BMW 330Ci カブリオレ(FR/5AT) ”駆けぬける歓び”を覚えてますか

BMWがスローガンを「駆けぬける歓び」から「Efficient Dynamics」に変えて久しい。初耳の方には知ってもらい、忘れていた方には思い出してもらおう。

BMWがスローガンを「駆けぬける歓び」から「Efficient Dynamics」に変えて久しい。初耳の方には知ってもらい、忘れていた方には思い出してもらおう。

E46カブリオレだけのチーム

いっぷう変わったクラブがある。その名も”SHIROCAB”(シロカブ)。46カブでシロカブ。

さて。何が変わっているのかというと、BMW E46カブリオレのオーナーなら誰でも入れるわけじゃない、というところだ。むしろ既に持っていて会を知ったという人に入会資格はない。入りたければ一旦売ってから入ります宣言をして、改めてできれば違う個体を買って、審査にぶじ通れば入会できる、かもしれない。

要するにシロカブに入りたいから46カブリオレを買ったぞ、という情熱を見せなければ入会できないクラブなのだ。やや面倒くさいけど、なかなか面白そうでしょう?

BMW 330Ci カブリオレ(FR/5AT) ”駆けぬける歓び”を覚えてますか

それだけに会のメンツはすごい。最新スーパーカー界の猛者から日本を代表するコレクターまで、いろんなジャンルのクルマ好きが集まっている。その数、今や40人。彼らのクルマ話を聞いているだけで楽しい。そしてもちろんみんなE46カブリオレが大好きだ。

言ってみればクルマの酸いも甘いも知り尽くしたクルマ趣味のベテラン揃いである。実を言うと私も魅せられたクチで、会員の証であるナンバー46-29(入会すると4601から始まる連番が与えられ、それを希望ナンバーにする“名誉”が与えられる)をゲットしたのだが、クラブ活動もさることながら改めて乗ったE46の素晴らしさに魅了されている。

いったいなぜに25年も前(1999年、セダンは98年)に登場したBMW3シリーズのオープンモデルがクルマを知り尽くした面々を虜にするのだろうか。
改めて検証すべくレセンスが仕入れた極上の個体を駆って東京から京都まで走ってみることにした。

BMW 330Ci カブリオレ(FR/5AT) ”駆けぬける歓び”を覚えてますか

非M前期の330Ciカブリオレ

330Ciカブリオレ。シロカブにもほとんどいないレアな前期型の非Mスポーツグレードだ。E46ではMスポーツが人気で、オレンジマーカーのついた標準モデルなど2ドア系ではほとんど見向きもされなかった。

しかも垂れ目の前期より吊り目の後期の方が流通量は多い。後期型は02年から06年までと前期型(00〜02年)より生産期間が倍近く長かったためだろう。

駐車場の片隅にたたずむその姿は明らかに小さい。長さこそ現代の2シリーズと同じくらいだけれど、薄くて低い。顔も小ぶりで威圧感がない。そのうえ前期は垂れ目なのだから、まして可愛い。

BMW 330Ci カブリオレ(FR/5AT) ”駆けぬける歓び”を覚えてますか

金色にタン内装が懐かしい。確かプレス試乗会にもこのコーデがいた。長めのドアを開けて潜り込む。ストンと腰が落ちる。着座位置はスーパーカーのように低い。ダッシュボードも低く、座る位置は低いのにやや見下ろす印象さえある。中央に大きなモニターなどない。現代のクルマに比べれば殺風景だが、そのシンプルさがまたたまらない。

オドメーター、わずかに3万7000km。年間1400kmしか動いてなかった計算だ。コンバーチブルとはいえ実用的な3シリーズでこの数字は奇跡だろう。

3リットルになったばかりのM54エンジンが野太く、けれども精緻に目覚めた。躊躇うことなくオープンにする。この時代のBMWクーペはまだ2ドアセダン(=3シリーズの原点だ)の風味が残っていて、だからソフトトップをたたむとスッキリと潔いオープンスタイルになる。そこが最新モデルにはない美しさなのだ。

それはともかく、愛おしむようにゆっくりと丁寧にDレンジに入れて、いざ出発。

BMW 330Ci カブリオレ(FR/5AT) ”駆けぬける歓び”を覚えてますか

難なく450kmを走り切った

BMWというとスポーティなイメージが強い。確かにそうだけれど、スポーツカーとはまた別の動きをする。パワーアシスト付きでもハンドルは重めだし、アクセルの反応も鈍い。街中ではかったるくモヤモヤ走る。この時代のBMWオートマ車は大体そんなもので、キビキビと走らせたければ3ペダルを選ぶほかなかった。MモデルがSMGを積極的に導入していたのも頷けるであろう。

気持ち良くなるのはエンジン回転が2000rpmを超え、“唸り”が聞こえ始めてからだ。相変わらず力はないけれど、バリトンの発声練習のような唸り声が耳に心地よい。世にいう“シルキー6”とはまた違う。オイルにまみれた機械がネチネチ精密に働いてくれているという感覚で、それはすでに低回転域からよく現れる。

BMW 330Ci カブリオレ(FR/5AT) ”駆けぬける歓び”を覚えてますか

乗り心地も低速域ではボディの緩さが目立つ。けれどもノッてくると全てが同じ振動数で踊り出すから平気だ。高速道路に入れば聞こえるか聞こえないかの唸りが心地よく空気を揺らす。オープンならそれを緩い車体が増幅してドライバーを包み込んでくれる。

高い速度域でようやく前アシがよく動くようになった。緩いボディがそこでもまた妙な一体感を生む。4000rpmを超えたとき、束の間、直6サウンドが冴え渡った。

難なく450kmを走り切った。クルージングのスウィートスポットは流石に低いので少し時間がかかったけれど、精神的には早く着けた。運転支援などない。それでもほとんど疲れを感じない。身体に少し振動が残ったか。これくらいなら熱い風呂に浸かってよく眠れば消し飛ぶ。

四半世紀のギャップをかえって楽しませてくれる。肩肘張らない3シリーズなのに、かっこよくて潔いオープン、3シリーズのカブリオレとして最後の自然吸気ストレート6。クルマ運転好きならハマっても仕方ないモデルだと改めて感じ入った。

文:西川淳(Jun Nishikawa)

SPEC

BMW 330Ci カブリオレ

年式
2000年式
全長
4490mm
全幅
1755mm
全高
1370mm
ホイールベース
2725mm
車重
1680kg
パワートレイン
3リッター直列6気筒
トランスミッション
5速AT
エンジン最高出力
231ps/5900rpm
エンジン最大トルク
30.6kg-m/3500rpm
タイヤ(前)
225/45R17
タイヤ(後)
225/45R17
  • 西川淳 Nishikawa Jun

    マッチボックスを握りしめた4歳の時にボクの人生は決まったようなものだ。以来、ミニカー、プラモ、ラジコン、スーパーカーブームを経て実車へと至った。とはいえ「車いのち」じゃない。車好きならボクより凄い人がいっぱいいらっしゃる。ボクはそんな車好きが好きなのだ。だから特定のモデルについて書くときには、新車だろうが中古車だろうが、車好きの目線をできるだけ大事にしたい。

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