ルノー・トラフィック(FF/6AT)愛せるプロフェッショナル

ルノー・トラフィック(FF/6AT)愛せるプロフェッショナル

ルノー・トラフィックの試乗記。乗れば乗るほど、単なる道具ではなく、愛着の湧くパートナーになるのが不思議なところ。用がなくとも欲しくなる車なのだった。

フランスの商用バン

ルノー・トラフィックの実車を目にするのは初めてのことだった。思ったより大きい、というのが第一印象。次に気になったのはルノーらしさがあるのか、という点だった。

まずはルノー・トラフィックの基本情報から。ローマ字では「Trafic」と書く。英語表記は「Traffic」であり、フランス語だ。

今回テストする個体は3代目。1980年から製造されており、バッジ違いの別モデルが複数のメーカーから用意されていた。

生産はフランス。親会社の変更や提携などによって、姉妹車が代替わりや名称変更した。

3代目は、大きく分けると3つの顔が存在。テスト車は2種類目(1度目のフェイスリフト)の顔をもつ。3種類目は、ルノーの新しいデザイン言語を適用した「C型」LEDライトやグリルを組み合わせる。

海外で展開されたトラフィックは、3種類のボディタイプに大別される。純粋なバンと、乗用ワゴン、そして荷台なしのキャビンのみのタイプだ。純粋なバンは、荷室がパネルで覆われたもの、スライドドアに窓があるもの、荷室全体に窓があるもの、である。今回なテスト車は「純粋なバン」ということになる。

さらに全長、全高、ホイールベースは2種類ずつ。全幅は1956mmのひと通りが存在する。

用がなくとも欲しい

ルノーらしい走りって何だろう。私が思うに、やわらかな足さばきと、程よくキレのよいハンドリング、それにともなうスッキリとした後味=爽快感といったところだろうか。

ルノー・トラフィックは、意外にもルノーの走りそのものだった。意外にも、というのは、先述の通りOEMであらゆるメーカーに提供される商用バンである。きっと設計思想もプロセスも違うだろうに、という気持ちの表れである。

まず空荷の状態だと車体がとても軽く感じられる。また駆動方式がFFであるにも関わらず、驚くほどスパスパとノーズが向きを変える。そのうえ高扁平のタイヤのおかげで乗り心地はふわりふわりと柔らかく仕上がっている。

さらにディーゼルが生み出す豊かなパワー。ピーキーなところがなく、穏やかで頼り甲斐のあるトルクの盛り上がりにホッとする。

よしんばラフな運転をしても、動きがバラバラになってしまう感覚はなく、むしろ大きな箱のバンなのにまとまりがある。商用バンであるから、偶然の重なりも大きくあることだろう。しかしこの車は、結果的にルノーらしく、嫌な気持ちに一切ならないのであった。

乗り終えたときに私は、「自分が家具屋さんだったらなあ」、「いやいや家具屋さんでなくとも、大きな荷物を運ぶこと、なかったかなあ」。そんなことを考えていた。つまり車から逆算して、どうにかこの車を使えるシチュエーションが自分の生活にないかと考えていたのである。困ったものだ。

それほどにトラフィックの印象は強く、この車を使い倒すために、自分の生活さえ変えたくなるような、愛せる車なのだ。

メーカー
価格
店舗
並べ替え