アウディRS6パフォーマンスは、現代ではまれに見るパワー勝負の車だと感じる。ライバルも、そして車両重量も、パワーでなかったことにするような。しかしそれらは繊細な制御あってこそだと実感する。
2013年、3代目RS6が登場。最高出力は560psとわずかに抑えられたものの最大トルクが700Nmまで増強された4リッターV8ツインターボを搭載した。2015年のマイナーチェンジを経て、2016年にこの記事の主役である「RS6アバント・パフォーマンス」が登場。+45psの605ps、+50Nmの750Nm(オーバーブーストモード作動時)を湧出する。100km/hまではわずか3.7秒だ。
その後2019年に4代目アウディRS6へアバントへとバトンを引き継いだ。
もう1つの自慢がアウディ・ドライブ・セレクトだ。アクセルペダルの特性曲線、エグゾースト・フラップ、ギアモード、ダンパー調整、ステアリング・トルクを一括制御する。
乗り込んでみようではないか。
カーボンパーツが配置され、フラットボトムステアリングが備わる室内は緊張感がある。テスト車はホワイトのレザーシートが並び、エレガントな雰囲気でもある。
スタートボタンを押すと、ガロロと粒の大きい乾いた音が響く。アクセルを軽く煽ってみると、そのままの音質で音量が増し、直後にバチンバチンとバブリング音が反響した。
走り出すと、かなり下の回転数からモリモリとトルクが湧き出す。1750rpmで700Nmという数字は伊達じゃない。アクセルペダルは1cmも踏んでいないのにRS6は風を切って進んでいく。1人、2人と音量に反応して辺りを見回しているが、まさかこの地味な色の「ワゴン車」の音だとは思いもしないようだ。
コンフォートモードでも乗り心地は硬い部類に入ると思う。車体がガタピシと軋む程ではないけれど頭は上下に細かく揺れる。もっとも超高速域ではこの硬さが正当化されるから良いのだけど…。ダイナミックモードに切り替えると小さくない車体は俄然一体となって猛進する。この時ばかりはサイズも重量も忘れてしまうパンチ力だ。すごい…。
それでいてコーナリングも華麗だ。私にはミリ秒単位のダンパー制御まで感知出来なかったけれど、トルクスプリットの巧みさは確かにドライバーに自信をもたらしてくれた。
SPEC
アウディRS6アバント・パフォーマンス
- 年式
- 2017年
- 全長
- 4980mm
- 全幅
- 1935mm
- 全高
- 1480mm
- ホイールベース
- 2915mm
- トレッド(前)
- 1660mm
- トレッド(後)
- 1670mm
- 車重
- 2030kg
- パワートレイン
- 4リッターV型8気筒ターボ
- トランスミッション
- 8速AT
- エンジン最高出力
- 560ps/5700-6700rpm
- エンジン最大トルク
- 700Nm/1750-5500rpm
- サスペンション(前)
- 5リンク
- サスペンション(後)
- トラペゾイダル
- タイヤ(前)
- 285/30 R21
- タイヤ(後)
- 285/30 R21