フィアット500は、スペックや安全装備では語り尽くせない車である。2気筒ツインエアターボによる味わい、デュアロジックの人間味。現代の名車と言ってよいだろう。
INDEX
売れ続けているフィアット500
フィアット500、という車が産声を上げたのは、1936年のこと。「トポリーノ(ハツカネズミ)」の愛称で親しまれ、1955年まで、商用車も含めて約60万台が生産された。
1957年には2代目がデビュー。フィアット500といえばこちらを思い浮かべる向きも多いだろうか。正しくはヌォーヴァ500。そう、ルパン三世がアニメで乗っていたあの車だ。
この世代のフィアット500についてはフィアット500ジャルディニエラ(FF/4MT)「遅い!これ下さい!」で触れているから、是非、ご一読頂けるとありがたいです。
ツインエア、トコトコトコ歩む
色んな車に乗ることの多い私でさえ今やエンジンをかける(あるいは電気をオンにする)際はボタンを探してしまうけれど、これはキーを撚るタイプだ。ギュッとひねると、ちょっと長めの間を置いてブルルンとエンジンが目覚める。
ブルルンというのは形容的なものではなく本当に、物理的に、手、足、お尻に振動が伝わるブルルンである。きっと近代パワートレインに飼いならされていると、おやおやと思うはずだ。
総排気量875cc。ボア:80.5mm×ストローク:86.0mm。直列2気筒ターボの存在が伝わる。
アクセルを踏み込むと、トコトコトコっと音を響かせながら、しかし想像以上に低い回転域からトルクがピックアップし始める。フィアット500にはもう1つ、1.2リッター自然吸気もあるけれど、馬力で16ps、トルクで43Nm勝る。
圧倒的な個性に華を添えるのが5速セミATだ。
名車予備軍から立派な名車へ
6年前にマイナーチェンジしたというのに、予防安全装備はESC(スタビリティコントロール)とABS、そしてEBD(前後左右のブレーキバランスを自動的に調整)しか備わらない。
レーダークルーズコントロールにレーンキーピングアシスト…ナニソレ? という潔さである。これだけ安全装備が叫ばれる世の中だから、触れておかないわけにはいかない。
しかしあるに越したことはない装備ではありながら、「ではあなたが車間をあけて、左右に注意しながら、スピードを出し過ぎなければ良いのではないの?」と言われれば、たしかに必須ではないと思えてくる。…思えてくる。
いや待てよ…それはフィアット500ご都合主義とはいえまいか。冷静な自分が突っ込む。
この攻防を繰り返しはじめるということは、既にこの「新しきアナログ車」にやられている証拠かもしれない。
SPEC
フィアット500ツインエア・ラウンジ
- 年式
- 2020年
- 全長
- 3570mm
- 全幅
- 1630mm
- 全高
- 1520mm
- ホイールベース
- 2300mm
- トレッド(前)
- 1420mm
- トレッド(後)
- 1410mm
- 車重
- 1040kg
- パワートレイン
- 0.9リッター直列2気筒ターボ
- トランスミッション
- 5速AT
- エンジン最高出力
- 85ps/5500rpm
- エンジン最大トルク
- 145Nm/1900rpm
- サスペンション(前)
- マクファーソンストラット
- サスペンション(後)
- トーションビーム
- タイヤ(前)
- 185/55R15
- タイヤ(後)
- 185/55R15