同社初の「FF」に対し、とあるBMWディーラーのサービスフロントが言った。「FFとかそんな事何も考えんどきゃいいんですよ」。乗って初めて彼の発言の意図を知った。
BMWのコンパクトMPV
BMW 2シリーズ・アクティブツアラーは、BMWのコンパクトMPVで、これが2代目。
初代は2014年に登場した。BMWブランドとしては初のFFベースのプラットフォームだったが「駆けぬける歓び」は健在だったことを今でも覚えている。
2015-2016のインポートカー・オブ・ザ・イヤーも受賞した。
勝因は、広々とした室内空間と運転の楽しさ、そしてBMWブランドであることが所有欲を満たしてくれるからだろう。
兄貴分(3列シート版)のグランツアラーは初代限りでフェードアウトしたけれど、アクティブツアラー(2列シート)は生き残った。
この世代にもドライブする楽しみが残されているといいのだけれど…。
モダンなBMWのデザイン
誰もが気づく大きな変化は、巨大化したキドニーグリルだろう。その脇には流れるようなデザインのアダプティブLEDヘッドライトがつく。
リアはボディ下部に向かってワイドに広がったデザインで、排気口はなくなった。
ボディサイドはクリーンなイメージで、ドアノブは、ドアパネルと一体化したフラッシュ・ハンドルに置き換わっている。
インテリアもモダンなBMWのデザインに一気に変わった。
アームレスト周辺は浮遊したデザインで。強いて指摘するならスタートボタンが周辺の素材と同化して見つけづらかった。炎天下の室内で軽いパニックにおちいりかけた。
メーターパネルとコントロールディスプレイを一体化させた大きな画面(カーブド・ディスプレイとBMWは呼ぶ)は、かなりの存在感を放っている。映りも美しく、配列もよく練られている。コンパクトBMWでは初採用だという。
センターコンソールではQi充電もできた。撮影時、スマホのバッテリーが切れかけた編集部メンバーの充電も速かった。
注目の後部座席もこのクラスとしては申し分ない広さである。
40:20:40の分割可倒式リアシートは便利だ。このシートは前後に130mmも動く。このままシートバックを直角にすれば90リッターもの容量を稼げるとBMWはいう。優秀だ。
BMWらしさを見事に表現
走り出してまず気づくのはパワートレインの素晴らしさだ。
1.5リッター直列3気筒ツインパワーターボ・ガソリン(156ps/5000rpm、230Nm/1500〜4600rpm)と、2リッター直列4気筒ツインパワーターボ・ディーゼル(150ps/4000rpm、360Nm/1500〜2500rpm)の2種類があるうちの後者。
低回転からもりもりとトルクが湧き上がるディーゼルらしさは当たり前として、意外なほど回転数が高まっても息苦しくなる気配はない。
変速もなめらかでギア選びに卒がない。またディーゼル特有のサウンドを室内にほとんど入れてこない。これはもうお家芸といってもいいかもしれない。
205/60R17のタイヤがもたらす乗り心地も不快なところがない。
操舵に対する反応もBMWらしいもので、アンダーが強い「FF感」は、かなり飛ばしたうえで唐突にハンドルを切ってみない限りはわからない。
つまり、駆動方式に頼らずBMWらしさを見事に表現したといえる。
ブレーキのタッチや制動力も申し分なく、その際の車体の沈み込みや浮き上がりに、ルーズなところがない。大げさではなく「ホットハッチ的」と表現しても異論はないだろう。そのうえ上質だ。
ドライビング・アシストも充実している。さらにはパーキング・アシストまでつく。
日常の送り迎えや買い物だけでなく、ちょっとしたワインディングまで楽しめるのは意外だった。安心かつ上質で楽しい時間を過ごすことができる。
あともうふたつ。
SUVだらけのこの時代に「ほかと被りづらい」という主張=メリットをひっそりと持ち合わせている。そしてMPVという「抜け感」がある。2シリーズ・アクティブツアラーならではの強みである。
文:上野太朗(Taro Ueno)
SPEC
BMW 218d アクティブツアラー Mスポーツ
- 年式
- 2022年式
- 全長
- 4385mm
- 全幅
- 1825mm
- 全高
- 1565mm
- ホイールベース
- 2670mm
- 車重
- 1600kg
- パワートレイン
- 2リッター直4ディーゼル+ターボ
- トランスミッション
- 7速AT
- エンジン最高出力
- 150ps/4000rpm
- エンジン最大トルク
- 360Nm/1500~2500rpm
- タイヤ(前)
- 205/60R17
- タイヤ(後)
- 205/60R17