アバルト595 1.4(FF/5MT)必ず近くにいた、年中半袖半ズボンの小学生

見出しは何もバカにしているわけではない。アバルト595はギアチェンジ毎に、小柄なボディをまるで何かに弾かれたように小気味良く加速させ、その存在は元気に溢れている。

見出しは何もバカにしているわけではない。アバルト595はギアチェンジ毎に、小柄なボディをまるで何かに弾かれたように小気味良く加速させ、その存在は元気に溢れている。

「595」の系譜は

アバルト595の前身、アバルト500が初公開されたのは、2008年のジュネーブ・モーターショーのことだった。前輪駆動となった3代目フィアット500をベースに、アバルトがチューニングを施したモデルだ。

アバルトとは1949年に設立されたチューナーであり、今はステランティスグループの子会社となっている。

デビューの2年後にはアバルト500C(オープントップのフィアット500Cがベース)がデビュー。同年にアバルト695/695Cが限定で加わり、のちにカタログモデルになった。

2013年にはアバルト595/595Cが登場。2017年のマイナーチェンジ時に、全てのカタログモデルが595に統一された。

アバルト595 1.4(FF/5MT)必ず近くにいた、年中半袖半ズボンの小学生

その後も695の数字は事あるごとに限定車として復活。2024年現在はカタログモデルとなっている。595においても、内外装やパワートレインに手を入れた限定モデルが数え切れないほど多く市場へ投入された。

595という数字は、1963年に登場した伝説の名車、フィアット・アバルト595から来ている。496ccであったフィアット500の排気量を、593.707ccまで拡大。5割増しの馬力は当時、最高速度を120km/hまで引き上げた。

現代版は595ccではもちろんないけれど、ベース車から大きく進化している。次項で詳しく見ていこう。

アバルト595 1.4(FF/5MT)必ず近くにいた、年中半袖半ズボンの小学生

好戦的かつ刺激的

595ccではなく、1400ccのターボユニットは、ベースモデルで最高出力145psを発揮する。マイナーチェンジ以前は135ps(MT)と140ps(AT)であった。なお同時に発売されていた「ツーリズモ」は165ps、「コンペティツィオーネ」は180psであった。

2024年現在のラインナップでは、同じエンジンでありながら、F595が165ps、695ツーリズモ/コンペティツィオーネが180psまで増強されている。またアバルト500eなる電気モデルも加わり、そちらは155ps/235Nmを発揮する。

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話をテスト車=595のベースモデルに戻そう。マイナーチェンジの際、内外装にも変更が与えられた。まずバンパーの見た目が変わり、車体下部に向けてワイド感が強調された。フロントのスモールライトはLEDになる。テールライトは赤いレンズが輪で囲むようになり、その内側がボディ同色になった。

細かいところだがインテリアはグローブボックスやドリンクホルダーが新設された。

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見た目がモダンかつアグレッシブになり、利便性が高まったというわけである。最初のデビューから既に15年以上現役であるから、細かなアップデートが必要というわけだ。

車内外のいたるところにアバルト=サソリのエンブレムが配され、さほど車に詳しくなくとも、この車がどことなく好戦的で、そのうえ刺激的だということは想像できるだろう。

そう感じさせる要因のひとつに「音」もある。

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キーをひねる動作

キーをひねると1.4リッターエンジンが目覚める。令和の時代に珍しくなりつつある作法だが、やはりキーをひねるという動作は眠りから車を「起こす」作法としてリアルだ。

ブルブルブル。単気筒エンジンを思い起こさせる、粒の大きな、低く乾いたサウンドに耳を傾けると、どこか懐かしい気持ちとともに、自然と心が奮い立ってくる。

握りが太いステアリングを右手で握りながら、ストロークが大きく重みのあるクラッチペダルをぎゅっと真下方向に踏みこんで丸いシフトノブを1速に入れる。

クラッチをじわりと離していくと、排気音が大きさを増し、ゲロゲロゲロとアバルト595は鳴き始める。

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回転が高まる最中、明確にターボが効き始めるタイミングがわかる。それぞれのギアで可能な限りエンジンを回し、短い時間でシフトチェンジし、優しくクラッチを繋ぐ。

当たり前だけれど大事な作法を、しかしうまくやらなければ途端にアバルト595はギクシャクする。持ち合わせないと思っていたマゾヒスティックな心が開放され、同時にエンジンを鞭打ちたくなるサディスティックな感情も目覚める。

アバルト595 1.4(FF/5MT)必ず近くにいた、年中半袖半ズボンの小学生

ひとつだけ引っかかるのは、身長172cmかつ手足が短めの日本人体系の典型みたいな筆者にとって、シートポジションとステアリングの角度、ペダルまでの距離がチグハグである点。複数名、これを指摘する声が挙がっていることから、そう感じるのは私だけではないようだ。これについてはサードパーティ製のアジャスターが存在するのが救いだが。

アバルト595は、小さなボディが弾けそうなほど刺激に満ちている。短いホイールベースからなるピョコピョコとしたピッチング、締め上げられたサスが揺さぶるボディさえも、「ちょっと昔のスポ根」キャラに直結する。

こんな車がどんどん減っている。あと10年、いや5年もすれば、忘れられない銘車の仲間入りするに違いない。

SPEC

アバルト595 1.4

年式
2018年式
全長
3660mm
全幅
1625mm
全高
1505mm
ホイールベース
2300mm
車重
1110kg
パワートレイン
1.4リッター直4ターボ
トランスミッション
5速MT
エンジン最高出力
145ps/5500rpm
エンジン最大トルク
210Nm/3000rpm
タイヤ(前)
195/45R16
タイヤ(後)
195/45R16
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

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