ポイント911カレラ(RR/8AT)ピュア、潔さ、万能性

ポイント911カレラ(RR/8AT)ピュア、潔さ、万能性

ポルシェ911カレラ(992型)の試乗記。911らしさはあるか?カレラにしかない魅力は?というのが今回の主眼。十分に満足でき、個性が浮き彫りになった。

8代目ポルシェ911

2018年11月。8代目ポルシェ911(992型=991型の後継モデル)は、アメリカ・ロサンゼルスにて、まずカレラS/カレラ4Sのグレードからデビューを果たす。2019年1月に、それらのカブリオレモデルが加わる。

2019年7月、カレラ/カレラ・カブリオレが発表される。2か月後、ドイツ・フランクフルトにて、カレラ4/カレラ4カブリオレが追加発表された。今回の主役はもっともベーシックモデルであるカレラである。

カレラとカレラSの違いは異なるターボチャージャーを採用することによる最高出力の違いが第一。カレラは385ps/450Nm、カレラSは450ps/530Nmを標榜する。0-100km/h加速は、カレラが4.2秒、カレラSが3.7秒。いずれも先代から0.2秒ずつ短縮している。最高速度はカレラが293km/h、カレラSが308km/h。

少しずつカレラSがカレラに勝り、しかしカレラでさえ十分にパワフルで俊足、といって良さそうな数値スペックだろう。

第二のトピックは、先代の991世代はRRと4WDモデルでボディ形状が異なった(全幅が異なった)のに対し、この992世代からは区別が無くなった。拡幅されたフロントトレッドは先代+約50mm。当時のデビュー時、私はいち早く会場で実車を目にしたが、フロントのフェンダーがグッとフレアし、リアも大きく張り出した形状に驚いたものだ。結果、ドアを含むボディサイドがキュッと引き締められて見えた。視覚的に迫力が増していた。

よってカレラとカレラSの外観上の違いはリアのエンブレムくらい。マフラー形状がカレラが四角形の左右2本出し、カレラSは円形の左右4本出しになるけれど、スポーツエグゾーストシステムやスポーツテールパイプ(排気システムはノーマルで出口だけ異なる)を組み合わせれば、エンブレムで見分けるのが最良、ということになる。

911(992)内外装

ボディサイズが大きくなったとはいえ、内装はスポーツカーの定義よろしくタイトだ。囲まれ感が強いのは、ダッシュボードやウインドウ下端が高いゆえ。またセンターコンソールの位置も高い。これから始まるドライビングに自然と緊張感が高まる。

メーターはポルシェ伝統の5連タイプ。中央部(タコメーター)がアナログであるのに対し、それ以外は液晶タイプに置き換わる。走りに関わるタコメーターを敢えてアナログにしたところはポルシェの粋な判断だ。実際に見ていると、特にこの電動車の勢いが増すこの時代ならではの歓びにも感じられる。針の質感が高く、フォントも隅々まで吟味されている。価格相応の満足感が細部から得られる。

後部座席は、現代ポルシェとはいえ広くない。クッションも薄い。長い距離に乗ることは子どもでもおすすめできない。いっぽう荷物置き場としては勝手がよくてありがたい。

大きく見た目が変わったシフトノブは、最初こそ慣れが必要だったが、慣れれば手の運動量が少なくて済み、好感をもった。(マニュアルのシフトノブをしこしこと動かしていた時代も懐かしいけれど…)。

シートを含むすべてのマテリアルは中が詰まっておりソリッド。ラグジュアリーブランドのような豪奢さではないが、手抜きしているなと感じることはない。わかりやすく高級な服ではないけれど、そのシルエットや陰影から上質感がそこはかとなく漂う衣服のようだと思った。さあ、走り始めよう。

911/カレラらしさ

グランドツアラーという言葉がポルシェに使われることがあるけれど、それはケイマンに対して911がたんにグランドツアラー寄りである、という意味で、たとえばアストン・マーティンDB11やベントレー・コンチネンタルGTのようにパーシャルスロットルにおける街中の移動から高速移動までが快適というわけではない。低速の一般道では911の乗り心地を「硬いな」と思う人がいて自然だと思う。

遥かに高い速度域で長距離移動しても、タイヤに根が生えているかのように路面を掴み続ける感覚があり、どの速度域でも自分のいのままに操れるタイトさゆえの疲れなさ=グランドツアラーという捉え方があっている。

トレッド拡幅による安定感も如実に増した。横Gに対する踏ん張りが効く。

エンジンの吹け上がりに淀みはない。ターボユニットの音の抜けもよい。アクセルの反応もよい。ステア操作にも素早くついてくる。

「水冷世代」以降におけるボディの剛性感に不満があったが、全体としての一体感が増し、堅牢な空間に身を収めている感覚がある。

ではポルシェ911らしさ、そしてカレラらしさはあるのか?結論から申し上げて、ある。明確にRRらしいリアの押し出しを感じる。逆に高速域のフロントの軽さがスリリングでもある。これを上手く御す醍醐味がある。

カレラらしさは、快適性をぎりぎり損なわない程度の潔いスポーティネスに現れている。7割の人はハードだと結論づけるだろうが、その分、得るもの=愉しさはこの上ない。その愉しさは潔く、ピュアである。

カレラSとカレラを乗り比べて、価格以外の理由でカレラを指名買いする人がいたとしても、その考えを私は心から理解できる。

SPEC

ポルシェ911カレラ

年式
2021年
全長
4520mm
全幅
1850mm
全高
1300mm
ホイールベース
2450mm
トレッド(前)
1590mm
トレッド(後)
1560mm
車重
1530mm
パワートレイン
3リッター水平対向6気筒ターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
385ps/6500rpm
エンジン最大トルク
450Nm/1950-5000rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
245/35 ZR20
タイヤ(後)
305/30 ZR21
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価格
店舗
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