メルセデスAMG E53は、その名前の通り、43と63の間に位置する「絶妙」なモデルであることが試乗を経てわかった。確実に存在する需要を、メルセデス流に解決。
53、というポジション
メルセデスAMG 53シリーズの発表は、2018年のデトロイト・モーターショー。その年の9月に日本に導入された。
それまでは43シリーズと63シリーズがAMGの他モデル含めに存在した。数字の通り、43と63のギャップを埋めるべく投入されたのが53シリーズということになる。
3リッター直列6気筒ユニットはターボとスーパーチャージャーで武装され、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と48V電気システムが組み合わされる。
エンジンの最高出力は435ps/6100rpm、最大トルクは520Nm/1800〜5800rpm。ISGはエンジンとトランスミッションの間に配される。22psと250Nmを生み出す。
43シリーズは3リッターV型6気筒ツインターボで401ps。4リッターV型8気筒ツインターボの63Sは612psだ。
駆動方式は4WD。前後トルク配分は50:50〜0:100で可変。エアサスペンション「AMGライド・コントロール+」も標準で備わる。
全部のいいところ取り
乗り込んで嬉しい気持ちになるのが「AMGパフォーマンス・ステアリングホイール」だ。S63にも採用されるこのステアリング。操作系が使いやすいのはもちろん、タッチコントロール・ボタンやACCの動作スイッチも集約される。またスムーズで適度な太さのステアリング自体の握り心地もいい。ステアリングホイールの上部中央にセンターストライプがあしらわれており、ちょっぴりレーシーだ。
基本的にはノーマルのしつらえだが、そもそも質感が高く、程よく走りを連想させるディテールが散りばめられている。
いっぽうの走りは、思っていたより骨太だと感じる。いうなれば「43」より「63」よりだ。ISGのおかげで一瞬にして、かつスムーズにエンジンが立ち上がるので油断してしまうが、そこからのパワーはもりもりと湧き上がってくる。低いところはスーパーチャージャーがエンジンを盛りたて、さらにターボチャージャーが加勢する。これに乗って「遅い」と感じる人は、ふだんからよほど速いクルマに乗っているに違いない。
乗り心地は極低速域でコツコツと入力を伝えてくる。速度が高まるとカドは取れる。車体全体がフラットに屈伸するメルセデスらしい乗り味が53でも保たれているのに感心する。
エンジンサウンドは、下品な爆音ではなく、調律された程よい抜けの良さ。これは43に近いと感じる。つまり、パワー感は63、ライドは43と63の中間、サウンドは43。いいところをバランスさせている。屋根を開け放って乗れば、その音は直接耳に届く。
そのうえアクティブ・レーンチェンジ・アシスト(自動で車線変更)、緊急回避補助システム(危険察知でステアリングをアシスト)など運転支援システムが標準で備わる。また「レーダー・セーフティ・パッケージ」も最新。
43はちょっと物足りないけれど、63ほどの濃い味でなくとも…。こういった層がいることをメルセデスははっきりとわかっている。そこに絶妙なモデルを放り込み、しかも評価を得る。ドイツの、しかも資金を持ったブランドだからこそなせるワザだ。
SPEC
メルセデスAMG E53カブリオレ
- 年式
- 2020年
- 全長
- 4855mm
- 全幅
- 1860mm
- 全高
- 1430mm
- ホイールベース
- 2875mm
- トレッド(前)
- 1630mm
- トレッド(後)
- 1590mm
- 車重
- 2090kg
- パワートレイン
- 3リッター直列6気筒ターボ+スーパーチャージャー
- トランスミッション
- 9速AT
- エンジン最高出力
- 435ps/6100rpm
- エンジン最大トルク
- 520Nm/1800〜5800rpm
- サスペンション(前)
- 4リンク
- サスペンション(後)
- マルチリンク
- タイヤ(前)
- 245/35 R20
- タイヤ(後)
- 275/30 R20