ポルシェ911カレラ(RR/7MT)温故知新

ポルシェ911カレラ(RR/7MT)温故知新

ポルシェ911は、どの世代であれ、一度「素」のグレードを試してみることをお勧めしたい。ポルシェが世代を超えて大切にするもの、911に求めるものがわかるのだ。

ポルシェ911 991 991.2?

ポルシェ911の中でも、991型(後期)がこの記事の主役だ。991世代は997世代と992世代の間に位置する。その中でも前期/後期に分かれ991.1/991.2と呼び分けられたりもする。

991.1と991.2はどう違うか。

もっとも大きなトピックスとして注目されるのがエンジンの変更だ。これまで3.4リッターの水平対向6気筒自然吸気エンジンを搭載していたカレラは、3リッター直噴ターボになった。カレラSもまた3.8リッター自然吸気から3リッター直噴ターボ化され、カレラ/カレラSは、出力の違いで差別化された。生み出す最高出力は991.2世代+20psの370psに、最大トルクは+60Nmの450Nmに到達している。

外観の変更点としては、まずフロントバンパーが挙げられる。自動でルーバーが動くことで、空気抵抗/冷却空気の流入を考慮する「アクティブ・クーリング・エア・フラップ」がそなわる。またリアバンパー両枠にも穴が開く。インタークーラー用の排気ベントである。リアフードのルーバーは縦形状のスリットが入る。

デイライト周辺は切れ長になった。テールライトも立体化された。灯火類は、前後、それぞれの要素が薄い「シュッとした」感じになった。

インテリアでもっともわかりやすいのはセンターコンソール上のインフォテイメントスクリーンだろうか。「PCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメント・システム)」と呼ばれる7インチのタッチスクリーンである。

また5連メーターの右から2番目もスクリーンになる。スポーツクロノパッケージを選択した個体はステアリング右下にドライブモード切り替え用のロータリースイッチもつく。

試乗してまず確かめたことは

まず私が注目したのはエンジンサウンドだった。自然吸気エンジンが「絶えてしまった」という論調で語られる事が多いため、そこにネガティブな要素があるか、気になったのだ。

空冷のようだ、というのが私の第一印象である。中でも993のサウンドを私は思い出す。

ザラザラとした低い音がアイドリング〜低〜中回転域で響く。中回転域からは、笛を吹くようなタービンの高い高周波音が重なり、混ざる。不協和音が不思議にマッチする。

高回転域に届く頃には、キメの細かい音になる。驚くのは澄み切った回転感。シューンと上まで回りゆく。淀みはまったくない。

もう1つ驚いたのはアクセルの「ツキ」とよく言われる、開度に対する反応についてだ。足の裏が直接エンジンを操作しているかのように思える。これが広い領域で感じられる。

レッドゾーンぎりぎりの息切れのなさは自然吸気ユニットの得意とするところだが、常用域プラスアルファのソリッド感は991.2が搭載するターボユニットに軍配があがる。

ターボと聞くと、唐突なトルク湧出を連想する向きが多いからこそ、最初は批判的な目線が出るのも仕方ないが、本当にターボ?と疑ってしまうほどなめらかで骨太な回転感だった。

さらにもう1つ。私は乗り心地の良さにうっとりした。19インチのホイールを組み合わせていたというのも大いにあるだろうが、当たりがマイルドだ。シャシーの剛性ゆえだと考える。ステア操作に対する反応もやや機敏寄りの自然。身のこなしの軽さに車重を疑いたくなるボディバランスである。気持ちがいい。

「素」のポルシェを推す理由

ポルシェは事あるごとにモデルチェンジで物議を醸す。RRがFRになりかけた時。空冷が水冷になった時。自然吸気が強制吸気になった時。

しかし私は、いずれの出来事も、すべて杞憂に終わったと考えている。だって全てが「より良い工業製品を作る為」という実にシンプルな目的の元に実行されているし、それが嫌ならば、同じモデルの別のグレードも用意される。

ただ、このモデルのそれも「素」のグレードを一度は味わってほしいと強くいいたい。それもこの車のようにマニュアルトランスミッションで。

私はこの車―つまり飾り気の無い911.2×MT―に乗って、新しい時代のポルシェの筈なのに、どこか懐かしい気持ちになった。ポルシェが往年のモデルからどの部分を引き継ぎ、製品に落とし込んだかが明らかになり、おのずとポルシェが何を大切にしているかがわかった。それは、ナチュラルで腕があれば心底楽しめるスポーツカーであること。でもこれは乗らなければおわかり頂けない部分だ。

SPEC

ポルシェ911カレラ

年式
2017年
全長
4505mm
全幅
1835mm
全高
1295mm
ホイールベース
2450mm
トレッド(前)
1540mm
トレッド(後)
1520mm
車重
1450kg
パワートレイン
3リッター水平対向6気筒ターボ
エンジン最高出力
370ps/6500rpm
エンジン最大トルク
450Nm/1700-5000rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
235/40ZR19
タイヤ(後)
295/35ZR19
メーカー
価格
店舗
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