キュルキュルキュル…バッフォーン!とはならないディーゼルのマセ。閑静な住宅街にお住まいで、音量故なかなかマセラティを選べない。そんな悩める貴方への救世主である。
見当がつかなかったのだ
朝からいつもと異なるワクワクであったのは、これからドライブするマセラティがディーゼルエンジンを載せているからである。
マセラティにディーゼル?快音響かせる流麗な姿とマセラティのイメージが強く結びついているから、それがいったいどんな走りを披露してくれるのか、見当がつかなかったのだ。
搭載するV6ディーゼルについて調べていくと、どこかから引っぱってきて載せただけのパワートレインでないことがわかる。
フェラーリF1エンジンの開発経験をもつ監督の指揮下で、マセラティと伊VMモトーリが共同で専用設計したという。
最大システム圧が2000barのコモンレール式直噴エンジンで、最高出力は275ps、最大トルクは600Nm(オーバーブースト時)。0-100km/h加速タイムは6.9秒。最高速度は230km/hに達する。
でありながら、CO2排出量が189g/km。ガソリンエンジンモデルから約25%減だという。燃料消費量は13.9km/Lを標榜する。
気になるエンジン重量はガソリンエンジン比で約150kg増。ガソリンエンジンモデルの前後重量配分は50:50であるのに対し、ディーゼルは52:48と大きくは変わらない。
ここまで資料を整理すると、パワートレイン自体は理想形とも言えそうであるけれど、乗った印象はどうなのだろう?
これまでV6とV8を体験している私は、ついにディーゼルモデルのハンドルを握ってみることにした。
「余裕ある大人」の車
スタートボタンを人差し指で押すと、トトッと一瞬の振動が伝わったのちにエンジンが掛かった。
室内にいるかぎり、ディーゼルらしい振動は極めて最小限に抑えられていると感じる。気になって車を降りてエンジンフードのあたりに回ってみると、少しだけカラカラと音が聞こえるにとどまる。
車体後方に回ると、4本出しのマフラーからヴォーっと太めの音が聞こえる。V6ガソリンエンジンに比べると音程は低い。アイドリング状態では、車内外いずれもディーゼルらしさを感じづらい仕上がりだと言っていい。
アクセルを踏んで出発すると、たったの2000rpmから最大トルクに到達するおかげで(2600rpmまで続く)、少しの踏力でも、けっこうなスピードに達する。ラクな車だなあと感じる。変速もなめらかだ。
ノーズの重さはどうだろう。たしかにV6ガソリンモデルに比べると、ちょっとだけ重い。けれどステアリングがSUVではあり得ないほどクイックだ。だから、あるいは耳を塞いで、パワートレインも隠してドライブし直せば、やはりこの車がディーゼルだと気づきづらいかもしれない。
モードをスポーツに切り替えると、より一層アクセルのツキがよくなる。排気音も大きくなり迫力を増す。
サスペンションはSUVのなかでもかなり引き締まっている。タイヤによってはきついかな?と思う硬さだ。テスト車は幸運にも(?)ミシュランのクロスクライメート2だった。これが結果的にいい仕事をしている。
総合的にレヴァンテ・ディーゼルは、乗り心地とパワートレインによって「余裕ある大人」の車に仕上がっている。
綺麗に響くマセラティ・サウンドを恋しく思わないといえば嘘になるけれど、ディーゼルはディーゼルの存在価値を体感した。新車販売が終了しているから(MHEVに置き換わった)、よけいに魅力的だ。
SPEC
マセラティ・レヴァンテ・ディーゼル・グランスポーツ
- 年式
- 2020年
- 全長
- 5000mm
- 全幅
- 1985mm
- 全高
- 1680mm
- ホイールベース
- 3005mm
- 車重
- 2290kg
- パワートレイン
- 3リッターV型6気筒ディーゼルターボ
- トランスミッション
- 8速AT
- エンジン最高出力
- 275ps/4000rpm
- エンジン最大トルク
- 600Nm/2600rpm
- サスペンション(前)
- ダブルウイッシュボーン
- サスペンション(後)
- マルチリンク式
- タイヤ(前)
- 265/45R20
- タイヤ(後)
- 265/45R20