アルピナXB7(4WD/8AT)アルピナらしさを知る手立て

アルピナXB7(4WD/8AT)アルピナらしさを知る手立て

アルピナXB7に試乗してつくづくと感じたのは「アルピナらしさとは何か?」ということを学ぶには、このクルマが最適だということ。内外装、そして走りに全てが詰まる。

XB7のどこに手が入った?

アルピナXB7は、BMW X7を基本とするアルピナモデルだ。

日本でのデビューは2020年5月。「史上初のファーストクラス・アドベンチャー」というコピーとともに披露された。

内外装および、メカニカルにアルピナの手が入っている。入っているとはいえ、極端にパフォーマンス向上に振ったわけではなく、洗練の度合いを包括的に高めているのは、アルピナのお家芸だ。

とはいえパフォーマンスは有り余るほど。中でも心臓部の4.4リッターV型8気筒ツインスクロールターボは、ベース車X7 M50i+91psの621ps、+50Nmの800Nmに達する。

いつものアルピナのごとく、「何をどうして」それほどの増強に成功したのかは公式に発表されていないけれど、いずれにしろとてつもない数値だと言い切って良いだろう。

結果、静止状態からわずか4.2秒で100km/hまで、200km/hまでは14.9秒で到達する。

ZFと共同開発した8速AT(8HP76)もアルピナ独自のマナーになっている。同じくリアLSD(ロッキングトルク2000Nm)にも特別なキャリブレーションが施される。

エアサスペンションも、ダンパーやセッティングがアルピナ独自のものとなる。車高は状況に合わせて最大で40mm上下する。

またドームバルクヘッド/トーション・ストラットがアルピナによって強化されている。

どれほどの変化であるのかが楽しみでならないが、先に内外装も見ておこう。

内外装のアルピナマジック

私の目を引いたのは、ブルーライトがクリスタルガラスを輝かせるギアセレクターだった。硬質でエッジの効いた仕上げは、ギアを切り替えるたびに特別な気持ちにしてくれる。iDrive切り替えスイッチも同様だ。

室内は隅々までラヴァリナ・レザーが手作業によって張り巡らされている。ブルーとグリーンのステッチが入ったステアリングも健在。すべての手触りに適度な潤いがある。そしてやわらかい。信号で止まるたびに意味もなく撫でている。

テスト車両には「ミルテ」と呼ばれる明るい色のウッドトリムがセレクトされていたが、ピアノブラックも選ぶことができる。パイピング、ステッチ、刺しゅうやエンボス加工などは可能な限り、顧客の好みに合わせてくれるのだという(新車時)

フルデジタルのメータークラスターもアルピナのデザインに変わっていた。

外観で(大きな大きなキドニーグリルの他に)目を引くのは23インチの20スポークホイールである。フロントは 285/35 ZR23、リアが 325/30 ZR23。この辺りの乗り心地はどうなのだろうか。

デコラインや大きなフロントリップ、4本出しのマフラーなどは、大半のアルピナ車と共通するディテールである。

アルピナとは何かを知りたければ

ドアをそっとボディパネルに近づけると、あとはキュっとソフトクロージャが閉じてくれる。メリノレザーのシートは、ぴたりと寄り添うように私の背中をホールドする。

目線は高い。京都の街をゆく日本人も海外からの来訪者もこのアルピナXB7を一瞥する。地味な色ながら目立っている。

ひんやりと気持ちの良いギアセレクターをDに入れて走り出し、タイヤが1転がりもすれば、アルピナが仕立てた車であることを即座に察知する。しっとり。手元には繊細なタッチをもってインフォメーションが伝わってくる。

4.4リッターV8ツインスクロールターボは低く穏やかに唸っている。きめの細かい音が聞こえてくる。

本当に2.5tを超える車なのかと疑わしくなるくらいに身のこなしは軽い。最大2.3°傾ける後輪操舵装置のおかげもある。本当に23インチのホイールなのかと疑わしくなるくらいに車の動きは鷹揚だ。

アールの大きなコーナーが連続する道でも、XB7はフラットな姿勢を保つ。その辺のスポーツカーができることを、この巨大なSUVでもやってのける。

私が静止状態でステアリングを握って感じた潤いが、走らせてもそのまま変わりない。速度を高めても維持される。自分の運転にも自信が出てくる。

確かにトルクの塊である。しかし、数値スペックやわかりやすいパワーに流されない、緻密で華やかな身のこなしである。「超弩級」なんていう安っぽい言葉が全く似合わない車である。

骨太でホットなアルピナが増えてきた今、XB7はアルピナそのもの。そう思わせてくれた。

SPEC

アルピナXB7

年式
2022年
全長
5165mm
全幅
2000mm
全高
1830mm
ホイールベース
3915mm
車重
2560kg
パワートレイン
4.4リッターV8ツインターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
621ps/5500-6500rpm
エンジン最大トルク
800Nm/2000-5000rpm
メーカー
価格
店舗
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