フォルクスワーゲン・ザ・ビートル・ターボ(FF/6AT)ギャップ萌え

フォルクスワーゲン・ザ・ビートル・ターボ(FF/6AT)ギャップ萌え

試乗していえること。フォルクスワーゲン・ザ・ビートル・ターボをあなどってはいけない。チャーミングな外観とは裏腹に、ピリッと辛い質実剛健な立ち振舞を見せつけた。

ビートルの簡単な歴史

フォルクスワーゲン・ビートルは、大きく分けて3世代に分類される。

タイプ1と呼ばれる初代は1938年に販売開始。いまいましい大戦に翻弄されながらも、2003年まで累計2152万9464台が生産された。時代により数多のディテール変更があり、世界を見渡しても膨大な資料が残される。

1998年には「ニュー・ビートル」が誕生した。直接の後継車種ではないと明言されているものの、フォルムやディテールはタイプ1を強く意識した。しかしRR×水平対向エンジンの組み合わせでなく、ゴルフ4が用いたプラットフォームを下敷きにしていたFFだった。

しばらくの時を経た2011年、後継モデル「ザ・ビートル」が産声をあげる。2019年の生産終了まで限定モデルの追加やマイナーチェンジを繰り返した。なかでももっとも大きなニュースが「ザ・ビートル・ターボ」の追加といってもいいだろう。この記事の主役だ。

「ニュー」から「ザ」

ザ・ビートル。先代までのおっとりとしたルックスは息を潜め、全体のフォルムは踏襲するもののディテールは、くっきり精悍だ。

そう感じる理由にヘッドライトとフェンダー、バンパーが挙げられる。ヘッドライトは内側がブラックアウトされる。フェンダーもエッジのたった面取りがなされ、バンパーも同様だ。

ボディサイズの実際は、全長が180mm、ホイールベースも20mm伸びた。幅も88mm(!)大きくなり、全高は12mm下がった。

大きな2ドアを隣に当たらない様に気をつけて開く。シートはいかにもドイツ車然としたもので、座面がカチッと体重を受け止め、サイドのボルスターが横の動きを押さえてくれる。

近代的なフォルクスワーゲン(といってもゴルフやI.D.シリーズくらいのものだけれど)と比べると物理ボタンは多い。押し心地は精緻で、フォルクスワーゲン、いやアウディやポルシェらしいカッチリとしたものである。

キーをひねると、ゴォーンと太く男らしい音が聞こえた。意外だった。走り出してみる。

ドイツ、ドイツ、だ。

まず初めに気づくのは、ステアリングの重み。一昔前のポルシェのような、ゴッチリとした重さで、私がビートルに想像していた軽やかさ、いや、やわな感じとは全く違っていた。

アクセルを踏み込むと、6速DSG(ツインクラッチオートマティック)が淡々と変速をしていく。ボディは硬く、下からの突き上げも結構ある。あれ、ちょっとまずいかなと思った。

思い切ってアクセルを踏んでみると、ゴルフ6 GTIと同じ2リッター直列4気筒ターボがひと吠えする。(パドルシフトがもう少し大きいといいのにな…)。わりと曲率の大きいコーナーが見えてきたので、思い切って突っ込む。結構速度がのっていたので、確かに鼻先が外へ向く典型的なFF車の動きをする。あれ、速い…。

もう1度同じような曲率のコーナーがくる。今度はブレーキをドンと踏んだあとに、少し抜きつつも残す。フロントに幾ばくかの荷重を残したまま、巻き込むように曲がっていくときれいに曲がった。XDSと呼ばれる電子制御のデファレンシャルロックの仕事でもある。

この速度域だと、極めて低速のサスペンションのバタつきは消える。あ、もっと上の速度域の車だったのですね、とザ・ビートル・ターボに気付かされる。失礼しました、と思う。

周りを走る別の車も要注意だ。油断するとあっという間に離される。精悍になったとはいえ、牧歌的なエクステリアに騙されるなかれ。

あなどってはいけない

ザ・ビートルは生産終了し、残念なことに後継モデルのアナウンスはなされていない(出るとしてもEVになることだろう)。

横を見渡すと、フィアット500とミニの名前が挙がる。ビートルに反し、成功している。

ミニの成功は、ブランドに付加価値をつける戦略が上手く行った(宣伝にお金をかけた)。それだけでなく、大きくして実用性を高めた(もうミニじゃないという声は置いておいて)。

フィアット500は割り切りがウケた。正直に申し上げて、もっと近代的な車は山程あるけれど、あのボディサイズ、あの愛嬌が、多少不便でも魅力が上回った。11年連続で年間販売4000台を越えた実績が裏付ける。

ザ・ビートルはどうだろう。やっぱり大きいし、だからといって実用性が高くもない。

しかしレセンス読者のような「自動車好奇心」が旺盛な人は騙されたと思って一度乗ってみて頂きたい。そこには、ビートルの仮面の下に、圧倒的ドイツ車感と、仮面からは想像できない男っぽさがある。これだったら奥様も、そして車が好きな旦那様も楽しめる。

あなどってはいけない。

SPEC

フォルクスワーゲン・ザ・ビートル・ターボ

年式
2016年
全長
4270mm
全幅
1815mm
全高
1495mm
ホイールベース
2535mm
トレッド(前)
1570mm
トレッド(後)
1540mm
車重
1380kg
パワートレイン
2.0リッター直列4気筒ターボ
トランスミッション
6速AT
エンジン最高出力
211ps/5300-6200rpm
エンジン最大トルク
280Nm/1700-5200rpm
サスペンション(前)
ストラット
サスペンション(後)
4リンク
タイヤ(前)
235/45R18
タイヤ(後)
235/45R18
メーカー
価格
店舗
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