シトロエンC4カクタス(FF/5AT)フランスの魔法

シトロエンC4カクタス(FF/5AT)フランスの魔法

シトロエンC4カクタス……と言われても、
意外に趣味の範疇にない方も多いかもしれない。試乗を通して個性と実力を詳らかにするとカッコだけじゃないことが明らかに。

シトロエンC4カクタスとは

シトロエンC4カクタスがここ日本でデビューしたのは2015年の東京モーターショーでのこと。その時私も、会場にいた。他に並んでいるどの車よりも個性的だった。まるでコンセプトカーがそのまま世間に飛び出したようだった。会場で当時、CEOは「時代を追わない」と声高に宣言した。SUV隆盛のこの時代においてシトロエンにしか出来ない回答を模索した結果、C4カクタスが生まれた。

C4カクタスは、ハッチバックモデルのC3をベースにしている。PF1と呼ばれるプラットフォームを130mmストレッチし、独自のデザインを与えたSUV仕立てとした。

母国フランスでは1.6リッター直列4気筒ディーゼル×6段オートマティックの組み合わせと、1.2リッター直列3気筒×5段ETG(ロボタイズドAT)の2ラインがある一方で、日本には後者が輸入されることになった。

最高出力は82ps/5750rpm、最大トルクは118Nm/2750rpmと控えめながら、車両重量が1070kgに抑えられている。軽い。

ボディサイズは全長×全幅×全高=4155×1735×1530mm。ホイールベースは2595mm。駆動方式はFFのみとなる。

独特すぎる外装のデザイン

外装でもっとも目を引くのは「エアバンプ」と呼ばれるボディサイドに張り付く板チョコみたいなポリウレタン素材だ。エアバンプと呼ばれるだけに空気が封入されている。押すとニュっと凹む。実際に衝撃吸収材の役割を果たしていて、5km/h未満の衝撃に対応する。

サイド全体のシルエットもコンセプトカーのような浮き世離れした感がある。そう思う理由は2つあって、フェンダーアーチモールが実際の17インチ以上のホイールサイズに見せている。もう1つはSUVにしては前傾姿勢に見えるライン構成(前から後にショルダーラインが上がる)であることが挙げられよう。

ルーフレールの造形も特徴的。フローティングして見えるデザインのギミックが取り入れられる。まるで「使えなそう」(褒め言葉)であるのも、浮き世離れ感を強めている。

フロントもリアも丸い球体のようなデザイン。そこに鋭利なデイライトが据えられる。その下がヘッドライトで、やはりエアバンプのような樹脂素材と一体デザインである。リアも基本的には同じ。エンブレムもエアバンプに似た意匠のパネルに埋め込まれており凝っている。

デザインが最優先ではない

インテリアもニクい。デジタルディスプレイの表示はどこかレトロである、スイッチも見たことない意匠。センターコンソール上のエアコンの吹き出し口に至っては左右非対称だし、オートマティックのギア選択はボタン式、シフトレバーと思っていた大きな物体はサイドブレーキだったりと奇々怪々だ。フランス車の鏡のような気がして、私は好感をもてる。好感を持てるのはデザインに振りすぎて実用性を損なっているというようなことがない安心感も影響しているのだろうと思う。

たとえばメーターディスプレイは、小ぶりで見慣れない形なのに、きちんとステアリングの向こうから取捨選択された情報を伝えてくれる。ギアセレクターだって慣れてしまえば、一般的なものより明白で間違いが少ない。

思いもかけない意外性あるデザインの向こうに、新たなソリューションが用意されているのがフレンチデザインの良いところで、これは昔からの伝統とも言える。イタ車との違いでもある、というのはあくまで私見だけれど。

後部座席は、身長172cmの筆者の膝や頭がぶつかることはなかった。トランクも358〜1170リッターと必要にして十分である。

理にかなっていて心地よい

レンシュポルト・ポルシェのようなドアノブを内側に引いてドアを閉める。シートはふかふかしている。Dボタンを押して、よいしょとパーキングブレーキのレバーを下げる。外からカラカラと聞こえてきた3気筒の鼓動はアイドリング状態ではさほど気にならない。

車体の軽さは走り始めから気付く。小さなエンジンは元気よく車体を引っ張る。ターボが加勢するから数値情報から予想する以上に力強く前進する。2000rpmを越えたあたりから、元気の良いエンジン音がバルクヘッドを介して聞こえてくる。騒音とは異なる愛嬌あるもので、小さなエンジンで軽い車体を元気に動かす楽しさを改めて感じる。どこか懐かしい気持ちにもなる。これで十分だよなあ。

乗り心地はふわりとやわらか。ほどよく路面を掴みながら、いやな衝撃はボディ全体で逃がす。ハンドルを切ると、じわりと車体が傾く。全ての動きがゆったりとしている。だらしなくはない。

シフトパドルがついているので、左側を弾くと、ひと呼吸、いや、ふた呼吸ほどの待ち時間のにちにフォンとダウンシフトする。気持ちのよい吹けがちょっと意外だった。トルクバンドに乗れば、C4カクタスはさらに小気味よく前に進んでゆく。

これで十分だよなあ、から、これがいいなあと思い始める。そう思わせてくれるのは、C4にしかない個性があり、それが理にかなっているうえに心地よいからである。フランス車ってこうだよなあと思う。みんなが好きなフランス車がここにありましたとさ。

へんてこオシャレさんは愛嬌もたっぷりでした。C’était très bon.(ごちそうさまでした)

SPEC

シトロエンC4カクタス

年式
2017年
全長
4155mm
全幅
1735mm
全高
1530mm
ホイールベース
2595mm
トレッド(前)
1470mm
トレッド(後)
1470mm
車重
1070kg
パワートレイン
1.2リッター直列3気筒
トランスミッション
5速AT
エンジン最高出力
82ps/5750rpm
エンジン最大トルク
118Nm/2750rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
トーションビーム
タイヤ(前)
205/50 R17
タイヤ(後)
205/50 R17
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