知っているようで知らないポルシェ914。「ワーゲンポルシェ」や「廉価版911」などとキーワードが目立つが、確かな個性があり、どこへ言っても冒険になるのであった。
INDEX
ポルシェ914に望まれた役割
ポルシェ914について、知っているようで知らない、という向きは多いかもしれない。
フォルクスワーゲンとポルシェが共同開発したスポーツカーで、ポルシェのエントリーモデルとしての役割を果たした。
もとを辿れば、ポルシェとフォルクスワーゲンそれぞれにメリットをもたらす車であった。ポルシェは生産/経営基盤を安定させたかったし、フォルクスワーゲンもビートルの派生車種を喉から手が出るほど欲していたのだ。フォルクスワーゲン・カルマンギアの後継、そしてポルシェ911よりも求めやすいモデルの投入。設計と製造をポルシェが、必要なものの提供はフォルクスワーゲンが行う。お互いの関係にヒビが入るまでは、好調な成績を維持した。
914の割り切った内装と外装
ポルシェ914を目の前にすると、あらためてペッタリと低い車だと感じる。
真横には一切のボディラインが与えられず、乗員を中心に、極端に短いホイールベースで前後輪が置かれる。オーバーハングも短い。シンプルだけれどボディ上端にわずかな抑揚がある。よく見るとホイールアーチの切り方にも繊細に練られている。分かりやすい主張は無いのに、味気なくはない。黄色いボディカラーと相まってミッドセンチュリーの家具を思い起こす。
かつて「スタイルオート」誌の編集長がデザインを酷評し「心を打たれない」と断言したことはあまりにも有名だが、私はむしろ、余白や穏やかな主張にどこか日本的な奥ゆかしさを感じる。見れば見るほど癖になるまいか。
ピュアで繊細、でも男っぽい
キーをひねると、しばらくのクランキングの後、2リッター水平対向4気筒エンジンが元気に目を覚した。最初は少しアクセルを煽りながらアイドリングの回転数が落ち着くまで待つ。
2リッターのモデルが組み合わせているのは、ポルシェ製の915ミッションである。マニアックな表現ではあるけれど「熱いナイフでバターを切る感触」だとか「棒ではちみつを掻き回す感触」だとか言われるミッションだ。
1速にインサートすると、たしかにぬるっとした独特な感触がある。エンジンをストールさせないように元気に回しながらクラッチを繋ぐ。
パワーこそ無いけれど、背中に伝わる振動やエンジンが躍動するノイズのお陰で物凄くスピードが出ているように感じる。目線も極端に低いから、どこを走ってもアドベンチャーだ。
このままずっと走っていたい、と思えるほど私はタフではないが、この車があれば毎週の休日が楽しみだし、晴れていれば絶対にガレージから引っ張り出して走りに行くだろうと思った。
SPEC
ポルシェ914 2.0
- 年式
- 1975年
- 全長
- 3985mm
- 全幅
- 1650mm
- 全高
- 1230mm
- ホイールベース
- 2450mm
- 車重
- 985kg
- パワートレイン
- 2リッター水平対向4気筒
- トランスミッション
- 5速MT
- エンジン最高出力
- 100ps
- サスペンション(前)
- ストラット
- サスペンション(後)
- トレーリングアーム