F10世代になって初登場したDの「5」とは異なり、こちらはアルピナ内で脈々と続くBの「5」。レセンス編集部にもオーナーがいたというD5の目線も交えてB5を味わう。
今回DではなくBの方
これまで数々のアルピナモデルをテストしてきたレセンスだが、市況や需要ゆえ、ディーゼルモデルに偏る傾向があった。
そこで今回は、これまで「アルピナらしさ」を、ライドフィールの観点で最も体現したと評されたF10世代5シリーズの、ガソリンモデルにトライすることにした。
モデル名は「B5ビターボ」。「B」はベンジン(ドイツ語でガソリンを意味する)の頭文字だ。BMW 550iがベースとなる。
デビューは2010年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード。2011年のジュネーブ・モーターショーにてツーリングタイプ(ステーションワゴン)も加わった。
V8アルピナチューンド
B5ビターボが搭載するエンジンは、B7ビターボ(F01世代)が先行して搭載したもので、つまりは750iが搭載したものを基本とする。これは550iのエンジンが基本で…と書いて、いささか複雑になってしまったことに気づく。
まあとにかく、このV型8気筒ツインターボにアルピナの手が加わった。エンジンブロック、シリンダー、インターナルなどにわたる。ラジエター、オイルクーラー、トランスミッションのオイルクーラーなど冷却系、電動ウォーターポンプもアルピナならではのパーツである。結果、520ps/5500rpm、700Nm/3000〜4750rpmを生み出すに至った。
テスト車は2011年式だが、その後の2012年には548psと730Nmまで増強されている。
サスペンションは550iを基本にアルピナ独自のセッティングが施された。ドライブシャフトもまたアルピナ独自のパーツである。リアにはクロスバーが組み合わされる。フロントブレーキはF01型750iの中でも高速重視の仕向地用で、リアはF10世代の550iが出自。
20インチのアルピナ・クラシック・ホイールは前:255/35、後:285/30となる。
D5と比べてどうなのか
内外装ともにアルピナ社の文法通りだが、なかでもクリーム色のレザーシートが室内の印象をガラリと変えるものだなと感心する。
スタートボタンを押すと、3リッター直6ディーゼルの半分ほどの振動でV8ツインターボが目覚める。音質は低く、ディーゼルと似ているけれど、もう少し粒の細かいスムーズな印象だと私は感じた。何を隠そう、編集部のうち2名はこの世代のD5を所有していたから、そのへんのことには自信がある。
粒の細かさは、加速をしていっても変わらない。その上、トルクの湧き上がりかたがスムーズで、また高回転域までたおやかに回っていく様がガソリンユニットらしい。
D5に乗っていた時は、あまり高回転域まで回さずに、低い回転域をゆったりと使う(それでも十分すぎるほどのトルクであった)ある種の”インテリさ”に満足していたけれど、他方、ガソリンユニットらしい伸びに、うっとりとしてしまう。
またアルピナらしいしなやかな足さばきやハンドリングに、このガソリンユニットのキャラクターがピタリと合っている。
B5とD5、同時に試乗していたら、おそらく半年かかっても、いや1年かかっても、どちらを買うべきか結論は出なかっただろう。
両方知ってしまった今、あらたな事実も知ることになる。デビューから約10年、今なら両方同時にも味わいやすい価格帯だ。まったくもってマトモな心境ではないけれど…(笑)
SPEC
アルピナB5ビターボ
- 年式
- 2011年
- 全長
- 4910mm
- 全幅
- 1860mm
- 全高
- 1490mm
- ホイールベース
- 2970mm
- トレッド(前)
- 1600mm
- トレッド(後)
- 1600mm
- 車重
- 1920kg
- パワートレイン
- 4.4リッターV型8気筒ツインターボ
- トランスミッション
- 8速AT
- エンジン最高出力
- 520ps/5500rpm
- エンジン最大トルク
- 700Nm/3000-4750rpm
- サスペンション(前)
- ダブルウィッシュボーン
- サスペンション(後)
- インテグラルアーム
- タイヤ(前)
- 255/35 ZR20
- タイヤ(後)
- 285/30 ZR20