アルピナD5Sビターボ・リムジン・アルラット(4WD/8AT)アルピナの味

アルピナD5Sビターボ・リムジン・アルラット(4WD/8AT)アルピナの味

アルピナの味、に耳を澄ませば済ますほど、レセンス編集部の探究心に火がついてしまう。G30「前期」D5Sにアルピナらしさはあるのか?購入して後期と比べてみた。

火がついた探究心

私達レセンス編集部は、冥利に尽きることに、数えきれないほどのアルピナを体験させてもらっている。新車から中古車まで。車格も問わず、ある日は基準車との同時比較も叶った。

それぞれのモデルに思い入れがあり、思い出もある。一方で不思議な感覚になったこともある。G30後期型と呼ばれる7代目アルピナD5Sリムジン・アルラットがそれである。

私達が経験してきた、しっとりと、しかし軽やかで、しなやかな「アルピナの味」とはかけ離れた、骨太でアスリート然としたキャラクターには、その時、随分驚かされたのだった。

アルピナD5Sリムジン・アルラット(4WD/8AT)感じる心

直後、奇しくも同世代の前期型。標準の5シリーズ(Mスポーツだった)にトライする機会もあり、アルピナD5Sとの大きなギャップともいえる、トロリとなめらかな乗り心地に驚嘆したこともあったりした(組み合わせるタイヤやサイズによるだろうけれど)。

果たしてアルピナはどこからキャラ変したのだろうか。それを知るためだけに購入したといっても過言ではないG30型アルピナD5Sの乗り味についてこの記事ではレポートしたい。

G30前期のD5Sは

この世代のアルピナD5Sは、日本市場では右ハンドルのみ。326psと700Nmを生み出す3リッター直列6気筒ビターボ(ツインターボ)は、540d用のものを基本とする。

余談ではあるけれど、別マーケットで販売される左ハンドル仕様のD5Sは393ps/800Nmを湧出する。M550dのパワートレインをベースとした、トリプルターボ(M550dはクアッドターボ)を搭載している。

8速ATはZF製(8HP75)を使用し、0-100km/h加速は4.9秒、0-200km/hは20.1秒、巡航最高速度は275km/hと公表されている。

サスペンションは530d xドライブ(=4WD)のものにアルピナの味付けが施される。フロントのダブルウィッシュボーンはキャンバー角が1°ネガティブになっている。

乗り味を左右するポイントとして、20スポークのアルピナ・クラシック・ホイールは鋳造から鍛造になった。エアバルブはセンターキャップの中に隠すタイプではなくなった。同サイズの従来型と比べて15kg(約25%)軽くなっており、またピレリ製のタイヤが1985年以来の標準タイヤ(専用設計=ALPの文字付き)となっている。

アルピナの味は?

結論から申し上げて、この世代の前期型は、程よく現代化されながらも、それ以前のアルピナの乗り味を踏襲するものであった。

まず程よく現代化された点。それはバネ下の動きについてである。15kgも軽くなったホイールは、抵抗感を感じさせずにハタハタと積極的に上下動を許す。これに対し、サスペンションも同じキャラクターをもってボディを終始フラットに保とうとする。

鋳造の従来型は、もっとノシノシと凹凸に向き合い、これをしっとりとサスペンションが丸め込み、ダンパーが抑え込む特性があったが、この世代ではテキパキとアシを動かして、さっさと衝撃を消し去る手際の良さである。

結果的な快適性は変わらない。けれどフットワークが軽くなっているといった具合。

似た傾向をステアフィールからも感じ取った。F10世代まではむっちりと重みがあり、それは高速域でもほとんど変わらなかった。この世代では、操舵の初期から軽い。軽い、という印象は車体全体にも通づる。ベース車が物理的に約100kgの軽量化を実現しているほか、低重心化にも成功している。終始、身軽な動きに感心させられっぱなしであった。

パワートレインから伝わる振動も先代と比べると減っている。アイドリングストップからの復帰にげんこつパンチのような瞬間的な振動が先代はあったが、サッと立ち上がる。ノイズはディーゼルらしいが回転感はスムーズで速度が高まると気にならない。それよりタイヤノイズの方が気がかりだ。これほどの大パワーを路面に伝えるには、4WDはもちろん295幅のファットなタイヤは必須でありトレードオフと言われればそこまでだけれど。

前期後期 どっち

われわれはG30世代後期型で感じた、いや驚いた骨太ワイルドネスは、前期型では見られず、それ以前のアルピナと近いフィーリングであることに少しばかり安堵した。

むろん後期型だって悪いクルマではない。新世代のアルピナを感じられる万能マシンであることに違いないけれど、(あるいは古い価値観といわれればそこまで?)G30世代前期型は従来のアルピナの味が色濃く残っていた。

この「味」を知るために、わざわざ前期型を購入してしまったのは、われわれレセンス編集部の「探究心」ともいえるかもしれない?いやいや、そんな好奇心に火をつけるアルピナの深みとも言えるだろう。

従来のアルピナらしさを感じたいのならば、G30では前期を強く推す。後期型は新たな世界を感じさせてくれる。

どちらを取るかはあなた次第である。

SPEC

アルピナD5Sビターボ・リムジン・アルラット

年式
2018年
全長
4960mm
全幅
1870mm
全高
1485mm
ホイールベース
2975mm
トレッド(前)
1610mm
トレッド(後)
1600mm
車重
1940kg
パワートレイン
3リッター直列6気筒ターボディーゼル
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
326ps/4000-4600rpm
エンジン最大トルク
700Nm/1750-2500rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
インテグラル・アーム
タイヤ(前)
255/35 ZR20
タイヤ(後)
295/30 ZR20
メーカー
価格
店舗
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