アストン・マーティンDB11 V8(FR/8AT)初めてのアストンに

アストン・マーティンDB11 V8(FR/8AT)初めてのアストンに

意外といわれるかも知れないが、アストン・マーティンDB11 V8は、これまでアストンを買ったことのない人に向いている。走りや佇まい、パッケージングが理由である。

アストン・マーティンDB11

アストン・マーティンDB11は、グランドツアラーであり、DB9の後継である。

デビューは2013年3月。ダイムラー社との技術提携後、初のモデルでもある。

ボディサイズは全長×全幅×全長:4750mm×1950mm×1290mm。ホイールベースは2805mm。伸びやかで低く幅広いボディの中に2座プラスアルファの2座が備わる。アルミ押し出し材を接着剤で繋げたスペースフレームを構成するVHプラットフォームは新たな世代に切り替わった。

伸びやかなボディを真横から見ると、厚みがありセクシーなボディサイドの直上に薄いグラスエリアが乗っかる優美な2段構えに見える。

アストンの従来型の特徴を踏襲しつつも、新しいデザイン要素が効果的に盛り込まれている。ロングノーズ・ショートデッキの「理想状態」と言える。このロングノーズはボンネット部分がガバっと開くクラムシェルタイプ。それもアルミのシングルピースだ。

もともと5.2リッターV12ターボを収めていたDB11に、4リッターV8ツインターボが加わったのは2017年のこと。DB11 V8を名乗るモデルの鼻先にはメルセデスAMGが開発したM177と呼ばれるエンジンが鎮座する。

510psと675NmのアウトプットこそV12モデルよりも控えめであるけれど、しかし前後重量バランスが49:51となる(V12は51:49)。走りにおける理想値に近づいた。

思っていたよりもスパルタン

センターパネルの中央にあるスタートボタンを押すと、ゴロゴロっと音が響く。AMGのような「ドロドロ」とは湿度が異なる。ドライで少し高い音のように聞こえる。

聞こえるというか、ずいぶん耳に届く、という音の伝わり方だ。グランドツアラーから想像する室内環境とはちと違う、いわば無骨なスポーツ然とした性格に身が引き締まる。

センターパネル上の「D」を押すと、グッとDB11 V8は前に進む。クリープが強い。ちなみに8速ATはZF仕込みである。

私が楽しみにしていたのは、DB11 V8以降のシャシー開発をロータスのエンジニアだったマット・ベッカーが担当したこと。(アストンへの移籍時、V12のシャシーは完成済みだった)。車体全体の動きに不要な硬さがなく、ハンドル操作に関してスパッと反応する様は、快哉を叫びたくなる。サイズを感じない。

乗り心地やエンジン音の侵入は思ったよりもずっとスパルタンだ。むしろこれをアストン・マーティンらしいとも言える。

優雅でセクシーな内外装の掛け合わせと、熱い血が滾ったパワートレインの組み合わせにおいてである。今回の試乗が市街地に終止してしまったことを悔やんでしまう程であった。

その上、内外装の精度もぐっと高まっている。

初めてのアストン・マーティン

しなやかな車体、長さを忘れるほどスパッと切れるロングノーズを体感しつつ、やっぱり色濃くのこる「バンカラ」なアストン・マーティンDB11 V8は、初めてのアストン・マーティンを選ぶ人に向いた車だと思った。

エントリーモデルともいえるヴァンテージが存在するのに?という方もいらっしゃるかもしれない。ある意味、正しい考え方だ。

私がそう思うのは、アストン・マーティンを1人のみならず、たとえばパートナーの方と、それも長い距離を楽しんで欲しいからだ。

これならば2泊3日、いや3泊4日のロングドライブも出来る。それでいて、アストン・マーティンが何たるかを知ることができる。

そしてV8ならではのワインディングも楽しめる。とくれば、多くの方に納得していただける考え方ではないだろうか。

SPEC

アストン・マーティンDB11 V8

全長
4750mm
全幅
1950mm
全高
1290mm
ホイールベース
2805mm
車重
1760kg
パワートレイン
4リッターV型8気筒ツインターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
510ps/6000rpm
エンジン最大トルク
675Nm/2000-5000rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
255/40 ZR20
タイヤ(後)
295/35 ZR20
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