レンジローバー3.0L V6ディーゼル・ターボ(4WD/8AT)有終の美

レンジローバー3.0L V6ディーゼル・ターボ(4WD/8AT)有終の美

レンジローバー・ヴォーグとディーゼルエンジンの組み合わせは素晴らしい。さらに素晴らしいのは、2020年という最終モデルイヤーの成熟だ。まさに「有終の美」である。

レンジローバー×V6ディーゼル

レンジローバーがこのレセンス・メディアに登場するのは2回目。前回は、3リッターV6スーパーチャージド・ガソリンエンジンを搭載した2016年モデルであった。素晴らしい体験であった。

その際に、各世代のヒストリーやパワートレインの詳細をしっかりと並べている。手前味噌ではあるけれど、読み応えの有る内容になっているはずだ。

レンジローバー3.0 V6スーパーチャージド(4WD/8AT)無二無三

今回試乗するのは3リッターV6ディーゼルである。パワートレインの違いや、それによる全体的な走りのマナーの進化が焦点になるか…と思いながらハンドルを握ったら、予想を大きく覆されたのだった。

現実解 3リッターディーゼル

ガソリンエンジンが中心であった4代目レンジローバー(L405型)にディーゼルのパワーユニットが加わったのは、2016年12月のこと。2017年モデルとして加わった。

3リッター(2992cc)ディーゼルは258ps/3750rpmと600Nm/1750-2250rpmを生み出す。標準ホイールベースにのみ与えられたパワートレインである。ヴォーグ/オートバイオグラフィの両方に組み合わせることができた。

このタイミングでは、P400eと呼ばれるプラグインハイブリッドと3リッターV6スーパーチャージドガソリン、5リッターV8スーパーチャージドの4本立てであった。

ラグジュアリーSUVであるから、油ののった大排気量ガソリンエンジンを選ぶ向きも多いけれど、しかし3リッターV6ディーゼルは、その中でも「現実解」としての役割を担った。

2年後に3リッターV6スーパーチャージドガソリンが退役。これもまた3リッターV6ディーゼルが重宝された証左ではないかと考えられる。

果たして実際のドライブでもディーゼルによる力不足は感じられない。5リッターV8スーパーチャージドの625Nmに迫るトルクと、むしろ低い発生回転域のおかげで力強さは負けずとも劣らない。特に都市における常用域では、かったるいと思うことは少ない。

むろん5リッターV8の存在意義もある。それは多気筒による豪華絢爛ぶりに尽きる。こんなパワーをどこで使う? と思える余裕はこのパワートレインにしかないし、レンジローバーのキャラクターにすこぶるマッチするものだけれど、繰り返すが「現実解」としての3リッターV6ディーゼルは、必要十分条件を超える魅力があるのである。

何より驚いたのは洗練性の極地

通常2〜3名でドライブすることが多いレセンス編集部。いずれのメンバーも、歴代はもとより、各グレード、そして各年式にまで落とし込んで、ほとんど全てのグレードを経験している。今回の試乗メンバーもそうだった。レンジローバーについては特に思い入れが強いというのもあるはずだ(あとはポルシェ)。

その全メンバーが開口一番に「洗練されている」と述べたのだった。

いわゆる最終モデルにあたるこのレンジローバー。たしかに味わいが全く違う。

その筆頭が乗り心地である。レンジローバーは前後に長い船のようにゆったりと、そして穏やかに前へ進む。これはどの年式でもおよそ同じではあるが、そこに「美味しい」と思えるところと、「ちょっとな」と思えるところが同居するところが4代目レンジローバーの、それもちょっと古い年式の悪癖だった。

以下は具体例。平滑な、そしてエッジのたたない段差が続く所は、見事に衝撃を丸め込み、乗員の視点を動かさない。一方で意図せぬくぼみを意図せぬタイミングで踏んだときに、腰砕けになる。と同時に、上屋がビリビリっと震える。前者はエアサスの特性、後者は体躯と剛性に起因するもので、避けがたいものだと思っていた。

しかし2020年式。乗り心地はそのままに、巨体の、それも開口部の大きい車であることが信じられないくらいに一体感がある。まるでロールケージで補強したかのようなボディ全体のかたまり感。さらに角の取れたアタリ。積極的に屈伸するサスペンション。

なんとまあ…。密かにライドを改良していたに違いないとわれわれは確信したのだった。

既に現行型の、パワートレイン違い、ホイールベース違いを味わわせてもらった私はこう思う。現行型はマジックである。あらゆる物理法則をひっくり返す魔法。重いものを軽く感じさせる、重力を反対側に働かせる。といったレベルの魔法を使っているように思える。

いっぽうでこの4代目(L405型)は、コンサバティブな設計の延長上に煮詰めた美しい調和がある。元々の成分はそのままに、継ぎ足し継ぎ足し維持される秘伝のタレのように、奥行きのある、そして磨き上げられた「レンジの味」がそこにあった。

メーカー
価格
店舗
並べ替え