メルセデスAMG S63カブリオレ(4WD/9AT)これ以上、何を望もう

メルセデスAMG S63カブリオレ(4WD/9AT)これ以上、何を望もう

6代目(W222型)メルセデスAMG S63カブリオレ4マティック・プラスは、快楽、快適性など、これ以上何を望もうかと思えるほど、全てを兼ね備える。

マイナーチェンジ後

この記事の主役は6代目(A217型)メルセデスAMG S63カブリオレ4マティック・プラス。2018年にマイナーチェンジを果たした。

マイナーチェンジ後の外観は、フロントの大型エアインテークや、片側33枚の有機ELパネルを重ねたリアコンビネーションランプが識別ポイントとなる。後者は解錠/施錠時に流れるように点灯する「カミングホームファンクション機能」も備わる。

アシスト機能も更新された。自動再発進機能が新たに加わり、停止後30秒以内であればアクセルを踏まなくても自動的に発進する。

また歩行者に加え、交差点での車両飛び出しにも自動緊急ブレーキが作動するようになった。さらに車線が不明瞭な場合や検知できない場合でも周囲の車両やガードレール等を検知しステアリングアシストを行う。高速道路上ではウインカーレバーを操作するだけで、行き先の車線に車両がいないことをシステムが確認、自動での車線変更する。

緊急時のステアリング操作をアシストする「緊急回避補助システム」や衝突時の衝撃音から乗員の耳を保護する「プリセーフ・サウンド」なども備わっている。

「エナジャイジング・コンフォート」なるものも装備する。これは5つのプログラムから、音楽や空調、アンビエントライト、リラクゼーション機能を統合的にコントロールする。

パワートレインは4リッターV型8気筒ツインターボで、612ps/900Nmを叩き出す。AMG GTと共通の「M177」型だ。

浮かんでくる「思い」

全長5050mmのボディにたった2枚のドア。ただただ贅沢だ。乗り込むと、やわらかいシートが身体を包み込む。シートポジションはやや高め。眼前のダッシュボードは美しく孤を描き、さながら豪華な小舟に乗っているようだ。ステアリングの握りは絶妙な太さ、そしてやわらかさ。走る前から癒やしの時間は、もう始まっている。

走り出すと、まるで人の手が優しく引っ張っているかのうように、シートベルトが引き締まる。4リッターV8ツインターボは低く、しかしなめらかな唸りをあげながら、大きな車体を滑らせている。

AMGモデルであるだけに、低速域は思ったよりも路面の入力を伝えてくるなと感じたが、速度が乗ってくると、標準のSクラスの穏やかな乗り心地を適度に引き締めた程度だと思うようになる。舵角をあてると、サイドボルスターが動くことで脇腹あたりをやわらかくサポートしてくれる。先読みに長けた執事がそこにいるようだ。

幌を開け放ち、フロントスクリーン上端のディフレクターを出す。リアのディフレクターも上げると、厄介な風の巻き込みと無縁の空間が広がる。およそのタルガトップの車よりも安楽な空間かも知れないと思う。首元を温かい風が包む。ヘッドレストから出ている。マフラーを巻いているようだ。

これ以上、安楽なオープンカーはあるだろうか。本当にスポーティネスを標榜するメルセデスAMGの車なのだろうか。そんな思いがふわりと浮かんでくる。刹那、アクセルを踏み込むと、S63カブリオレの真逆の一面を体験することになるのだった。

これ以上何を望もうか

センターコンソール左側にあるスイッチをスポーツプラスモードに切り替えると、明確に排気音が大きくなった。

砂型鋳造されたクローズドデッキのアルミニウムクランクケースに鍛造アルミニウム製ピストンを組み合わせるV8ツインターボは、待っていたかのように漲るパワーを披露する。

負けじとアクセルを踏み込むと、わずかにホイールスピンを許しつつ、空気をビリビリに引き裂きながら前に進む。

湿式多板クラッチを採用した9速オートマティックは、パーシャルスロットルでは考えられなかったダイレクト感をもって、程よく回転を上げつつ明確に変速する。

アクセルを踏みますたびにボリュームが大きくなる排気音は、機関銃のような迫力。アクセルから足を離すと、豪快にブリッピングする。どこかでバースト?と思ったら、この車のアフターファイヤー音だった。

コーナーに入ると、クーペのボディに対し、ボディ後半の補強が明確に効いていることがわかる。屋根が開いても「ゆるい」と感じない。ステアリングもクイックだ(ロック・トゥ・ロックが2.2回転)。

また、スポーツプラスであれ、前:255/40 R20、後:285/35 R20(コンチ・スポーツ・コンタクトを組み合わせていた)の極太/極薄タイヤタイヤであることが信じられない快適性だ。コシとハリのある乗り味に留まり、嫌になることはまったくなかった。

念の為に申し上げるが、ヘビー級の大柄車体であることを忘れることはないけれど、メルセデスらしい快適性と、圧倒的な力感あふれる挙動、そして色気のすべてを自分のものにできるとしたら、これ以上何を望もうか、と思うのであった。オーナーは幸せ者である。

SPEC

メルセデスAMG S63カブリオレ4マティック・プラス

年式
2018年
全長
5050mm
全幅
1915mm
全高
1430mm
ホイールベース
2945mm
トレッド(前)
1640mm
トレッド(後)
1650mm
車重
2250kg
パワートレイン
4リッターV型8気筒ツインターボ
トランスミッション
9速AT
エンジン最高出力
612ps
エンジン最大トルク
900Nm/4500rpm
サスペンション(前)
4リンク
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
255/40 R20
タイヤ(後)
285/35 R20
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