BMW M4クーペ・コンペティションM xドライブ(4WD/8AT)サイボーグ

BMW M4クーペ・コンペティションM xドライブ(4WD/8AT)サイボーグ

BMW M4クーペ・コンペティションxドライブは、一言でいって「サイボーグ」のようだ。技術によって驚異的な速度域におけるスタビリティとアジリティを実現する。

コンペティションとxドライブ

BMW M3クーペからBMW M4へ独立したモデルとしては2代目。2021年1月末に登場した。M4とM4コンペティションの2本立てであったが、同年9月、M4 xドライブ=4WDモデルが追加投入されている。コンペティションモデルのみの設定となる。

コンペティションモデルは、M4の強化版であり、480ps/6250rpmと550Nm/2650-6130rpmが、510ps/6250rpm、650Nm/2750-5500rpmへと増強されている。

パワーはxドライブ=4WDとアクティブ M ディファレンシャルを介して伝えられる。M3/M4専用開発の制御システムであり、基本設定は「DSCオン/4WDモード」だが、Mダイナミック・モード(4WDスポーツ)に切り替わるとリアの駆動力が増し、後輪のスリップ許容量も大きくなる。

DSCをオフにすれば、「4WDモード」「4WDスポーツモード」「2WDモード」の3種類から選択できるようになり、「2WDモード」では、挙動を制限する制御システムの介入を断つフリーダムな状態となる。

全幅は先代比+17mm、全高は+5mm。基準車の4シリーズクーペと比べると全長は+24mm、全幅は+40mm、全高は+10mmという寸法だ。

数値面だと意外にも変化が小さく思えるのは、実物のボディのグラマラスさゆえだ。大きく開いたインテークや4本突き出す太いエグゾーストなど、M4にしかないディテールは、やはりいつの時代も特別である。

M4のボディに包まれた変更点

そんなボディに隠された部分にも、かなりのチューニングが施されている。

たとえばエンジンのクランクケース単体は剛性を高める製法となる。シリンダー摺動面の鉄皮膜は軽量化にもつながる。クランクシャフトも鍛造である。シリンダーヘッド・コアも3Dプリントによって軽くなっている。

2機のターボはそれぞれ1〜3番、4〜6番シリンダーに圧縮空気を送り込む。ウエストゲートは電子制御式で素早く閉じる。

車体強化にも余念がない。車体前部にはストラットドームを相互接続している。さらにフロントエンドとバルクヘッドも相互接続する。垂直方向に配置される強化ストラットはエンジンルームの補強エレメントとフロント・アクスル・キャリアを接続。そのサポートベースはAピラー下部の専用の接続部によって強化される。車体の中央〜後方にかけては、クロスバー、ラゲッジ・コンパートメント補強材、ボディ固定のリヤ・アクスル・キャリア(特製)など、全てはM4専用品だ。

ボールジョイント付きコントロールアーム(アルミ)も新開発だ。同じくアルミ製のプルストラット、スプリング・ストラット・クランプで固定されるピボットベアリング、ホイールベアリング(軽量で剛性が高い)もM4に余すことなく投入されている。

ブレーキディスクはフロントが直径380mm、リアが370mm。キャリパーはフロントが6ピストンとなる。オプションでカーボンブレーキも用意される。重量差は明かされていない。

ストリートでは使い切れない

シートの座り心地、ステアリングの握り心地、エグゾーストから伝わる振動など、すべてがゴッチリと骨太だ。M3/M4系のどの過去モデルよりも骨太な印象で、市販車を公式にチューンナップされたというより、最初から「この形」で生まれたスポーツカーのようだと感じる。走り出す前からそう感じるのだから、かなりのものだと思う。

乗り心地は硬い。とはいえ先代から比べると、改善されている。先代は速く走ることを最優先して締め上げられていたけれど、この世代はゆっくり走ることもかなり重視している。

迂闊に雑なアクセルワークをしてしまうと後輪はすぐに空転する。速度が乗った領域でも同じである。京都の広くも長くもないコーナーが連続する道でも同じである。制御が入っているので上手でなくとも救われるが、そのパワーは常に油断できるものではない。

ひやりとしないのは車体のバランスが優れているゆえだと思う。よりスリッパリーな場所ではxドライブのおかげで大きく尻が流れてもフロントが引っ張ってくれ、結果的に美しい軌道を描いてくれるだろう。

残念なことにそんな領域に達することも、またトラクションコントロールを完全オフにした2WDモードも、公道では絶対に試すことなどできないわけだけれど…。

7000rpm手前からレッドゾーンが始まる3リッター直列6気筒ツインターボの音は、粒が大きめで太く低い。6000rpmから先でさらに乾いた音になるが、空気をつんざくような高音とはならない。これが余計にサイボーグ感を助長し、かつての「奏でる」M3/M4の領域ではなくなったことを知る。余計に緊張感が増した気もした。これは「マシン」なのだ。

競争に終わりは無いのである

往年のM3を知っていると、最新モデルの走りの素晴らしさに驚き、いっぽう艶っぽさが懐かしくなったりもする。それくらいにG82型M4は、隙のない機械として成長を遂げた。

それは仕方ないと言うか、当たり前のことで、周りを見渡せば、パワーも速さも完成度も増すばかりで、競争に終わりは無いのだ。

xドライブの投入もそう。もはや後輪だけで大パワーを受け入れられるキャパシティはとうの昔に越えてしまっている。

考え方を変えると、公道では持て余す大パワーと研ぎ澄まされたテクノロジーを、市販車ベースのボディにひた隠すムッツリ感を楽しむにはうってつけだ。特にかような紺のボディにブラウンの革シートで澄まし顔をしたとて、滲み出すオーラは別格なのだから。

SPEC

BMW M4クーペ・コンペティションM xドライブ

年式
2022年
全長
4805mm
全幅
1885mm
全高
1395mm
ホイールベース
2855mm
車重
1790kg
パワートレイン
3リッター直列6気筒ツインターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
510ps/6250rpm
エンジン最大トルク
650Nm/2750-5500rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
275/35 R19
タイヤ(後)
285/30 R20
メーカー
価格
店舗
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