アルピナD5ターボ(FR/8AT)アルピナの滋味

アルピナD5ターボ(FR/8AT)アルピナの滋味

F10世代のアルピナD5がこの記事の主役。現代のアルピナとは異なる、濃密な「アルピナ・テイスト」を感じた。価格が落ち着いている今、趣味を深掘りする絶好の機会だ。

アルピナD5ターボ F10

今回の主役はアルピナD5ターボ。アルピナにおける5シリーズとしては2代目。F10世代である。2019年にB5ビターボ(ガソリン)リムジン(セダン)が登場。2011年にツーリング(ワゴン)が加わった。2012年にD5ターボ(ディーゼル)が加わる。こちらはセダンのみの設定だ。BMW製のN57エンジンを搭載する点は同じだが、欧州ではD5ビターボが導入されている。ホモロゲーションの関係で日本のみD5ターボになったようだ。

3リッター直列6気筒ディーゼルターボは280psと600Nmを発揮する。BMW 530dのものとエンジン自体は変わらない。ヒートマネージメント系のパーツは、535dの高温地域仕様のものを使っている。エアダクトやインタークーラーも専用部品となる。このエンジンはD5ターボ以外には用いられない。トランスミッションは8速トルコンAT(ZF 8HP70)が組み合わされる。駆動方式はFR。

サスペンションはMスポーツの可変ダンピングシステムを基本とする。セッティングはもちろんアルピナによるものでハブキャリアはBMW 7シリーズから受け継いでいるようだ。スタビライザーはM550dXのものに類似して見える。リアには専用のクロスバーが備わる。

一説によると、リアは敢えてソフト方向に振ったセッティングにしているそうだ。ブレーキシステムは530dと共通である。

内外装はアルピナの定石

外装はアルピナの定石どおり。かくもノーマルの5シリーズと違うものか!と感じるのは、中でもフロントのリップスポイラーによるこのだろう。フロントフェイスに厚みが増し、低く構えているようにみえる。

リアのトランクフードにもスポイラーがつく。マフラーは左右2本ずつの4本出し。字面だけだとレーシーなのに、そこはかとなくエレガントな雰囲気なのは、20インチのアルピナ・クラシック・ホイールが効いているのだろう。タイヤサイズはフロントが255/35、リアが285/30である。テスト車は指定タイヤとは別銘柄のものを組み合わせていた。

もうひとつ、この個体ならではのユニークなポイントとして、実はアルピナブルーではないというのもニクい。タンザナイトブルーメタリックというボディカラーで、アルピナブルー(55万円の有償オプション)が圧倒的多数を占めるなか、何ともマニアックである。いやいや、あんさん、オプションを選んでないだけでしょうか、なにをもったいつけて…。そんな声も聞こえてきそうだけれど、そこはアルピナ。いちいちそんなことに目を輝かせるのもまた、アルピナ好きの「こじらせ」なのだ。

閑話休題。インテリアもまたアルピナらしい仕立てである。ミルテウッドがダッシュボードやドアに埋め込まれ、室内を明るくする。メーターもアルピナブルー。標準の5シリーズとは明らかに異なる。ホワイトベージュのレザー内装も華やかだ。ステアリングには、ボタン式でシフトチェンジする「スイッチ・トロニック・ボタン」がつく。

アルピナに乗っているという実感が湧く。

包容力 濃密さ 温かみ

F10世代のアルピナD5ターボに乗って感じるのは乗り心地における豊かな幅だ。

大きなストローク、やわらかい当たり、しかし不安定ではない。絶妙な塩梅にアルピナらしさを感じるのである。タイヤが純正でなくとも味わいが大きく損なわれなかったのは意外だった。

ベース車からここまで良くなる秘密、20インチのホイールを履いてもなお鷹揚である秘密、それぞれのタネを解き明かす愉しさがある。

一説によると、鋳造ホイールそのものの柔らかさも乗り心地に寄与しているとのことだ。

もうひとつの要因にシートがあると私は考える。サスペンションの上下動に少し遅れてシートの特に背中に接する部分が浮き沈みする。結果、じんわりと上下動を受け止め、収束してくれるのである。

コンフォートモードのさらに快適なモードとしてコンフォート+が備わるのもアルピナの特徴。コンフォート+にすると、極力バネの上下動の収束を遅らせる傾向にある。終始ふわりふわりと動く。高速直進時は有効だ。

スポーツモードはギュッと引き締まり、車体の遊びが減る。G30以降の骨太感とは異なるものの、かなり硬い類である。

エンジンはなめらかに回る。ザラリとした質感が回転が高まるとなめらかになり、音も香ばしい。あえてわかりづらいたとえをするならば、997世代のポルシェ911の音に似ているのが面白い。

すべての動きに一貫性があり、調和がとれている。ここにアルピナらしさが詰まっている。

SPEC

アルピナD5ターボ

年式
2016年
全長
4910mm
全幅
1860mm
全高
1490mm
ホイールベース
2970mm
トレッド(前)
1600mm
トレッド(後)
1600mm
車重
1820kg
パワートレイン
3リッター直列6気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
280ps
エンジン最大トルク
600Nm/3000rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
インテグラルアーム
タイヤ(前)
255/35 ZR20
タイヤ(後)
285/30 ZR20
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