クーペタイプのアストン・マーティンDB11に対しオープンタイプの「ヴォランテ」に試乗。しかしこの日は雨。だが雨だからこその魅力にはっとした。そして雨がやんで…。
「ヴォランテ」とは
アストン・マーティンDB11は、5.2リッターV12ターボとともに歴史の幕があけた。その後、2017年に4リッ ターV8ツインターボが加わる。レセンス編集部はV8ツインターボのクーペタイプの試乗を済ませており、しなやかな車体、長さを忘れるほどスパッと切れる ロングノーズ、色濃くのこる「バンカラ」な香りを前にし、またその実用性の高さから初めてのアストン・マーティンとして、ヴァンテージよりも好ましいと結 論づけた。
そのあと我々が目をつけたのがヴォランテ。つまりコンバーチブルだ。クーペの魅力をスポイルしないのか、またヴォランテならではの旨味があるのかを知りたくなったのだった。
ファブリックトップ(ボルドーレッド、ブラックシルバー、グレーシルバーの3色から選べる)は吸音性/遮音性に優れた素 材と融合させた新設計の8層。開く際は14秒、閉じる際は16秒で完結する。リモート操作ができ、50km/h以下であれば走行中でも動作する。そのうえ DB9ヴォランテと比べると荷室容量が20%大きくなっているのもポイントだ。
LCD(ライフサイクル・デュアラビリティ)テスト、つまり長期的な耐久シミュレーションでは、10万回以上の開閉でも耐えうるし、世界でも最も厳しいとされる天候条件実験もパスしている。デスバレーや北極圏でも現地試験を実施した。
それでいてサイドから見る限り、DB11の前後に伸びやかで流麗なボディラインをスポイルしていない。長いノーズに低いルーフ、後方のまで押し下げたデッキの構成は美しさを語るうえで正義なのだと改めて思う。
走りの面ではどうだろう?走り出そう。
晴れていいなくとも
ドライブ当日、京都はあいにくの雨。せっかくのオープンが…と一瞬思いはしたものの、すぐにその気持は霧散した。
幌にしとしとと落ちる雨音。繊維に染み込む様までもが想像できるくらい、リアルで、そして温かみのある音だ。雨が降っていてもオープンは心地いい。大きく深呼吸した。吐息が静かに車内に響く。リラックスしつつスタートボタンを押した。
ゴゴゴっとV型8気筒エンジンが唸る。少しばかりクーペよりも音が聞こえやすいだろうか。走り出す。現代車の中でも高いレベルで剛性を保っているように感じる。
速度が高まっていってもクーペとヴォランテの差は大きくないようだ。少し意地悪な動きを試みても、車体はしっかりと突っ張り、ドライバーにインフォメーションを伝える。
アストン・マーティン最高技術責任者(CTO)のマクシミリアン・シュヴァイは当時、「コンバーチブルモデルを開発する ことの難しさは、構造的な強度と運動性能を両立させる点にあります。」と語っていた。また、剛性を担保することで生じる重量増をどう抑えるかが大変だと 語っていた。
その点DB11は、接着を多用した構造上のメリットをしっかりと利用することができる。DB9ヴォランテに対し、結果的に26kgダイエットし、剛性は5%高まっている。
ゆえにハンドリングの鋭さも健在だ。DB11で感じた「アストン・マーティンらしさ」はまるで損なわれることなく、そのうえ屋根が開くとくれば、新車価格の150万円差は、車両全体の価格に対しても高くないとさえ思える。
鋭いハンドリングとV8サウンドを楽しんでいたら少しの間だけ雨が止んだ。幌を開け放ってクルマを降りたときにもう1つの魅力に気づく。美しい内装が車体の大きな開口部からたっぷりと見えるのである。
こだわって選び抜いた一点物のカラーコーディネートであればDB11は一層映える。これもヴォランテにしかない魅力だと確信した。
SPEC
アストン・マーティンDB11ヴォランテ
- 年式
- 2018年
- 全長
- 4750mm
- 全幅
- 1950mm
- 全高
- 1300mm
- ホイールベース
- 2805mm
- 車重
- 1870kg
- パワートレイン
- 4リッターV型8気筒ツインターボ
- エンジン最高出力
- 510ps/6000rpm
- エンジン最大トルク
- 675Nm/2000-5000rpm
- サスペンション(前)
- ダブルウィッシュボーン
- サスペンション(後)
- マルチリンク
- タイヤ(前)
- 255/40 R20
- タイヤ(後)
- 295/35 ZR20