マセラティ・クアトロポルテGT Sグランスポーツ(FR/8AT)マセラティは変わった

マセラティ・クアトロポルテGT Sグランスポーツ(FR/8AT)マセラティは変わった

マセラティ・クアトロポルテGT Sに試乗して感じるのは、マセラティがドラスティックに変貌したということ。私達もそれを受け入れ、前に進んでいくべきだという2点だ。

6代目クアトロポルテの全容

初代の誕生は1963年。60年の歴史を持つマセラティ・クアトロポルテ。今回はその6代目(23年時点で現行型)に試乗する。

グレードはGT S。トリムレベルはグランスポーツ。1312万円から始まる「クアトロポルテ」の上が、「クアトロポルテS」、さらにひとつ上が「クアトロポルテS Q4」、そしてGT Sが展開された。その上の最上級グレードに「クアトロポルテ・トロフェオ」があった。GT Sは、仕様が「グランスポーツ」と「グランルッソ」に分けられた。いずれもラグジュアリーであることに変わりないが、前者はスポーツ志向の仕立てとなる。

ボディサイズは全長×全幅×全=5270×1950×1470mm、ホイールベース=3170mm。

ご参考までに、同年代のメルセデスAMG S63は、5305×1915×1500mm、3165mm。

Sクラスよりは全長が35mm短く、幅が45mm大きい。全高は30mm低い。ホイールベースはほとんど同じと言ってよいだろう。

道理で、伸びやかなデザインだけれど、かなり踏ん張ったスポーティな印象を受けるわけだ。ボンネット高が低く、リアに向かってサイドデザインが跳ね上がる、動物的な躍動感も感じられる。端的に言って格好良いのだ。

本試乗車は、ロベルタのリフティングシステムと、ヴォッセンの22インチホイールが組み合わされている。そのあたりの変化も観察してみたいと思う。

クアトロポルテの内外装は

外装がブラックでまとめられ、車高がグッと下がったクアトロポルテGT Sは、写真で見る以上の迫力がある。

ブラックであるため、明るいカラーに比べて抑揚がわかりづらいけれど、近くで見たり、また、光のコントラストが強い場面だと、特にリアフェンダー上部の盛り上がりに迫力がある。

フロントグリルも先代と同じく前に突き出している。これも実物の方がわかりやすい例。グリル自体も先代より大きくなっている。少ししゃくれたナンバープレートの角度も、MCストラダーレなどの特別なモデルを彷彿とさせて非現実感がある(欧州のナンバーであれば、そんなことを考えることもないけれど)。

リアの灯火類は、正直、どこかで見たことがあるような気がする。歴代が個性的だっただけに、期待しすぎている自分もいる。

内装のは8.4インチ・インフォテインメントシステム周辺も、どこか没個性的で、既視感があるような気がする。

それぞれの仕立ては美しく、丁寧なのだけど。

後部座席の足元スペースにはたっぷりとした余裕がある。身長172cmの私がフロントシートを合わせ、後席に移っても、足を組んでさらにあまりあるスペースであった。

はっと我に戻されるのは、大きなパドルシフトが視界に入ってきた時だ。これから始まるマセラティの走りに期待するのだった。

マセラティは大きく前進した

スタートボタンを押すと、3.8リッターV型8気筒ツインターボが瞬時に目覚める。可変バルブ付きの排気管ゆえか、さほど煩くない。

走り始めはしっとりとしている。ステアリングはどっしりとしている。恐れていた乗り心地の悪化は、さほどではない。

アクセルを踏み増していくと、ドライな高音が後ろから聞こえてくる。太いタイヤは常に路面をがっしりと掴む。大きなボディを大きなエンジンで引っ張っているのに、身体が軽く感じるのは、やはりV8エンジンが鳴らすシンフォニーゆえなのだろう。二重ガラスのお陰で、タイヤが地面を擦ったり、風が車体にぶつかる音は綺麗に抑え込まれている。

さらにスピードを上げると、シャシーバランスの良さが随所から伝わってくる。具体的にはコーナーでよく分かる。5mを優に超えることが信じられないくらい、くるり、くるりと身を転じて前に進む。先代までのピョコピョコとして上下動はすっかりと姿を消し、マセラティもついにここまで来たのだなと、心から感心し、その余韻は長く続いた。

唯一、この車にもの申すことが許されるならば、それは先代までの危うい均衡がもたらす儚さと色気をまぜこぜにした、マセラティらしい体験が消え去っていることだろうか。

しかし懐古主義を捨て去ってもなお楽しませてくれることは間違いない。また、現行型の完成度ゆえ、マセラティを歓ぶ層を一気に増やせているのも事実である。

マセラティは前に進んだ。私達はそれを称え、私達も前に進んで行かなければならない。

SPEC

マセラティ・クアトロポルテGT Sグランスポーツ

年式
2017年
全長
5270mm
全幅
1950mm
全高
1470mm
ホイールベース
3170mm
トレッド(前)
1640mm
トレッド(後)
1650mm
車重
2060kg
パワートレイン
3.8リッターV型8気筒ツインターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
530ps/6500-6800rpm
エンジン最大トルク
650Nm/2000rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
マルチリンク式
メーカー
価格
店舗
並べ替え