今回はG400dとG63

レセンスではこれまで、W463A型（2018年〜）のメルセデス・ベンツG350dとW463型（1990年〜2018年）の2台をテストしてきた。

そして今回テストするのはW463A型（2018年〜）のG400dと、メルセデスAMG G63だ。

1979年にデビューして以来、Gクラスは基本的なスタイリングや堅牢なボディを維持しつつ、快適性やパワートレインのアップデート、装備の拡充を経ながら進化してきた。

2018年、W463A型に切り替わる際は、最も大幅な変更を果たした。以前のモデルから流用されたパーツはたったの3つ。ドアハンドル、ウインドウウォッシャーのノズル、タイヤカバーのみ。ほかはすべて見直されたのだ。

ボディサイズは全長が4817mm（＋53mm）、全幅が1931mm（＋64mm）と拡大している。ともなって、前席足元は＋38mm、後席足元は＋150mm拡大している。

G400dとG63の違い

G400dは、エントリーモデルのG350dと同じく、「OM656」と呼ばれる3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンを搭載する。

ソフトとハードの調整により、G350d比＋44ps/100Nmの、330ps/700Nmまで高められた。ボディカラーはG350dと比べて12色増えており、ハンドルが左右両方から選べるのもポイントだ。新車時の価格はG350dが1251万円であるのに対し1289万円であった。

いっぽう、G63が搭載する4リッターV型8気筒ツインターボは585ps/850Nmを発揮する。気筒休止システムを採用し、負荷に応じて気筒を休止して燃費効率を向上する。

2021年時点の新車価格は2218万円であった。G400dとの差、929万円。2台同時に試乗することで、何を感じるのだろう。

共通する進化した点

両者に共通するのは、先代と比した、一般道における圧倒的なロードマナーの進化だ。

フレーム、ボディシェル、ボディマウントのねじり剛性は、先代で6537Nm/degだったものを1万162Nm/degと、約55％向上。これによるところが多く、ノイズや振動が明らかに減っていると感じる。

ステアリングが、従来のボール＆ナット形式から電動機械式ラック＆ピニオン式に置き換わったことで、ハンドルの細かな調整や、曲がったあとの切り戻しの必要が減った。いっぽうでうねりを伴う道などでもフィードバックが欠けることはない。

また車自体の動きも身軽になった。高張力/超高張力スチール、アルミニウムによる新しい材料構成と、パーツごとの素材の見直しで170kgの軽量化に成功している。当然動きそのものは車重を感じさせるものの、従来型の「何やら重たいレンガをバネと車輪で動かしている」といったモサモサ感は減り、ラグジュアリーカーを動かしている実感が高まる。

レンジローバーと比べると、腕を使って巨体を逐一コントロールする「ゲレンデっぽさ」はあり、独特の癖は残っている。ただこれほど癖がマイルドになっていれば、むしろお楽しみの領域として楽しめる。わたしはレンジローバーを個人的に所有しているが、ゲレンデらしい味わいを羨ましく思う。

全くことなる方向性

G400dとG63、パワートレインの違いは明確だ。G400dは、G350dよりも確かに力強く、ディーゼル特有のざらつきが室内に伝わって来ない分、マイルドで頼れるドライブフィールに終始安心感がある。理性でGクラスを選ぶとしたらG400dが最有力候補だろう。

対するG63は、そのトゥーマッチさが歓びの対象になる。従来型より柔軟性と粘りがあるV型8気筒は、どの領域でもあの「ドロドロ、ゴロゴロ」とした音を楽しめるようになった。

冒頭で触れた、929万円という価格差は、もう考えないようにした。なぜならどちらも全く方向性が異なる車であり、同時に所有欲を満たしてくれることは間違いないからだ。

ゲレンデの「いっちゃんいいの」を欲しいならば迷わずG63を買うだろうし、ゲレンデの「らしさと、ほどよさ」を求めるならばG400d。それぞれ全く違う車なのだ。

ただしどちらも経験して欲しいというのが筆者の願い。どちらにも、それぞれの特長があり、乗らずに色々と語ることは難しい。