アルファ・ロメオ・トナーレ・ヴェローチェ(FF/7AT)小粋な弾丸SUV

アルファ・ロメオ・トナーレ・ヴェローチェ(FF/7AT)小粋な弾丸SUV

アルファ・ロメオ・トナーレは、驚くほど「昔ながら」のアルファ・ロメオなのである。ひと言で「小粋」。乗れば必ず笑顔になり、ひとしきり走らせたあとには元気になる。

アルファ・ロメオ・トナーレとは

アルファ・ロメオ・トナーレは、同社初のCセグメントSUVである。アルファ・ロメオはトナーレについて、スポーティネスを継承しながら、ブランドの変革を指す「La Metamorfosi(ラ・メタモルフォシ/変革)」を体現した、と説明する。

ボディサイズは、全長×全幅×全高=4530×1835×1600mm。ホイールベースは、2635mm。車重は1630kg。駆動方式はFF。

参考までに兄貴分のステルヴィオは全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm、ホイールベースが2820mmとなる(ヴェローチェ比較)。

パワートレインは、同社初のマイルドハイブリッド。新開発の1.5L直列4気筒直噴ターボ(160ps/240Nm)、48Vモーター(20ps/55Nm)を組み合わせる。マイルドハイブリッドとはいえ、15-20km/h前後まではモーターのみの走行をするのもポイントだ。組み合わせるトランスミッションは7速DCT。

「トナーレ」のモデル名は、イタリア北部にある、スイスの国境にほど近いアルプスを望む「トナーレ峠」に由来するという。

アダプティブ・クルーズ・コントロールやレーン・キーピング・アシスト、360°カメラをグレード問わず装備していながら、DNAドライブモードシステムで、エンジンやトランスミッションのレスポンス、サスペンション設定の切り替えて走りを楽しむことに重きを置いたことをアルファ・ロメオはアピールする。

実用性能と動的性能 そして色気

アルファ・ロメオ・トナーレを目の前にしてまず感じるのは、事前に想像していたよりも小さいぞ、という驚きである。ディテールやボディのダイナミックな抑揚からイメージするよりもコンパクトで、ハッチバック車を嵩上げしたような佇まいである。

個性的なヘッドライトは往年のアルファ・ロメオSZからインスピレーションを得ているそうだ。マトリクスLEDはアルファ・ロメオ初採用。カメラによる前方認識や車速・走行状況で、照射範囲や照射距離を自動で最適化する。

リアにも、3連型のLED式コンビネーションランプを採用する。トレンドを取り入れながらも個性的なルックスにまとまっている。

後方のサイドガラスは、下端がギュッと上に持ち上がる。これは8Cコンペティツィオーネから着想を得たものだという。その下からリアファンダーに向かって豊かにボディが膨らむ。小型SUVでありながら躍動感に飛んだセクシーな見た目だと思う。

内装にも2連メーター(中身は12.3インチのデジタルスクリーン)など、アルファ・ロメオの伝統は守られている。シフトノブのデザインは今となっては懐かしいものだが(おそらく何かの流用だろう)、それ以外はコンパクトで緩急のついたドライビング重視型だといえる。懸念していた後部座席足元空間も、拳ひとつの余裕が170cmの筆者に残されており、頭がぶつかることはなかった。それでいてスーツケース2つと大きなトートバッグをまるっと飲み込む余裕が残されていた。

生粋のアルファ・ロメオが現代に

先述の通り、走り出しは電力のみの力で前に進むことが多い。まるでストロングハイブリッドのような推進力だ。その後、1.5L直列4気筒エンジンが目覚めると、小気味よく、元気なサウンドが室内に入ってくる。

ステアリング操作に対する車体の動きは機敏だ。1630kgという車重も相まってフットワークが軽い。ホットハッチさながらである。

乗り心地はかなり引き締まっている。20インチのホイールが影響しているのだと思う。テスト車の走行距離がたったの3000kmであることも理由のひとつだろうか。今後の変化が楽しみだ。その分、コーナーでも車体の傾きが小さく、安定感がある。FF時代のアルファ・ロメオのスリルがこの時代にも体感できる歓びといえるかもしれない。

「D.N.A.」と呼ばれるドライブモードをD(ダイナミック)にスイッチするとさらにアシの動きが締め上げられドライバーをせき立てる。SUVの形をしているけれど、これは昔ながらのアルファ・ロメオだなと思う。

一言でいうならば小粋。小さなボディにギュッと凝縮された色気、高いスピードで楽しむ愉しさを詰め込んだ生粋のアルファ・ロメオが現代でも楽しめる。そう考えれば、高効率でありながら元気なパワートレインも愛おしくなる。こんな車を歓ぶ人は、過去にも未来にも絶対に存在する。電動化真っ只中のこの時代に、アルファ・ロメオが現代の解としてトナーレを産み落としてくれたことに感謝したい。

SPEC

アルファ・ロメオ・トナーレ・ヴェローチェ

年式
2023年
全長
4530mm
全幅
1835mm
全高
1600mm
ホイールベース
2635mm
トレッド(前)
1580mm
トレッド(後)
1580mm
車重
1630kg
パワートレイン
1.5リッター直列4気筒ターボ
モーター
48V
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
160ps/5750rpm
エンジン最大トルク
240Nm/1700rpm
モーター最高出力(前)
20ps/6000rpm
モーター最大トルク(前)
55Nm/2000rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
ストラット
タイヤ(前)
235/40 R20
タイヤ(後)
235/40 R20
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