シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

街中ですれ違うことの少ないクルマというのは意外に多い。すれ違いや、ほんの隙間から見えたその刹那、「なんだアレ?」と思わせる時点でもうデザイナーの勝利なのである。

街中ですれ違うことの少ないクルマというのは意外に多い。すれ違いや、ほんの隙間から見えたその刹那、「なんだアレ?」と思わせる時点でもうデザイナーの勝利なのである。

スタイルの虜になった

シトロエンC6に対する個人的な思いはとても深い。

20世紀の終わりに披露されたコンセプトカーに始まり実際に所有し、それから四半世紀経った今なお心惹かれている。

そんなモデルは、しかも4ドアで、ほとんどない。

シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

過去に80台以上のクルマを買ってきたけれど、その中で4ドアといえば片手で数えるほど。

ただでさえマルチドアモデルへの所有欲の薄い私にとって、C6ほど思い入れのある4ドアモデルは他にアルファ・ロメオ166くらいしか見当たらない。

シトロエンは、そもそも嫌いじゃなかった。仕事ではエグザンティアやXMに好んで乗っていたし、DSやSM、BXのスタイルも大好物だった。けれどもXM以外は自分で買うには至らず、いわゆるシトロエンマニアとも程遠かった。

シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

リナージュから6年。いよいよ市販モデルのC6が登場するや、いくばくか常識的になったとはいえ依然前衛的だったスタイルの虜になった。

運よく、国際試乗会の案内もあってパリでいち早く試すことができたのだが、パリからシャンパーニュで有名なランスへと走っている最中に買うと決めていた。

スタイリングから受けるイメージ通りの走り、とでも言おうか。日本向けの2.9リッターV6エンジンは、ディーゼルに比べて確かにダッシュ力が物足りなかったけれど、そこがまた乗り味にマッチしていたというか。この個性溢れる優美なスタイルに驚くような加速はむしろ必要なかったのだ。

静々と滑るように走ってくれさえすればいい。凪の海をゆく帆船のように。たぷり、たぷり。

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ゆるゆる、たらたらと

事情で泣く泣く手放したC6。以来、カーセンサーなどで見かけるたび、やっぱりいいなと思い続けている。

唯一無比。歴史的にシトロエンにはそういうモデルが多いけれど、C6もデビューしたのがすでに21世紀であったことを考えると、立派にその列に並んでいると思う。

久しぶりにC6を駆った。今見ても新鮮。過去に好きで持っていたクルマだというのに、懐かしいと思うことさえない。今なお現役として十分に通用するユニークなスタイルと室内パッケージ。つくづくシトロエンは名車造りの上手いブランドだったな、と感心する。

シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

ギザギザのシフトレバーを操作して走り出した。そうそう、これこれ、ゆるゆる、たらたら。

ディーゼルのマニュアルが良いだなんて好事家は言いたがるし、欧州車とそのパワートレインはテッパンであることも認めるけれど、C6に限っていうとガソリン+オートマがいい。

何度もいうけれど、スタイルの雰囲気と見合った走り方をしてくれる。

シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

それでも活発な走りを望むという向きには、オートマティックを2速あたりに固定してカントリーロードを走ってみてもらいたい。

適切なトルクが比較的ワイドなレンジで供出され、意外にも力強く駆けていく。

実をいうと、ハンドリングもかなりイケているのだ。薄く長いノーズがドライバーの思い通りに向きを変える。

もちろん、厳しいベントの続くワインディングロードには向かない。イメージとしては畑や丘の間を抜けていく道。そう、やっぱりこのクルマはフランス車らしい。生粋だ。

シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

ふたたび気持ちに火が

何年かぶりにC6を触っていて、ふたたび欲しい気持ちに火がついたようだ。色々と夢想が始まる。最も楽しい時間でもある。

色は何がいいだろうか。昔はチョコレートの外装にクリームのラウンジインテリアだった。今でもそれに勝るコンフィグはないと思っているけれど、グレーやグリーン、ブルーもよく似合う。緑好きとしてはグリーンを探すのも一興か。いや、シャンパンゴールドも忘れてはいけない。

シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

どうしてもスタイリングが先にたつモデルだから、ボディカラーの選択が重要になってくるのだけれど、実はインテリアの雰囲気もなかなかのもの。

少なくとも最新モデルが失ったエレガンスに満ちている。

残念なことに中古車で買った場合には、どんなに距離が少なくてもインテリアには経年劣化が見受けられる。特にレザーやプラスチックのパーツは傷みやすい。インテリアに一箇所でも気になる点があると、ドライブするたびに目がいって精神的にもよろしくない。

シトロエンC6エクスクルーシブ(FF/6AT)異国情緒に包まれながら何処までも

そこで妙案を思いつく。グリーンかゴールドの外装で程度の良い個体を探してきて、インテリアだけ丸っとレストアするというのはどうだろう?

ドアを開けた瞬間に真新しいレザーの香りが匂い立つような豪華な仕立てに挑戦してみる、とか...

エクステリアはフルノーマルで、経年変化も美化と捉える。けれどもインテリアは劣化なので、美しく整え直す。C6にフルレザーパッケージのインテリアを奢るなんて、考えただけでもワクワクする。

文:西川淳(Jun Nishikawa)

SPEC

シトロエンC6エクスクルーシブ

年式
2010年式
全長
4910mm
全幅
1860mm
全高
1465mm
ホイールベース
2900mm
車重
1870kg
パワートレイン
2.9リッターV型6気筒
トランスミッション
6速AT
エンジン最高出力
215ps/6000rpm
エンジン最大トルク
290Nm/3750rpm
タイヤ(前)
245/45R18
タイヤ(後)
245/45R18
  • 西川淳 Nishikawa Jun

    マッチボックスを握りしめた4歳の時にボクの人生は決まったようなものだ。以来、ミニカー、プラモ、ラジコン、スーパーカーブームを経て実車へと至った。とはいえ「車いのち」じゃない。車好きならボクより凄い人がいっぱいいらっしゃる。ボクはそんな車好きが好きなのだ。だから特定のモデルについて書くときには、新車だろうが中古車だろうが、車好きの目線をできるだけ大事にしたい。

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