アストン・マーティン・ラピードSの、4枚のドア、4つのシートは「仮の姿」だ。その実、これはれっきとしたスーパーカー。無骨な乗り味は裏切りでなく、あっぱれなのだ。
INDEX
アストン・マーティンDB9のアーキテクチャーをストレッチして下敷きとするラピードは、大きく分けると2世代に分けられる。
ラピード(2010年〜2013年)とラピードS(2013年〜2018年)であり、パワートレインの数値や装備、デザインが更新された。
このページでテストするのはラピードSだ。細かく見ていくことにしよう。
2014年には、これまでの6速トルコンAT(タッチトロニック2=ZF製の6HP26)から、8速(タッチトロニック3=ZF製の8HP70)に置き換えられている。同時にエンジン型式は引き継ぎながらさらなる増強を果たしており、560psと630Nmの数値スペックを手にした。0-100km/h加速タイムは4.4秒に短縮され、最高速度は327km/hに達した。
ホイールベース2989mmの上に載るボディは、全長×全幅×全高=5019×1929×1360mmとなる。全長と全幅に対して、全高が極端に低いことがおわかり頂けるだろう。
だがしかし後部座席は窮屈である。
印象的だったのは後部座席に座っていても同じ気持ちになれた点だ。前後左右、どこに座っていても、自分が操縦している感覚になれる。自分を中心に車が動いているように思える。
だから小さな窓の、深い椅子に体をねじ込み、フロントシートで前が見えなかったとしても、この生々しいサウンドと機敏な身のこなしを楽しんでいる。ラピードでしか、こんな感覚になれたことが私はなかった。
そうか4ドア・4シーターなんて仮の姿なのか。やわらかなコットンセーターの中に潜む、血管まで浮き出た彫刻のような筋肉をもちあわせるジェントルマンを思い浮かべたのだった。
SPEC
アストン・マーティン・ラピードS
- 年式
- 2014年
- 全長
- 5019mm
- 全幅
- 1929mm
- 全高
- 1360mm
- ホイールベース
- 2989mm
- 車重
- 2040kg
- パワートレイン
- 6リッターV型12気筒
- トランスミッション
- 6速AT
- エンジン最高出力
- 558ps
- エンジン最大トルク
- 620Nm
- サスペンション(前)
- ダブルウィッシュボーン
- サスペンション(後)
- ダブルウィッシュボーン
- タイヤ(前)
- 245/40 R20
- タイヤ(後)
- 295/35 R20