ポルシェ・カイエンはそもそも、かなりスポーツに振ったSUVである。そこに「GTS」のセッティングや内外装が組み合わさることで走りと快適性に磨きがかかるのだ。
復活したV8エンジン
この記事の主役、3代目ポルシェ・カイエンGTS(E3K30型:2018年〜)の何よりのトピックは、先代の3.6リッターV6ツインターボエンジンから、4リッターV8ツインターボになった点だろう(V8が復活した)。
スポーツクロノパッケージを装備した新型カイエンGTSは、0-100km/h加速=4.5秒を達成。最高速度が270km/hに達する。20ps/20Nmの460ps/620Nmが、0.6秒短縮させたことになる。
一方で、NEDC複合サイクルの燃費は8.8〜8.9km/Lと公表されている。8速ティプトロニック(オートマティック)の最適化や、シリンダーの可変制御、ヒートマネージメント等による効果だという。
GTSならではの違い
カイエンGTSの標準仕様のスチールスプリングは20mmのローダウンとなる。また、ほかのグレードではオプションとなる可変ダンパーやトルクベクタリング機構などが標準装備だ。(テスト車はオプションの3チャンバー式アダプティブエアサスペンションを装備:車高が10mm下がっている)。
ホイールは21インチの「RSスパイダーデザインホイール」が標準セットされ、フロント390×38mm、リア358×28mmのブレーキシステムに組み合わさるキャリパーは赤く塗装される。
SUVであることが信じられないようなオプションがさらに用意される。PCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)や後輪操舵、アクティブ制御のロール抑制システム、PDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロールシステム)などだ。
このあたりの装備の豊富さからも、ポルシェのGTSモデルに対する意図が見えてくる。
GTSはズルいのだ!
GTSであること以前にテスト車はカイエン「クーペ」。最初はカイエンの外観の記憶が強いため見慣れなかったが、なだらかに下がっていくボディ後端やリアクォーターガラス下から膨らむリアフェンダーを見ると、カイエン・クーペは、911からのインスピレーションが強いことがわかる。
GTSには標準で「スポーツデザインパッケージ」が組み合わされる。これによりエンブレムをはじめとする各所がブラックアウトされる。またサテングロスブラックの21インチRSスパイダーデザインホイール、PDLS(ポルシェ・ダイナミック・ライト・システム)を搭載したLEDヘッドライトに、ダークカラーのティンテッド加工が施している。
内装は、アルカンターラがルーフライニング、シートのセンターパネル、センターコンソールアームレスト、ドアに貼られ、特別な仕立てであることがすぐにわかる。
白眉は快適性とダイナミクスのバランス。目線の高さこそSUVに乗っていると実感するが、その上下動はタイトに抑え込まれている。どのモードでもこれは同じだ。
モードをハードにしていくと、さながらホットハッチのような挙動となる。ぎゅっとアクセルを踏んでステアリングを切れば、車全体が遅れること無くくるりと回る。私は以前、これと全く同じ車で、低ミュー路のドリフトを試みたことがある。リアが滑り出してからも、信じられないほどコントローラブルだったことに驚いた。9割型は一般道や高速道のユーティリティとしての使われ方になるだろうが、それだけではもったいないと思う。
ポルシェは何のために運動神経バツグンのSUVを作ってしまったのか。やはりポルシェの名を冠するかぎり、妥協を絶対に許せなかったのだろう。
最後になるが、V8のサウンドもたまらない。気づいたらギアをマニュアルモードにして高い回転まで引っ張ってしまっている。カイエンの根本は「スポーツ」であり、GTSのパワートレイン、内外装がさらに引き立ててくれているのである。GTSはズルい!
SPEC
ポルシェ・カイエン・クーペGTS
- 年式
- 2021年
- パワートレイン
- 4リッターV型8気筒ツインターボ
- トランスミッション
- 8速AT
- エンジン最高出力
- 460ps/6000-6500rpm
- エンジン最大トルク
- 620Nm/1800-4500rpm
- タイヤ(前)
- 285/40 ZR21
- タイヤ(後)
- 315/35 ZR21