マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ(4WD/8AT)情熱を指名買い

マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ(4WD/8AT)情熱を指名買い

マセラティ・レヴァンテ・トロフェオは、やはりマセラティが力を入れて作った車だ。快適でありながら、爆発する刺激、色気。埋もれることはない「指名買い」の車なのだ。

マセラティから出たSUV

マセラティからSUVが出る。そう示唆されたのは、2011年のフランクフルト・モーターショーでのこと。コンセプトカーは「Kubang(=クーバン)」と名付けられた。

そこから製品版が正式発表されるまでに5年もかかったのは、資金力なのか、そもそもコンセプトの時点でまだエンジニアリングが白紙だったのかは定かではないけれど、まあいつものマセラティのことだと思えばいいか…。2016年3月に「レヴァンテ」としてジュネーブ・モーターショーでお披露目された。

マセラティ・ギブリと基本骨格を共有し、その内外装も現代マセラティと共通するもので、誰が見てもマセラティだと認識できた。と簡単に書いたけれどSUVでそれを実現したのだから、立派な功績であるといえよう。

3リッターV6ターボガソリンと3リッターV6ターボディーゼルが最初に導入され、前者はフェラーリ開発で、出力が2系統用意された(レヴァンテ=350ps/500NmとレヴァンテS=430ps/580Nm)。後者はレヴァンテ・ディーゼルと呼ばれた(275ps/600Nm)。いずれも8速AT(ZF製)とQ4=4WDが組み合わされる。

そして有名な話ではあるが、開発初期段階から、エンジニアが勝手にV8ターボユニットを搭載した試作車を制作。これが後から加わるレヴァンテGTS/トロフェオになるのだった。

レヴァンテ・トロフェオ

今回試乗するレヴァンテ・トロフェオが搭載する3.8リッターV8ツインターボは590ps/6250rpmと734Nm/2500rpmを発揮。同じく3.8リッターV8ツインターボを搭載するGTSは550ps/6250rpmと733Nm/3000rpmとなる。

ボディを写真でみると、何となくマツダCX-5くらいのサイズかと思いこむ向きも多いかもしれないが、全長×全幅×全高×ホイールベース=5020mm×1985mm×1700mm×3000mm。横を見渡すとポルシェ・カイエン・ターボ・クーペが4940mm×1995mm×1655mm×2895mm。

だから室内も広い。特に横方向、また後席足元にもたっぷりと余裕がある。

トロフェオならではのディテールとして、フロントグリルや下部のエアインテークがブラック・アウトされている。カーボンパーツも多い。フロントボンネットには熱い空気を抜くための穴が開けられている。Cピラーのトライデントにも「TROFEO」の文字が融合される。

室内にもカーボンパーツが各所にあしらわれる。SUVらしからぬ大きなパドルシフトが、この車の意図を感じさせる。パネルの合わせなどはドイツ車ほど緻密ではないが、それを色気とデザインで覆い隠す、マセラティらしい解決策でドライバーを魅了するのであった。

現代マセラティの銘機

低くうずくまるような姿勢、なだらかに後方に向かって落ちてゆくルーフを見ると、ああこれはスポーツカーだなと素直に思えた。

しかし走り始めは、不意を突くような穏やかさに意外だなと思った。

まず乗り心地がよい。確かに21インチホイールゆえのパタパタとした入力とノイズは有るけれど、全体としてボディの動きは鷹揚なのだ。

ステアリング操作に対して神経質すぎないことにも個人的には好感がもてた。ボディの動きと相まって、うまくロールさせながらコーナーを曲がり込んでいくと、きれいな旋回を見せる。

ただこの時点ではパワートレインが目覚めていない。だから「トロフェオ」でもコンフォートに振っているのかなと感じていた。

これをコルサモードにすると豹変した。明らかにレヴカウンターの針は勢さを増す。5000rpmを超えたあたりから音量が激しく増し、およそ普通のSUVから聞こえるものとは別世界になる。

むろん自然吸気時代の管楽器のような音とは異なり、野太く勢いのあるものだが、その中でもかなり官能的だ。ターボユニットのなかでは「銘機」と言われる日は近いと思う。

強い個性ゆえの指名買い

マセラティ・レヴァンテ・トロフェオは、SUVが欲しい人が、色々な選択肢の中から迷ったあげく買うという車ではないように思える。

刺激が欲しい、マセラティが欲しい、でも荷物を載せたい。そういった人が、狙い撃ちで手に取る車ではないかと思うのだ。

それくらいに強い個性があり、同価格帯の同カテゴリーで、これに代わるような個性をもった車は他に見つからない。ましてやドイツ人には、絶対にこんな車を作れないと言い切れる。

情熱を指名買い。

SUVであるレヴァンテ・トロフェオに乗ってそんな言葉が頭をよぎった。

SPEC

マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ

年式
2019年
全長
5020mm
全幅
1985mm
全高
1700mm
ホイールベース
3000mm
トレッド(前)
1650mm
トレッド(後)
1670mm
車重
2585kg
パワートレイン
3.8リッターV型8気筒ターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
590ps/6250rpm
エンジン最大トルク
734Nm/2500rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
265/40 R21
タイヤ(後)
295/35 R21
メーカー
価格
店舗
並べ替え