BMW X7 xDrive35dデザインピュアエクセレンス(4WD/8AT)「ビーエム」という世間のストライクゾーン

肥大化し続ける「キドニーグリル」に関するクルマ好きの論争は、市井の人々にとって実際にそこまで重要ではないのかもしれない。

肥大化し続ける「キドニーグリル」に関するクルマ好きの論争は、市井の人々にとって実際にそこまで重要ではないのかもしれない。

BMWの旗艦SUV

2019年6月、BMWはX7を発表した。全長5165mm、全幅2000mm、全高1835mm、ホイールベース3105mm。堂々たる佇まいのこの車は、言うまでもなくBMWの旗艦SUVだ。

「2列目/3列目の乗員が長時間快適に過ごせるラグジュアリー感溢れる空間となっている」とBMWはコメント。2列目が2席の独立したコンフォート・シートとなる6人乗りモデルも市場には存在している。

心臓部は2種類が存在し、直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載する「xDrive35d」は265ps/4000rpm、620Nm/2000〜2500rpmを発揮する。V型8気筒ガソリンエンジンを搭載する「M50i」は530ps/5500〜6000rpm、750Nm/1800〜4600rpmを発揮する。

BMW X7 xDrive35dデザインピュアエクセレンス(4WD/8AT)「ビーエム」という世間のストライクゾーン

2022年11月にはマイナーチェンジが実施された。先に発表された7シリーズと同じく、上下2分割のツイン・サーキュラー&ダブル・ライトに加え、ライトで縁取りされたキドニーグリルがわかりやすい識別点だ。

ディーゼルモデルは「40d」に成長。352psと720Nmへ。V8は「M60i」となり530psと750Nmに至り、加えて最大300万円値上がりした。

テスト車は前期型の「xDrive35d」。「デザイン・ピュア・エクセレンス」というモデルで、内外装にこだわったグレードだ。

BMW X7 xDrive35dデザインピュアエクセレンス(4WD/8AT)「ビーエム」という世間のストライクゾーン

しかし、いかつい

しかし、いかついなあ…。これが第一印象である。

特に真正面から受ける印象は「顔」。もう「顔」が走っている、みたいな存在感である。そう感じさせる理由は言うまでもなく大きなキドニーグリルである。SNSを開けば、顔面をグリルが完全に覆ってしまうミーム画像がバズっているけれど、本当にそうなっちゃうんじゃないかとビビってしまう…。

室内はなるほど豪華だ。スタンダード・モデルを除いてBMWインディビジュアルのメリノレザーが大きな面積で張り込まれている。厳選した牛革は適度な湿り気。やわらかいのに厚みは確かで、ゆるくはない。心地よい。BMWらしくドライビングポジションの調整幅が広いことにも好感がもてる。

BMW X7 xDrive35dデザインピュアエクセレンス(4WD/8AT)「ビーエム」という世間のストライクゾーン

クリスタルのセレクターレバーやスタート/ストップ・ボタンも美しい。BMWの中でも特別な車に乗っていると十分に浸れる、重要な演出になっていると感じた。

2列目シートも、前列に近しい座り心地だ。足元も広い。興味本位で座ってみた3列目も、172cmの筆者にとって、最低限の足元スペースが備わり、長時間でなければ移動は差し支えないだろうという結論に達した。

1〜3列目まで、全てのシートにおいて調整ボタンの操作が直感的ではない部分もあったが、それ以外は◯。これ以上を求めるならば、レンジローバーやベンテイガへの乗り換えをおすすめするレベルにある。(メルセデスに対する)BMWの意地を感じたのだった。

BMW X7 xDrive35dデザインピュアエクセレンス(4WD/8AT)「ビーエム」という世間のストライクゾーン

もう一つの気づき

走りはじめてニヤリとしてしまうのは、やはりBMWがつくった車であると実感できるからだ。

全長が5mをゆうに超え、2.5tもの重さであるにもかかわらず、たしかな「BMW味」を感じられるのは、ハンドリングの機敏さ(に感じられる仕立て)ゆえだ。切り始めからシュッとノーズは向きを変えようとし、大きい車体も小気味よくついてくる。数値から想像するようなモサモサ感が極限まで抑え込まれている。気持ちがいい。

アダプティブエアサスペンションも21インチホイールのバタつきを最大限抑え込んでいる。基本的に高速巡航向きだと感じるが、市街地で嫌な気持ちになることはほとんどない。コーナーでもロール回避を最適化するシステムがあるおかげで、この手の車にありがちな、ゆさゆさと遅れて到来する上屋の横方向の倒れ込みが少ないと感じた。技術は物理問題をも解決するのである。

BMW X7 xDrive35dデザインピュアエクセレンス(4WD/8AT)「ビーエム」という世間のストライクゾーン

恐れていたディーゼルエンジンのノイズもザラつきも感知することはほぼなかった。トルクの粘りが、全体のしっとりとした印象にも一役買っているようだ。

ハンズオフ機能付きの運転支援も、起動しやすさ、マナーともに嫌なところはない。

多少大味でもアメリカでウケればいい、という魂胆が透けて見えるハイエンドSUVは、じつは少なくない。けれどX7においては、きちんと作り込まれている。

もうひとつ気づいたことがある。あまり人からじろじろ見られない。わたしが思っているほど、市井の人々はこのキドニーグリルを気にしていないのかもしれない。

それよりもX7は、大衆ハッチバックからセダンを含む「BMW」という大きなくくりの中にきちんと嵌っていて、そしてBMWは世の中、あまた走っている。

たとえ顔面のキラキラメタルの面積がベンテイガと同じだったとしても「なんじゃこれ」な不気味さを感じさせない、「ラグジュアリー国民車」の一面を垣間見た。

SPEC

BMW X7 xDrive35dデザインピュアエクセレンス

年式
2020年式
全長
5165mm
全幅
2000mm
全高
1835mm
ホイールベース
3105mm
車重
2500kg
パワートレイン
3リッター直列6気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
265ps/4000rpm
エンジン最大トルク
620Nm/2000-2500rpm
タイヤ(前)
275/40R22
タイヤ(後)
315/35R22
  • 上野太朗 Taro Ueno

    幼少から車漬け。ミニカー、車ゲーム、車雑誌しか買ってもらえなかった男の末路は、やっぱり車。今、買って買って買ってます。エンジンとかサスとか機構も大事だけれど、納車までの眠れない夜とか、乗ってる自分をこう見られたいとか、買ったからには田舎に錦を飾りにいきたいとか、そんなのも含めて、車趣味だと思います。凝り固まった思想を捨てたら、窓越しの世界がもっと鮮やかになりました。

    著者の記事一覧へ

メーカー
価格
店舗
並べ替え