6代目(FL5)ホンダ・シビック・タイプRに試乗。テクノロジーとエモーションの両立に舌を巻いた。「タイプR」の現代解釈がどんなものか、明らかにする。
タイプRの歩んだ道
初代ホンダ・シビック・タイプRが登場したのは1997年。ベースとなった6代目シビック登場から2年を経てのことだった。
もともと高かった最高回転数8200rpmの1.6L直列4気筒VTECを基本に給排気系を改める。減量は30kgに達し、車両重量は1050kgだった。
2代目シビック・タイプRは2001年、イギリスで生産され、日本で販売された。初代が1万5910台売られたのに対し、4722台に留まる。
3代目(2007年)は4ドアセダンになった。エンジンは先代を引き継ぐも内容を改善。出力/トルクを高めた。1万3441台が販売された。
実はもう1モデル「3代目」がある。シビック・タイプRユーロ(2009年)と呼ばれ、エンジンは4ドアセダンと共通するもプラットフォームは異なる。(いわゆるセンター・タンク・レイアウト=フィットと共通)。3516台。
2015年、4代目。3代目「ユーロ」と同じプラットフォームを用いるも、エンジンはK20C型と呼ばれる2リッターVTEC×シングル・スクロール・ターボとなる。310ps/400Nmを叩き出すに至り、ニュルブルクリンク北コース(=ノルドシュライフェ)最速バトルも激化する。新時代タイプRの幕開けだ。765台が嫁いだ。
2017年、プラットフォームが刷新され5代目となる。8096台が販売され、4代目の劇的進化を受け継ぐ。そして今回の主役、6代目である。
サスペンションも細かく見直された。なかでもフロントサスは、左右それぞれを1人ずつ担当し、手作業で組み付けてゆくという。
電子制御とその反応については、ドライブしながら触れていくことにしよう。
トルクベクタリングAHA(アジャイル・ハンドリング・アシスト)の制御には舌を巻く。直角に近いコーナー。どうしても重い鼻先が外に行きたがる。我慢していると、そこからの回頭性の鋭さに気づく。全体として、車体が前後左右にフラットなままパンと瞬時に向きが変わるイメージだ。
すべての電子制御をオフにしてサーキットで走ったらどんなものだろうか。磨きあげられたシャシーの素性の良さのなせる技だ。
それともうひとつ(もう書き出したらとまらない)。シャープなアクセルレスポンスたるや! どの速度域でも回転域でも、踏力の細かな調整に素早く反応する。これも先代より遥かに飛躍したところ。意のままに操ることができた。
SPEC
ホンダ・シビック・タイプR
- 年式
- 2022年
- 全長
- 4595mm
- 全幅
- 1890mm
- 全高
- 1405mm
- ホイールベース
- 2735mm
- トレッド(前)
- 1630mm
- トレッド(後)
- 1620mm
- 車重
- 1430kg
- パワートレイン
- 2リッター直列4気筒ターボ
- トランスミッション
- 6速MT
- エンジン最高出力
- 330ps/6500rpm
- エンジン最大トルク
- 420N/2600-4000rpm
- タイヤ(前)
- 265/30 ZR19
- タイヤ(後)
- 265/30 ZR19