内空間のフロアは2階建て構造になっており、後席の住人の足元は、フロントシートの下に潜り込む(1階)ようになっている。だから、ボディサイズ(全長:3826mm、全幅:1673mm、全高:1553mm、ホイールベース:2405mm)に対して、窮屈と感じづらい。

そのうえ、よくもまあ、こんなにシンプルなデザインができたものだと感心する。大きな液晶パネルにいろんなスイッチを隠しこむことは容易だけれど、この時代に、物理スイッチをもってして、整然と、しかし機能的にそれらを並べた。

制約の中で見た目と機能を両立する。この頃のアウディから学ぶことは多い。

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「軽さって正義だなあ」

パコっとドアがあいて、タンとドアがしまる。硬質な感触。懐かしく、力強い。

極限までシンプルなのに、どこか温かい雰囲気のステアリングを握る。握り心地がよく、わけもなく手を動かしてしまう。

かっちりと硬質なシフトフィールを堪能しつつ1速に挿れてクラッチペダルを離すと、1.4リッターのガソリンエンジンがぴょんと軽い車体を前に引っ張る。

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アウディが資料でうたう895kgという軽さは伊達じゃなく、「軽さって正義だなあ」としみじみ思う。そしてなんだこのボディの剛性感は。

まるでクーペボディのスポーツカーに乗っているかのごときシッカリ感。結果的に、想像を遥かに超える軽快な走りになる。この時点で、いいなあ、なのだ。

しっかりしたボディのおかげで乗り心地もいい。芯のある動きに、やわらかい当たり。長距離乗っても疲れ知らずだ。ステアリングの重みも適切で、反応もいい。

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あれ、名車やん…。

たしかに売れない要素は山ほどあるけれど、いちど乗ってみると、日本に正規導入されなかったことをとても残念に思う。

いっぽう、だからこそ、日本に現存するA2はこれほど美しく維持され、深く尊敬されるのだろうとも思う。もう二度と同じような車は出てこない。われわれには伝説を引き継ぐ使命があるのだ。

そしてもうひとつ。アウディさん、A1もA3もあるのに、A2はずっとあいていますよ…。期待を込めて。

文:上野太朗(Taro Ueno)

SPEC

アウディA2

年式
2003
全長
3826mm
全幅
1673mm
全高
1553mm
ホイールベース
2405mm
車重
895kg
パワートレイン
1.4リッター直列4気筒
トランスミッション
5速MT
エンジン最高出力
76ps/5000rpm
エンジン最大トルク
126Nm/3800rpm
タイヤ(前)
175/60R15
タイヤ(後)
175/60R15
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価格
店舗
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