フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL(FF/5MT)これぞツウなヤングタイマー道

第一印象では「ポロ」。サイドに回ると、あれっドアが少ない!例えて言うと推しのアーティストが無名から有名になっていく過程のようなジレンマで、この記事を公開しよう。

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ロングセラーなポロ

フォルクスワーゲン・ポロ。

ゴルフの弟分として販売されているこのモデル。実は2024年時点で6代目を数えるロングセラーだ。3代目より前は本格的に日本に入ってきていないため、6代も存在することを不思議に思っても仕方あるまい。

ポロの意味は、馬術競技の「ポロ」から来ているという。また13世紀から14世紀のイタリア人旅行家で、「東方見聞録」を記したマルコ・ポーロにもちなむのだそうだ。

フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL(FF/5MT)これぞツウなヤングタイマー道

初代のデビューは1975年3月。ビートルの後継車種としての役割があり、アウディ50をベースとした(エンブレム違い)。セダンも存在し、こちらはダービィを名乗った。

この記事の主役である2代目は1981年にデビュー。3種類のボディ形状が存在した。

「ハッチバック」と呼ばれるモデルは垂直テールゲートを組み合わせ、1000リッターの荷室容量を稼いだ。テスト車と同じオーソドックスなハッチバックは「クーペ」と呼ばれた。またセダン型のモデルは日本では「ポロ・クラシック」と命名され限定販売となった。

フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL(FF/5MT)これぞツウなヤングタイマー道

3種のボディ展開は維持されつつ、1990年にマイナーチェンジ。初代ゴルフとほとんど見分けのつかなかったフロントまわりは角形2灯に変更された。

販売を請け負ったのはヤナセ。グレードはポロ・クーペCLのみで、1.3リッター直列4気筒ガソリンエンジンを搭載した。

人気を博したのはイギリスだった。プジョー205やフィアット・ウーノ、日産マイクラなどライバルと戦い、信頼性とビルドクオリティの高さで有利にたった。

フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL(FF/5MT)これぞツウなヤングタイマー道

それから先述の通り、4〜6代目へと世代交代してきた。モデルチェンジの度にボディサイズを拡大してきたゴルフに対し、ポロのサイズは5代目までは2代目ゴルフ程度を維持。6代目はMQBプラットフォームを採用し、全幅が1750mmの3ナンバーサイズに拡大された。

筆者が2代目の実車を目にするのは今回が初めて。一般道を中心に、内外装と走りをじっくり見つめた。

フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL(FF/5MT)これぞツウなヤングタイマー道

定番車種もいいが...

古いフォルクスワーゲン・ポロといえど、どうしても3代目以降のイメージが強く、実際にテスト車を前にしても、最初はピンと来なかった。見ようによっては2代目ゴルフにそっくりでもあり、どうにも不思議な気持ちだった。

サイドに回ると、様子が変わってくる。Bピラーを起点に、まるで左右対称にしたかのようなサイドガラスが斬新だ。2ドアゆえの余白、クーペという表現がしっくりくるCピラーの倒れ方など、ゴルフとはまるで異なるディテールに気づく。

縦長のテールライトやオフセットしたフォルクスワーゲンの旧ロゴ。左下からニョキッと顔をだす細いマフラーなど、この時代ならではの「萌えポイント」にもキュンと来る。リアバンパーの高さがまたクルマを前傾姿勢にみせ、全体を通じてスポーティな印象にさせている。

フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL(FF/5MT)これぞツウなヤングタイマー道

室内もシンプル極まりない。しかし注意深くみると、ディテールのデザインはかなり凝っている。布の内張りは令和の時代においても可愛らしく、洗練されてもいる。静かな遊び心が隅々までいきわたっているように見える。それも抑制されたかたちで。

なめらかな布地のシートはやわらかいうえにサポート性も高い。ストロークの大きなシフトノブを1速に入れて走り出した。

1.3リッター直列4気筒ガソリンエンジンは、ガスペダルを床まで踏みこんでも大したスピードになることはないが、シャンシャンと回り、活発なサウンドが車内の人間を自然と笑顔にしてくれる。ハンドルは軽いがFFの車体の向きを正確に変えてくれる。

フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL(FF/5MT)これぞツウなヤングタイマー道

視界の良さも特筆もので、デザインのレベルが高いながらも、ひとつも実用性を損ねていない。この時代のドイツ車の良いところだ。

テスト車においてはずらりと整備記録簿が残っており、強いこだわりをもって、しかもオリジナルコンディションを維持し続けた前オーナーの信念にも尊敬の念を抱かずにはいられない。

若年層を中心に、ヤングタイマーが流行っているようだ。中でもフォルクスワーゲン・ゴルフ2やボルボ240などが人気だという。定番車種もいいが、カブらない=個性という考えをもてば、より一層車えらびが楽しくなるだろう。ポロ、いいぞ。

乗れば乗るほど、2代目ポロが流行ってほしいし、自分だけのとっておきにしておきたい、という気もする。車両重量780kg、全高1350mm、全幅1570mm。小さな車体に詰まったロマンを全身で感じたのだった。

SPEC

フォルクスワーゲン・ポロ・クーペCL

年式
1989年式
全長
3655mm
全幅
1590mm
全高
1350mm
ホイールベース
2335mm
車重
780kg
パワートレイン
1.3リッター直列4気筒
トランスミッション
5速MT
エンジン最高出力
55ps/5200rpm
エンジン最大トルク
96.11Nm/3000rpm
サスペンション(前)
マクファーソンストラット
サスペンション(後)
トーションビーム
タイヤ(前)
165/65R13
タイヤ(後)
165/65R13
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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