メルセデス・ベンツG350d(4WD/7AT)オレのGクラス論

メルセデス・ベンツG350d(4WD/7AT)オレのGクラス論

なぜ「ゲレンデ」=メルセデス・ベンツGクラスは、世の成功者に好まれるのか。G350dに試乗することで理由を確かめた。そこには圧倒的個性が存在していたのだった。

いわゆる「ゲレンデ」

メルセデス・ベンツGクラス。「ゲレンデ」などとも呼ばれ、特にお金持ちの若いオニーサン、スポーツ選手、芸能人を中心に、ストリートの人気者である。東京なんて行けば、それはもうSクラスの10倍は走っているように感じるほど。誇らしげに街を闊歩している。

「G」は、「ゲレンデヴァーゲン(=Geländewagen)」の頭文字から来ている。オフロード車を意味するドイツ語である。

Gクラスは大きく分けると2世代しかない…といえば少々意外だろうか。1979年にデビューした初代=W460の後は、1990年フルモデルチェンジのW463、これだけ。え?2018年以降の現行型は?と思われる方もいらっしゃるかもしれないけれど、あれも大枠ではW463。厳密にはW463Aと呼ばれ、フルモデルチェンジ並みの変更点であったけれど、W463を踏襲する。

今回テストするのは、W463型(1990〜2018年)のうちの2018年型。いずれもG350dと呼ばれるディーゼルエンジン搭載車で、日本仕様のGクラスとしては20年以上ぶりに2013年より投入され人気を博した。右ハンドル仕様も日本からの要請で実現した。

赤いボディの方は、ヘリテージエディションと呼ばれるもので内外装が特別な仕様となっている。ヘリテージエディションは2018年4月に最後の特別仕様車として発表。18インチホイールは黒く塗られ、スライディングルーフを標準装備。ルーフ、ドアミラー、サイドミラー下部、前後バンパー/オーバーフェンダー、サイドストリップ、リアホイールカバー周囲、リアビューカメラが「オブシディアンブラック」に塗り分けられるナイトパッケージが標準で備わる他、前後シートがヒーター付きのレザーに、サンルーフが標準でついてくる仕様であった。

「癖」の強さ=味わい

「ゲレンデ」を目の前にすると、かなり大きい。全長:4575mm、全幅:1860mm、全高:1970mm(!)というボディサイズはもちろんのこと、視覚的に大きいと感じるのは、フロントノーズの高さ、起立するフロントガラスなどによるプレッシャーによるところが大きい。

ドアノブを握り、親指でボタンを押すと、ガッチャン。ラッチが外れる音がする。外ヒンジの薄くて重いドア開き、よいしょっと乗り込むと、気分はもう無敵状態。目線は高く、ガラスの大きさと角張った車体ゆえ視界はいい。ダッシュボードの薄さが少し古風でワークホース感がある。ドアを締めるとカキンッ。室内の空気が密閉される感覚になるくらい精緻だ。

アクセルを強く踏み込むと、3リッターV6ディーゼルターボのザラッとした音とともに、のっそりとGクラスは進んだ。最初の曲がり角で普通のSUVとの違いを感じた。少しハンドルを切ったとて、Gクラスはまだまっすぐ前を向いたままでいる。もっと切り始めるとようやく鼻先が向きを変えた。車体の半分から上がぐらりと横に傾いて、ゆっくり戻った。曲がりきったところでスーっとハンドルが戻るかと思いきや戻らないので慌てて自分で反対方向に切った。

これらの癖は、リサーキュレーティングボール式×油圧テレスコピックダンパーのステアリングだったり、ラダーフレームだったり、サスペンションだったりが理由であるけれど、まあ、難しいお話は置いておいて、もともとが軍用であり、このモデルでも色濃く基本形態を引き継いでいるからである。

大きな救いは、それらの動きに規則性があり、慣れてしまえば、例えば小道を急ぐ時、あるいは高速道路で飛ばす時にも、思い通りに動かせること。念の為申し上げておくと決して安楽ではないが、男子ならわかってくれるかな…、ざぶっとした新品のジーンズを少しずつ自分に馴染ませていく楽しみのような、じわりとお互いをすり合わせてゆく味わいといいますか。

圧倒的な個性を楽しめるのである。

静かに称え合っている

マニアックな機構を操る醍醐味を越えて、成功の、あるいは富の象徴になったメルセデス・ベンツGクラス。

一見そんな風に見えるかもしれないが、魅力はそれだけではない。走破性が高く、いちプロダクトとしてのレベルが高い。質感が良い。

たしかに成功者の乗り物としての毛色が強まったかもしれないけれど、味わいの濃さ、際立った個性が魅力であることは間違いない。

街ゆくGクラスとそのオーナーは、お互いに自分の選択が間違っていなかったということを、静かに称え合っているのかもしれない。

私はそんな替えの効かない車に敬意を表する。

SPEC

メルセデス・ベンツG350dヘリテージエディション

年式
2018年
全長
4575mm
全幅
1860mm
全高
1970mm
ホイールベース
2850mm
トレッド(前)
1540mm
トレッド(後)
1540mm
車重
2550kg
パワートレイン
3リッターV型6気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
245ps/3600rpm
エンジン最大トルク
540Nm/2400rpm
サスペンション(前)
リジッドアクスル
サスペンション(後)
リジッドアクスル
タイヤ(前)
265/60R18
タイヤ(後)
265/60R18

メルセデス・ベンツG350d

年式
2018年
全長
4575mm
全幅
1860mm
全高
1970mm
ホイールベース
2850mm
トレッド(前)
1540mm
トレッド(後)
1540mm
車重
2550kg
パワートレイン
3リッターV型6気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
7速AT
エンジン最高出力
245ps/3600rpm
エンジン最大トルク
540Nm/2400rpm
サスペンション(前)
リジッドアクスル
サスペンション(後)
リジッドアクスル
タイヤ(前)
265/60R18
タイヤ(後)
265/60R18
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