メルセデスAMG SL43(FR/9AT)さなぎから蝶へ

メルセデスAMG SL43(FR/9AT)さなぎから蝶へ

メルセデスAMG SL43(R232)に乗って、従来のモデルから完全に生まれ変わったことを実感した。まるでさなぎから蝶に大変身したような華やかさと軽やかさだ。

生まれ変わったSL

SL。「Super」と「Light」からくるモデル名のこの車は、1952年に公道を走ることができるレーシングカーとしてデビューした。初代(300SL)の誕生から70年目の2022年に、メルセデスAMGによって生まれ変わった。

2+2のシートがデフォルトになり、ボディデザインの自由度も高まった。ブラックペイントのウインドスクリーンは大きく傾斜し、長いホイールベースと短いオーバーハングと相まって、プロポーションはスポーティだ。

タイトでスポーツカー然としたインテリアはすべてがドライバー向きに設計され、まさにコックピットと呼ぶにふさわしい。センターコンソールの極めて太い幅は特に目立つ。その両脇にすっぽりとドライバーが埋まるように腰を下ろす。センターコンソール上部には11.9インチの縦長メディアディスプレイが継ぎ目なく鎮座。12〜32°の角度で傾きを電動調整でき、オープン時に重宝する。

全体的にミニマルでありながら、ディテールまで配慮がなされており、高級感がある。

AMGのパフォーマンスステアリング上には、カラー液晶表示のAMGドライブコントロールスイッチがつく。重要な走行機能とドライブモードを切り替えることができる。

アルミ製パドルシフトからAMGスピードMCT9速トランスミッションを操作でき、静的/動的質感も高い。

結果、内外装は全体を通じて、細かく配慮され、かつ質感が高い。その上、メルセデスの最新の言語が幅広く採用されている。

SLのパワートレイン

日本国内に導入されたのは、SL43と呼ばれる2リッター直列4気筒ターボ搭載モデル。SL43は381ps/430Nmを発揮する。新車時、ステアリングは左右から選べ、税込み1498万円のプライスタグが掲げられた。

ドイツやアメリカ市場にはSL55とSL63が存在する。いずれも4リッターV8ツインターボを搭載しており、前者が469ps/700Nm、後者が577ps/800Nmを発揮する。

SL43が搭載するエレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーはF1由来の技術で、量産車としては世界初の採用だ。

エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーの電気モーターは厚さ約4cm。排気側のタービンホイールと吸気側のコンプレッサーホイールの間のターボチャージャーの軸に直接一体化されている。このモーターが電子制御でターボチャージャーの軸を直接駆動。コンプレッサーホイールを加速させる。

結果、アイドリングスピードから全エンジン回転域にわたって、レスポンスで利する。またアクセルから足を離したり、ブレーキを踏んだりした場合でも、エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーは常にブースト圧を維持することができる。さらにスターター兼ジェネレーターが第2世代に切り替わり、短時間の出力ブーストを可能にした。

このあたりがどう走りに影響するのかが興味深い。走り出そう。

走らせてみたSLの印象

先述の通り、メルセデスAMG SL43のコックピットはタイトである。すっぽりと身体を小さなバスタブに落とし込む感覚だ。

技術説明の通り、2リッター4気筒ターボから最大限捻り出されたパワーが即座に立ち上がる。大排気量ユニットとは対局にある、極めて高い効率で心臓部が仕事をする感覚は、いかにも現代のスポーツカーである。

スポーツカーだと表現できるのは、車体の動きのタイトさも理由である。10年以上も前の先代と比べるのはフェアでは内が、現行型は明らかに車体の隅々まで神経が張り巡らされているかのようなキレのある動きをする。

コンフォート、スポーツ、スポーツ+、レースと、それぞれのモードのキャラクターの変化が激しい。コンフォートモードでもピリリと辛いキャラクターを主とし、スポーツ+以上では積極的に後輪が滑り出す。

感覚的にはマツダ・ロードスターを大きくして、とびきり元気のいいパワートレインを載せた、といったところ。

ではケイマンか…と言われれば少し異なる。ケイマンはソリッドだ。SL43は、快適性とスポーティネスの中間点に位置している。

エグゾーストサウンドも迫力あるもの。本当に2リッター(しかないの)だろうか? と最初は驚くに違いない。

敏捷なSL。SLは生まれ変わった。本物の「Super」「Light」をついに手にしたのだ。

SPEC

メルセデスAMG SL43

年式
2023年
全長
4700mm
全幅
1915mm
全高
1370mm
ホイールベース
2700mm
トレッド(前)
1660mm
トレッド(後)
1630mm
車重
1780kg
パワートレイン
2リッター直列4気筒ターボ
トランスミッション
9速AT
エンジン最高出力
381ps/6750rpm
エンジン最大トルク
480Nm/3250-5000rpm
モーター最高出力(前)
13.6ps
モーター最大トルク(前)
58Nm
サスペンション(前)
マルチリンク
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
265/40 R20
タイヤ(後)
295/35 R20
メーカー
価格
店舗
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