フィアット500C 1.2ポップ(FF/5AT)足るを知る、という豊かさ

フィアット500C 1.2ポップ(FF/5AT)足るを知る、という豊かさ

フィアット500Cの1.2リッター・ガソリン自然吸気エンジン搭載車に試乗。ミニマリズムを体現するようなこの車には、どこか温かみもある。その正体を試乗で探ってみた。

フィアット500の立ち位置

フィアット500(チンクエチェント)ツインエアの試乗に続き、このページでは、フィアット500C 1.2に試乗する。

フィアット500ツインエア・ラウンジ(FF/5AT)現代の名車、ここにあり

大まかな着眼点はパワートレイン(999ccの2気筒と1240ccの4気筒)になるが、それ以上にフィアット500の他に代えがたき立ち位置について知る事ができた。

まずはボディサイズから。

フィアット500Cは
全長:3570mm
全幅:1625mm
全高:1505mm
ホイールベース2300mm
という数値になる。

直接の筆頭ライバルは、隣国、フランスから送り出されている。ルノー・トゥインゴだ。

ルノー・トゥインゴは
全長:3645mm
全幅:1650mm
全高:1545mm
ホイールベース:2490mm
となる。

トゥインゴは500より主に全長/ホイールベースが大きく、4枚のドア、デュアルクラッチAT(500はシングル)の採用をアピールし、まさにフィアット500に食ってかかろうとする。

パワートレインは2種。先述の通り999cc直列3気筒ターボと、今回試乗する1240cc直列4気筒自然吸気がラインナップされる。

グレード名は、ポップ/ラウンジを名乗っていたが、2021年5月にカルト/ドルチェビータの2展開となっている。

運転していい所、△な所

1.2リッターの自然吸気ユニットは、澄んだ音をさせながらシュンと回る。ツインエアと比べると高回転域まで伸びやかだ。

たしかにツインエアのエンジンは、独特のビート感とレスポンスの良さが癖になる。一方この1.2リッターは柔軟性がウリだと考える。

約70psしかない(その上ツインエアにも出力が劣る)…といえばそこまでだけれど、市街地を快適なスピードで走る分にはまず不足ない。峠道でも走った。途中、随分な速度にも至った。車体の軽さは正義だ。高速道路を例えば140km/hで巡航する(例えばです)といったことでも無い限り、多くの人は必要十分だろう。

5速シングルクラッチATの変速は、ギアが変わる度にひと呼吸といったマナーをみせる。慣れてくると変速するであろうタイミングでアクセルをちょっと抜いてあげさえすれば、変速時の車のダイブを防ぐ事ができる。車のちょっとした癖に自分を馴染ませてゆく行為も楽しい。

乗り心地はまろやか。丸い当たり。185/55の15インチタイヤが、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる。飛ばさなくてもわくわくする。

ドライビングポジションは気になる。というのもチルト調整しか出来ず、手足が長い人は気にならないかもしれないが、170cmを少し超えた手も足も長くない筆者は、ステアリングとの距離と角度、椅子の高さとの関係に戸惑った。

もう1つ、クルーズコントロール等のADASがこのご時世にないのもつらい。2021年からは装備されるが、それでもアダプティブではない。街乗りが主体になることを考えると大きな問題ではないかもしれないけれど…。

そして何より際立つのが車体の小ささ。フロントノーズとの距離、窓のサイズが絶妙で、ちょっと細い路地に思い切って入ったり、切り返しなしでUターンするといったシチュエーションでも自分に躊躇いがないことに気づく。最小回転半径は4.7mしかない。軽自動車並みだ。全幅も1625mm。いま「街の遊撃手」というコピーをつけるとしたら、このクルマにこそだ。

「足るを知る」という感覚

「足るを知る」という諺がある。混同されがちだが「分をわきまえる」という言葉もある。

後者は「自分の身のほどを知って、出すぎたまねをしない」という意味があり「(いい加減)分をわきまえなさい」などと使われる。

一方、前者「足るを知る」は、現在の状況に対して感謝のニュアンスを含んだ満足という意味合いがある。中国の老子の思想が由来となる。

もっといってしまえば心の豊かさといった意味合いも内包する。

フィアット500 1.2に乗っていると、この言葉を思い出すのは、驚くほどミニマルなパッケージで最大限の価値(と、おもしろさ)を提供してくれるからなのだろうと思う。

考えてみれば、下敷きにしているのは今から14年も前のフォードのプラットフォームである。でもかえってそれがよかったのかもしれない。

まろやかでやさしいこの車が令和の時代にも売れ続けていることが、その証左である。キャンバストップを開け放てば、ゴキゲンにどこまでも行ける気持ちになってくるのだった。

SPEC

フィアット500C 1.2ポップ

年式
2017年
全長
3570mm
全幅
1625mm
全高
1505mm
ホイールベース
2300mm
トレッド(前)
1420mm
トレッド(後)
1410mm
車重
1030kg
パワートレイン
1240cc直列4気筒
トランスミッション
5速AT
エンジン最高出力
69ps
エンジン最大トルク
102Nm/3000rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
トーションビーム
タイヤ(前)
185/55 R15
タイヤ(後)
185/55 R15
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